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他人のものは密の味3
しおりを挟むその夜、ヨウジはケイと話し合った。ベッドの上で、お互いに向き合って座る。
「ごめんな。俺のせいでね。もう赤ん坊は諦めよう。お袋にも、俺が無精子症と話すさ」
ケイはうつむき、話しずらそうに声を出す。
「もう。赤ちゃんをあきらめるの?」
「ああ。しかたないさ。まさか他の男の精子をお前の身体に入れるわけは行かないだろう」
「跡取りはどうするの?」
俺は天井を見ながら、さて、どうするか? と考える。全く考えが及ばない。
適当に答えた。
「養子でももらうさ。血がつながっていないけど、それならお袋もなっとくするさ」
ケイは顔を両手で覆う。泣き始めた。
「私はイヤ。赤ちゃんがほしいの。私の血をわけた子供がほしい」
「そんなことを言ったって、どうにもならないじゃないか」
ケイを抱きしめると、とても愛おしい気持ちになった。
ああ、俺はこの女を心から愛していた。この女は一生話したくない。
「いずれにしても、他の男の精子で生まれた子供など、俺はほしくない」
はっきりとケイに言い放った。
次の日、久々に醤油工場に出る。杜氏(とうじ)である工場長が、神棚に拝んで、これから、蒸した大豆に麹菌(こうじきん)を仕込むところだった。
社長のお袋が横に立っていた。
俺が隣に立つと、横目でぎろりとにらんだ。
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ムっとする。なにも仕込みの日に言わなくともいいのでないか。それも大勢の従業員の前で。
「お袋。止めてくれよ。こんなところで。みんな聞いているじゃないか」
「そんなこと、構わないよ。ここにいる社員たちは、先々代からの社員で、いわば身内も同然。私と同じように、ケイさんが妊娠することを望んでいるよ」
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