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07.再開
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その日の夜、パパは帰って来なかった。さすがに二人分の死体が見つかったなんて大事件が起こった訳だし、帰ってこられないだろうとは思ったけれど。
そしてママのスマホの連絡網アプリによると、明日から学校が再開になったみたい。でも登下校の際は保護者同伴が必須で、マスコミに事件のことを聞かれても「何も知りません」で通して欲しいと箝口令が出されたみたい。
うちのママは天然だし、いきなりマスコミにマイクを向けられてもアタフタしないでいられるかどうか、あたしはとっても心配だわ。まあ暁兄ちゃんと昴兄ちゃんがいるから大丈夫だろうけど。むしろ昴兄ちゃんが犬飼さんを理詰めで追い出したときのように、マスコミのことも理詰めで追い出そうとして、彼らはさっさと逃げていきそうだけれど。
学校が再開になったその日の午後、ママが暁兄ちゃんと昴兄ちゃんを連れて帰ってきた。カーペットの上でゴロゴロしていたあたしは、テレビのリモコンの電源ボタンを押してみた。ちょうどニュースをやっていたわ。
「あら、やっぱり。緑が丘小学校の事件のこと、やっているわよ!」
テレビには、何度も見た緑が丘小学校が映っていた。さすがに一般人が映ったときは、顔にモザイクがかかっていたけれど。
「お。あれって父さんの後ろ姿じゃん? 背広のお尻のところ、破けそうになっていない? 母さん、そろそろ新しいスーツ買ってあげなよ。昨日、学校で刑事さんたちを見たけれど、父さんの後輩の方がいいスーツを着ていたよ」
昴兄ちゃんによって高まった我が家のエンゲル係数をどうにかすれば、すぐに買ってあげられるようになると思うわよ。
「ちょっとレポーターさん、俺のクラスで植えたダリアの花、ちゃんと映してよ。せっかくスミレが水あげしているんだからさ」
暁兄ちゃんのクラスで植えたにしては、水あげとかのお世話、スミレさんに任せきりにしているじゃないの! 暁兄ちゃんもちゃんとお世話しなさいよ!
それにしても……あんたたち、自分たちの担任の先生が死んだっていうのに、随分と呑気なものね。まあ一年のときから何だかんだ顔を合わせている同級生たちと違って、半年くらいの付き合いしかない大人なんて、こんなものなのかしらね。
そしてこのニュースで分かったことがある。どうやら三津井は昨晩の十八時から二十二時までが死亡推定時刻らしいけど、国枝は一昨日の十八時から二十二時までが死亡推定時刻らしい。つまり三津井が殺されるより丸一日前に、すでに国枝が殺されていたことになる。つまりは、国枝が三津井を殺したというのはあり得ないことになる。
さらに国枝は頭を鈍器で殴られて殺されていて、三津井と違って首だけ死体にはなっていなくて、特に暴行された形跡もなくて、学校の敷地の南東にあるチャボ小屋の中から発見されたらしい。その小屋に寝かされた状態で上から園芸用の腐葉土をかけられていて、警察の捜査が入るまで、誰も気付かなかったとのこと。
皆がいつも通りに学校に通って、校舎で授業を受けたり校庭で運動したりしていたとき、少し離れた場所では国枝が誰にも気付かれずに冷たくなっていたということだ。学校で飼っているとはいえ、ウサギやモルモットと比べたらファンの少ないチャボだから、あんまり小屋に近付こうとする人もいなかったし、腐乱死体の匂いがしてもチャボの匂いと混じって分からなかったのだろう。犯人もなかなか考えたものだわ。
それにしても、死亡推定時刻とか、どこで死体が見つかったかとか、そこまで細かく報道しちゃって大丈夫なのかしら? まあ今の時代、どんなに隠しても、SNSで誰かしらによって拡散されちゃうんだろうけど。
そして暁兄ちゃんと昴兄ちゃんの話によると、保護者同伴での登下校ができない生徒たちが大勢、休んだみたい。そういえば、二人が帰ってきたとき、昴兄ちゃんが珍しく「お腹いっぱい」と言っていたわね。休んだ子たちの分の給食を独り占めしたに違いないわ。それでも帰ってからすぐにお煎餅を食べ始めていたけれど。
とりあえず学校では、常に国枝と三津井の二人が殺された話でもちきりだったらしい。そして小学校という場所柄なのか、仕方ないんだろうけど、事件はすぐに怪談に結び付けられたらしい。学校でサッカーをするとボールがいつの間にか人の頭にすり替わっているとか、学校のチャボは人の肉を食べて育ったから掃除のために小屋に入ろうとしたら人間に襲いかかってきて食べられるとか。そんな噂が立つと、普段からチャボ小屋の掃除をサボりがちの生き物係が、さらに掃除をサボろうとするじゃない!
そしてママのスマホの連絡網アプリによると、明日から学校が再開になったみたい。でも登下校の際は保護者同伴が必須で、マスコミに事件のことを聞かれても「何も知りません」で通して欲しいと箝口令が出されたみたい。
うちのママは天然だし、いきなりマスコミにマイクを向けられてもアタフタしないでいられるかどうか、あたしはとっても心配だわ。まあ暁兄ちゃんと昴兄ちゃんがいるから大丈夫だろうけど。むしろ昴兄ちゃんが犬飼さんを理詰めで追い出したときのように、マスコミのことも理詰めで追い出そうとして、彼らはさっさと逃げていきそうだけれど。
学校が再開になったその日の午後、ママが暁兄ちゃんと昴兄ちゃんを連れて帰ってきた。カーペットの上でゴロゴロしていたあたしは、テレビのリモコンの電源ボタンを押してみた。ちょうどニュースをやっていたわ。
「あら、やっぱり。緑が丘小学校の事件のこと、やっているわよ!」
テレビには、何度も見た緑が丘小学校が映っていた。さすがに一般人が映ったときは、顔にモザイクがかかっていたけれど。
「お。あれって父さんの後ろ姿じゃん? 背広のお尻のところ、破けそうになっていない? 母さん、そろそろ新しいスーツ買ってあげなよ。昨日、学校で刑事さんたちを見たけれど、父さんの後輩の方がいいスーツを着ていたよ」
昴兄ちゃんによって高まった我が家のエンゲル係数をどうにかすれば、すぐに買ってあげられるようになると思うわよ。
「ちょっとレポーターさん、俺のクラスで植えたダリアの花、ちゃんと映してよ。せっかくスミレが水あげしているんだからさ」
暁兄ちゃんのクラスで植えたにしては、水あげとかのお世話、スミレさんに任せきりにしているじゃないの! 暁兄ちゃんもちゃんとお世話しなさいよ!
それにしても……あんたたち、自分たちの担任の先生が死んだっていうのに、随分と呑気なものね。まあ一年のときから何だかんだ顔を合わせている同級生たちと違って、半年くらいの付き合いしかない大人なんて、こんなものなのかしらね。
そしてこのニュースで分かったことがある。どうやら三津井は昨晩の十八時から二十二時までが死亡推定時刻らしいけど、国枝は一昨日の十八時から二十二時までが死亡推定時刻らしい。つまり三津井が殺されるより丸一日前に、すでに国枝が殺されていたことになる。つまりは、国枝が三津井を殺したというのはあり得ないことになる。
さらに国枝は頭を鈍器で殴られて殺されていて、三津井と違って首だけ死体にはなっていなくて、特に暴行された形跡もなくて、学校の敷地の南東にあるチャボ小屋の中から発見されたらしい。その小屋に寝かされた状態で上から園芸用の腐葉土をかけられていて、警察の捜査が入るまで、誰も気付かなかったとのこと。
皆がいつも通りに学校に通って、校舎で授業を受けたり校庭で運動したりしていたとき、少し離れた場所では国枝が誰にも気付かれずに冷たくなっていたということだ。学校で飼っているとはいえ、ウサギやモルモットと比べたらファンの少ないチャボだから、あんまり小屋に近付こうとする人もいなかったし、腐乱死体の匂いがしてもチャボの匂いと混じって分からなかったのだろう。犯人もなかなか考えたものだわ。
それにしても、死亡推定時刻とか、どこで死体が見つかったかとか、そこまで細かく報道しちゃって大丈夫なのかしら? まあ今の時代、どんなに隠しても、SNSで誰かしらによって拡散されちゃうんだろうけど。
そして暁兄ちゃんと昴兄ちゃんの話によると、保護者同伴での登下校ができない生徒たちが大勢、休んだみたい。そういえば、二人が帰ってきたとき、昴兄ちゃんが珍しく「お腹いっぱい」と言っていたわね。休んだ子たちの分の給食を独り占めしたに違いないわ。それでも帰ってからすぐにお煎餅を食べ始めていたけれど。
とりあえず学校では、常に国枝と三津井の二人が殺された話でもちきりだったらしい。そして小学校という場所柄なのか、仕方ないんだろうけど、事件はすぐに怪談に結び付けられたらしい。学校でサッカーをするとボールがいつの間にか人の頭にすり替わっているとか、学校のチャボは人の肉を食べて育ったから掃除のために小屋に入ろうとしたら人間に襲いかかってきて食べられるとか。そんな噂が立つと、普段からチャボ小屋の掃除をサボりがちの生き物係が、さらに掃除をサボろうとするじゃない!
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