冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

美山 鳥

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3章 淫魔に憑かれた村

STORY42 少女の願い

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 窓から差し込む暖かな日差しがベッドで眠る少女を照らす。開けられた窓から入る風はカーテンを揺らしていた。

 「どうニャ? まだ眠ってるかニャ?」

 リャッカがベッドの横で少女の寝顔を見ていたリアーナに小声で訊く。

 「うん、よく眠ってる……。よほど疲れてたんだね」

 静かに寝息をたてている幼い少女をそっと撫でる。

 「……う…ん……」

 幼い少女が薄目を開いた。

 「あっ、ごめんね! 起こしちゃった……」

 リアーナは少し驚いたような表情をしたが、すぐに笑顔を見せる。

 「もう、大丈夫?」

 リアーナは、少女をおどかさないように声のトーンを落として訊く。

 「…うん。ねぇ、お姉ちゃん、ここ…どこなの?」

 小さな少女は上体を起こした。見覚えのない部屋に戸惑っているようだ。

 「ここはシャルタ荒野の宿泊施設ニャ」

 少女はリャッカの答えをぼんやりと聞いている。まだ、寝起きで完全には覚醒していないのだろう。

 コンコン……

 ドアをノックする音がする。

 「どうぞ」

 リアーナが応答すると扉はゆっくりと開けられ、ウラボスとグランザが姿を現す。

 「ひっ!!」

 グランザの姿を目にした少女が短い悲鳴をあげる。リアーナは少女を落ち着かせようと、その小さな肩をそっと抱く。

 「大丈夫……。あの人は優しい人だから安心していいからね……」

 静かに語りかけるリアーナにいくらか落ち着きを取り戻した少女は肩の力を抜く。

 「目を覚ましたんだな」

 「そうみたいですね。本当によかった…」

 ウラボスとグランザも気にかけていた少女が目覚めたことに一安心したようである。

 「お名前、教えてくれる?」

 「ユナ…」

 リアーナの質問に少女は短く答える。

 「そっか。それじゃ、ユナちゃんはどこからきたの?」

 「チャアム…」

 「チャアム?……リャッカちゃん」

 リアーナが振り向くとリャッカは既に壁に貼り付けられていた地図を見ていた。

 「……あったニャ。ここからだと南東の方角にある村ニャ」

 リャッカが地図の一部を指差す。

 「ユナちゃんは1人できたの? お父さんやお母さんは?」

 リアーナが次の質問をした瞬間、ユナは弾かれたようにリアーナにすがり付いた。

 「ど…どうしたの!?」

 リアーナは突然のユナの行動に驚きながらも訊く。

 「お姉ちゃん! パパとママを助けて!! 村の大人の人たちを助けて!!!」

 興奮し、涙ながらにリアーナに助けを求めるユナ。

 「落ち着いて! ねっ、落ち着いて、何があったのかゆっくり話してくれる?」

 リアーナは震えるユナの体をそっと抱き抱える。



 リアーナに抱き抱えられながらユナは泣きじゃくっていたが、ようやく顔を上げる。

 「……パパと……ママが…村の大人の人たちが……みんな……おかしいの!…」

 「どういう風におかしいの?」

 「みんな…どんどん元気がなくなってきて……あのままじゃ!…。それに、モンスターもすごく増えてきてるの……」

 「村の大人の人たちの元気がなくなったこととモンスターが増殖したことに因果関係はあるんでしょうか?」

 グランザが疑問を口にする。

 「ウラボス、これってもしかしたら……」

 リャッカはウラボスに目配せする。ウラボスは黙って頷く。

 「何か心当たりがあるのね?」

 リアーナが訊く。

 「淫魔いんまの仕業の可能性が高いな」

 「淫魔いんま?」

 リアーナがさらに質問を重ねる。

 「人間の性欲に対して作用する魔術が得意だったり、異性を操ったりする能力に長けた魔族ニャ。簡単に言えばエッチなことが得意な魔族ニャ!」

 リアーナは答えを聞いて顔を赤らめる。

 「お願い、お姉ちゃん! パパとママを助けて!!」

 ユナはリアーナにしがみついて懇願する。

 「ねぇ、みんな。私、この娘を助けたい! いいよね?」

 「もちろんですよ。こんな小さな娘が助けを求めてるんですから」

 グランザが真っ先に賛成する。

 「俺も賛成だ。しかし……」

 続いてウラボスも賛成の意を表し、隣のリャッカに視線を移す。リャッカは少し難しい顔をしていた。
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