57 / 207
3章 淫魔に憑かれた村
STORY51 ルアン&獣型モンスター戦②
しおりを挟む
リアーナのレイピアが何度も空を裂く。
「どうしました、リアーナさん? その程度ではわたくしを倒すことはできませんよ? お仲間も、わたくしの眷族に苦戦しておられるようですから手助けも期待できませんねぇ。ククククク……」
リャッカとグランザのペアが獣型モンスターと戦っている様子を横目で見ながらルアンは余裕だった。
(落ち着いて!……ルアンはたしかに強いけど勝てない相手じゃないはず……。わたしたちを信用してくれたウラボスを失望させたくない! だから、絶対に敗けられない!!)
リアーナは自らに言い聞かせる。
「どうしたのです? こないのですか? ならば、こちらからいかせてもらいますよ! 水圧矢魔術!」
「くっ…」
リアーナは圧縮された水の矢を避け、レイピアによる連続突きを繰り出す。
(もっと! もっも早く、正確に狙うの! ウラボスとの特訓や今までの経験を無駄になんてできない!!)
ルアンに攻撃を繰り返す間にもリアーナは自らを鼓舞し、高めていく。
「むっ……」
リアーナのレイピアが遂にルアンの左肩を掠める。
(この娘、まさか強くなってきてるのか? ならば!)
ルアンは練り上げた魔力を右手に集中させる。
「我が秘術、とくと味わいなさい!」
ルアンは魔力をリアーナへと一気に流し込んだ。
◎
「なっ!?」
リアーナは困惑した。今までルアンと戦闘していたはずが、秘術とやらを受けてしまった瞬間、異空間へと転送されてしまったらしい。
「ルアン! 出てきなさい!!」
リアーナは姿を見せない敵に向かって叫ぶ。だが、返事はない。
(どうしよう……。こんな所でぐずぐずしてるわけにはいかないのに!)
募る焦燥感に唇を噛む。
パキンッ!!
どこかで何かが割れるような音が聞こえ、リアーナは周囲を見回す。
「あっ!」
空間に小さな亀裂を見つけ、声をあげる。
パキンッ…パキパキパキッ……パキィンッ!
亀裂はみるみるうちに広がり、遂には穴が開く。
「リアーナ、無事か!?」
穴の向こう側から現れた人物に、それまで不安を抱いていたリアーナの表情が明るくなる。
「ウラボス!」
リアーナはその人物の名を呼ぶ。ウラボスはその声に反応して振り向くと安堵したような笑顔を見せて近づいてくる。
「よかった! 無事だったんだな!!」
ウラボスはリアーナを抱き寄せる。
「ちょ…ちょっと、ウラボス!?」
突然の予期せぬ行動に固まるリアーナ。
「ああ、悪い。リアーナが無事だったのが嬉しかったから、つい……」
ウラボスはリアーナを解放しニコリと微笑む。
「それより、ここはどこなの?」
「おそらくはルアンが作り出した異空間だ」
「そんな! 脱出法はあるの!?」
リアーナは不安と期待を込めた視線をウラボスに向ける。しかし、ウラボスは首を横に振る。
「残念だが、ここに入ったからには二度と出ることは不可能だ。俺が入ってきた穴も既に塞がってるだろ?」
言われて視線を移す。たしかにウラボスが入ってきた穴は完全に塞がっていた。
「でも…でも、何か方法があるはずよ! だって、ウラボスがここに入ってこれたんだから逆の事だって……」
「無理なんだ。外側からなら空間の壁を穿つことは可能だ。しかし、内側からだと……。諦めるしかないんだ……」
「…………でも、リャッカちゃんやグランザたちも頑張ってるのよ!?」
「ここから出られないのに、あいつらを心配したところで意味ないじゃないか。俺たちにはなんの関係もない」
「そんな…………」
ウラボスは押し黙って俯くリアーナを抱き寄せようとそっと手を伸ばす。
ドンッ!
リアーナは無防備なウラボスを突き飛ばす。
「なにをするんだ、リアーナ?」
ウラボスは困惑したように訊く。
「あなた、何者なの!?」
「なにを言ってるんだ? 俺は……」
「嘘はやめて! あなたなんかウラボスじゃない!! 本物のウラボスなら何もしないまま簡単に諦めたりしない! 命懸けで戦ってるリャッカちゃんやグランザのことを気にしてもしかたないとか……関係ないとか……、そんなこと、絶対に言ったりしない!!! ウラボスを…ウラボスを侮辱するようなことは絶対に許さない!!!」
リアーナは言い放ち、レイピアを構える。
パリィィィィィィンッ!!!
ガラスが砕けるような音が響き渡り、周囲の壁が一斉に消滅した。
「どうしました、リアーナさん? その程度ではわたくしを倒すことはできませんよ? お仲間も、わたくしの眷族に苦戦しておられるようですから手助けも期待できませんねぇ。ククククク……」
リャッカとグランザのペアが獣型モンスターと戦っている様子を横目で見ながらルアンは余裕だった。
(落ち着いて!……ルアンはたしかに強いけど勝てない相手じゃないはず……。わたしたちを信用してくれたウラボスを失望させたくない! だから、絶対に敗けられない!!)
リアーナは自らに言い聞かせる。
「どうしたのです? こないのですか? ならば、こちらからいかせてもらいますよ! 水圧矢魔術!」
「くっ…」
リアーナは圧縮された水の矢を避け、レイピアによる連続突きを繰り出す。
(もっと! もっも早く、正確に狙うの! ウラボスとの特訓や今までの経験を無駄になんてできない!!)
ルアンに攻撃を繰り返す間にもリアーナは自らを鼓舞し、高めていく。
「むっ……」
リアーナのレイピアが遂にルアンの左肩を掠める。
(この娘、まさか強くなってきてるのか? ならば!)
ルアンは練り上げた魔力を右手に集中させる。
「我が秘術、とくと味わいなさい!」
ルアンは魔力をリアーナへと一気に流し込んだ。
◎
「なっ!?」
リアーナは困惑した。今までルアンと戦闘していたはずが、秘術とやらを受けてしまった瞬間、異空間へと転送されてしまったらしい。
「ルアン! 出てきなさい!!」
リアーナは姿を見せない敵に向かって叫ぶ。だが、返事はない。
(どうしよう……。こんな所でぐずぐずしてるわけにはいかないのに!)
募る焦燥感に唇を噛む。
パキンッ!!
どこかで何かが割れるような音が聞こえ、リアーナは周囲を見回す。
「あっ!」
空間に小さな亀裂を見つけ、声をあげる。
パキンッ…パキパキパキッ……パキィンッ!
亀裂はみるみるうちに広がり、遂には穴が開く。
「リアーナ、無事か!?」
穴の向こう側から現れた人物に、それまで不安を抱いていたリアーナの表情が明るくなる。
「ウラボス!」
リアーナはその人物の名を呼ぶ。ウラボスはその声に反応して振り向くと安堵したような笑顔を見せて近づいてくる。
「よかった! 無事だったんだな!!」
ウラボスはリアーナを抱き寄せる。
「ちょ…ちょっと、ウラボス!?」
突然の予期せぬ行動に固まるリアーナ。
「ああ、悪い。リアーナが無事だったのが嬉しかったから、つい……」
ウラボスはリアーナを解放しニコリと微笑む。
「それより、ここはどこなの?」
「おそらくはルアンが作り出した異空間だ」
「そんな! 脱出法はあるの!?」
リアーナは不安と期待を込めた視線をウラボスに向ける。しかし、ウラボスは首を横に振る。
「残念だが、ここに入ったからには二度と出ることは不可能だ。俺が入ってきた穴も既に塞がってるだろ?」
言われて視線を移す。たしかにウラボスが入ってきた穴は完全に塞がっていた。
「でも…でも、何か方法があるはずよ! だって、ウラボスがここに入ってこれたんだから逆の事だって……」
「無理なんだ。外側からなら空間の壁を穿つことは可能だ。しかし、内側からだと……。諦めるしかないんだ……」
「…………でも、リャッカちゃんやグランザたちも頑張ってるのよ!?」
「ここから出られないのに、あいつらを心配したところで意味ないじゃないか。俺たちにはなんの関係もない」
「そんな…………」
ウラボスは押し黙って俯くリアーナを抱き寄せようとそっと手を伸ばす。
ドンッ!
リアーナは無防備なウラボスを突き飛ばす。
「なにをするんだ、リアーナ?」
ウラボスは困惑したように訊く。
「あなた、何者なの!?」
「なにを言ってるんだ? 俺は……」
「嘘はやめて! あなたなんかウラボスじゃない!! 本物のウラボスなら何もしないまま簡単に諦めたりしない! 命懸けで戦ってるリャッカちゃんやグランザのことを気にしてもしかたないとか……関係ないとか……、そんなこと、絶対に言ったりしない!!! ウラボスを…ウラボスを侮辱するようなことは絶対に許さない!!!」
リアーナは言い放ち、レイピアを構える。
パリィィィィィィンッ!!!
ガラスが砕けるような音が響き渡り、周囲の壁が一斉に消滅した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる