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3章 淫魔に憑かれた村
STORY41 雨中の少女
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ザァァァァァァァ……
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
雨が降りしきる夜の荒野を少女が一人駆けている。ボロボロで汚れた服を着て、穴のあいた靴を履いた少女は全身が傷つきながらも懸命に走ってきた。だが、体力的にも精神的にも限界は近い。
「アォォォォォォン!!」
暗闇の中、獣の遠吠えが聞こえる。少女は込み上げてくる恐怖と必死に戦い、こぼれ落ちる涙を拭い、それでもけっして足を止めることなく走り続ける。
タタタタタタタ……
近くを何かが駆ける足音が聞こえる。人間のものではない。これは…獣の足音だ。少女は恐怖を振り払うかのように目を瞑り、無我夢中で力の限り駆ける。
「あっ!!」
少女が小さく短く声をあげた。小石に足を滑らせた少女の体は一瞬だけ宙に浮き、転んだ。擦りむいた膝から血が流れる。
それでも、少女は立ち上がった。苦しくても痛くても辛くても諦めるわけにはいかなかった。だが……。
「…いや……こないで……」
少女は自分を取り囲む狼の群れに、弱々しい声で訴える。しかし、獰猛な獣に少女の思いが届くはずもなく、狼たちは前傾姿勢をとり、今にも目の前の獲物に飛び掛かってきそうだ。
「……いや……いや……お願い……こないで……」
恐怖心が頂点に達した少女の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになり、さらに失禁もしてしまった。
「グルルルルルルル……ガウッ!!」
正面にいた狼が少女に襲いかかってきた。少女は固く目を瞑る。
その時、少女は何者かに両肩を掴まれ、フワリと舞い上がる感覚をおぼえた。恐る恐る薄目を開ける。眼下では獲物を追って荒野を駆ける狼の群れが見えた。いったい、自分の身に何が起きたのかを確かめようと頭上に視線を移す。
「……」
少女は息を呑んだ。もしかして助かったのかという淡い期待は裏切られた。
「ハハハハハハハ! このガキはアタシが先に見つけたんだよ。犬っころどもなんかにくれてやるもんか! アタシが喰ってやるんだよ!!」
少女の両肩を掴んだハーピーが荒野を走って追いかけてくる狼の群れに勝ち誇ったような視線を投げる。
(もう、ダメ……。わたし、殺されちゃうんだ……)
少女はあまりにも無力だった。仮に暴れてハーピーから逃れたとしても下には狼の群れがいる。結局はハーピーか狼に食べられる運命にあるのだ。そう考えると悲しくて辛くて…どうしようもない感情が少女を苦しめた。
「うわぁぁぁぁん! パパァ! ママァ!」
降りしきる雨の中、少女は力の限り泣いた。それでどうなるわけでもないことは知っている。それでも、泣かずにはいられなかったのだ。泣きながら少女はハーピーによって荒野を運ばれていった……。
◎
「ぎゃあっ!」
光線魔術による光の矢がハーピーの頭部を貫いた。その一撃で絶命したハーピーは霧消する。途端に少女の体は引力に引き寄せられて狼の群れが待ち構える地上へと落ちていく。
「落ちたぞ、リアーナ!」
「さすがね、ウラボス! あの子は任せて!」
マントの青年に声をかけられた少女が地上に落下する幼い少女の元へと駆ける。
「あたしはあの子の治療をするニャ。グランザは狼をなんとかするニャ!」
「うん! リャッカは早くあの子の所へ行ってあげて!」
サイクロプスはケットシーに言い置くと狼の群れに向かっていく。
バサッ
幼い少女は地面に激突する寸前に駆けつけた少女に抱き止められた。
「もう、大丈夫だからね」
自分を抱き止め、優しく頭を撫でてくれるリアーナに少女は目を瞬かせる。
「大丈夫かニャ? 治癒魔術」
少女の顔を覗きこんだリャッカが回復魔術を施す。少女は身体中から痛みが消えていくのを感じる。
「よく頑張ったね……」
全身が汚れ、疲れきっていた少女は、リアーナに優しく抱かれて眠りに落ちていった……。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
雨が降りしきる夜の荒野を少女が一人駆けている。ボロボロで汚れた服を着て、穴のあいた靴を履いた少女は全身が傷つきながらも懸命に走ってきた。だが、体力的にも精神的にも限界は近い。
「アォォォォォォン!!」
暗闇の中、獣の遠吠えが聞こえる。少女は込み上げてくる恐怖と必死に戦い、こぼれ落ちる涙を拭い、それでもけっして足を止めることなく走り続ける。
タタタタタタタ……
近くを何かが駆ける足音が聞こえる。人間のものではない。これは…獣の足音だ。少女は恐怖を振り払うかのように目を瞑り、無我夢中で力の限り駆ける。
「あっ!!」
少女が小さく短く声をあげた。小石に足を滑らせた少女の体は一瞬だけ宙に浮き、転んだ。擦りむいた膝から血が流れる。
それでも、少女は立ち上がった。苦しくても痛くても辛くても諦めるわけにはいかなかった。だが……。
「…いや……こないで……」
少女は自分を取り囲む狼の群れに、弱々しい声で訴える。しかし、獰猛な獣に少女の思いが届くはずもなく、狼たちは前傾姿勢をとり、今にも目の前の獲物に飛び掛かってきそうだ。
「……いや……いや……お願い……こないで……」
恐怖心が頂点に達した少女の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになり、さらに失禁もしてしまった。
「グルルルルルルル……ガウッ!!」
正面にいた狼が少女に襲いかかってきた。少女は固く目を瞑る。
その時、少女は何者かに両肩を掴まれ、フワリと舞い上がる感覚をおぼえた。恐る恐る薄目を開ける。眼下では獲物を追って荒野を駆ける狼の群れが見えた。いったい、自分の身に何が起きたのかを確かめようと頭上に視線を移す。
「……」
少女は息を呑んだ。もしかして助かったのかという淡い期待は裏切られた。
「ハハハハハハハ! このガキはアタシが先に見つけたんだよ。犬っころどもなんかにくれてやるもんか! アタシが喰ってやるんだよ!!」
少女の両肩を掴んだハーピーが荒野を走って追いかけてくる狼の群れに勝ち誇ったような視線を投げる。
(もう、ダメ……。わたし、殺されちゃうんだ……)
少女はあまりにも無力だった。仮に暴れてハーピーから逃れたとしても下には狼の群れがいる。結局はハーピーか狼に食べられる運命にあるのだ。そう考えると悲しくて辛くて…どうしようもない感情が少女を苦しめた。
「うわぁぁぁぁん! パパァ! ママァ!」
降りしきる雨の中、少女は力の限り泣いた。それでどうなるわけでもないことは知っている。それでも、泣かずにはいられなかったのだ。泣きながら少女はハーピーによって荒野を運ばれていった……。
◎
「ぎゃあっ!」
光線魔術による光の矢がハーピーの頭部を貫いた。その一撃で絶命したハーピーは霧消する。途端に少女の体は引力に引き寄せられて狼の群れが待ち構える地上へと落ちていく。
「落ちたぞ、リアーナ!」
「さすがね、ウラボス! あの子は任せて!」
マントの青年に声をかけられた少女が地上に落下する幼い少女の元へと駆ける。
「あたしはあの子の治療をするニャ。グランザは狼をなんとかするニャ!」
「うん! リャッカは早くあの子の所へ行ってあげて!」
サイクロプスはケットシーに言い置くと狼の群れに向かっていく。
バサッ
幼い少女は地面に激突する寸前に駆けつけた少女に抱き止められた。
「もう、大丈夫だからね」
自分を抱き止め、優しく頭を撫でてくれるリアーナに少女は目を瞬かせる。
「大丈夫かニャ? 治癒魔術」
少女の顔を覗きこんだリャッカが回復魔術を施す。少女は身体中から痛みが消えていくのを感じる。
「よく頑張ったね……」
全身が汚れ、疲れきっていた少女は、リアーナに優しく抱かれて眠りに落ちていった……。
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