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3章 淫魔に憑かれた村

STORY59 旅路は続く

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 ドラゴンの牙を1億5000万コルドで売却したリャッカは、ポーション、毒消し、各種の魔石のストック、特大サイズの荷車、防寒具、寝袋など冒険に必要になる様々なアイテムを購入した。

 荷車は軽量で頑丈なミスリルを使い、幌には耐魔・耐熱・耐寒に優れた特殊生地を使った超高級仕様となっている。これは旅をより快適にというリャッカの強い要望によるものであった。ちなみに、荷車を引く役はサイクロプスのグランザに決定した。

 荷車は特注品であり、完成までに一月ほどの時間を要するため、その間はいつものようにあまり請け負う冒険者がいないような依頼を中心にこなしていた。



 ようやく荷車が完成し、タウカラの町をあとにした暁の渡り鳥は草原の一本道を移動中である。

 「本当に大丈夫? 無理しなくていいからね?」

 荷車の引くグランザにリアーナが声をかける。

 「大丈夫ですよ。ミスリルを使用してるから信じられないくらい軽いです。それにこれだけの特大サイズだと僕も広々と眠れて嬉しいですから」

 「そう……。それならいいんだけど…」

 「中はどうですか?」

 「すっごく快適だよ! 寝袋だってフカフカだし!」

 リアーナは笑顔で答える。

 「僕も寝るのが楽しみです!」

 「そうね。今日は早めに休みましょ」

 「はい! ありがとうございます!」

 グランザが嬉しそうに答えるのを見て、リアーナもまた笑顔になる。

 「これもウラボスのお陰ね。本当にありがとう!」

 中で背中を壁に預けている村人に声をかけるリアーナ。

 「気にするなって言っただろ。そんなことより、これで随分と資金にもゆとりができたんじゃないか?」

 「荷車の製造に4000万、みんなの装備品の修理・道具類の補充600万、あたしたちのボーナスに400万使ったから残りは1億コルドだニャ。ほんとはもっと豪遊してみたかったんだけどリアーナに反対されちゃったニャ…」

 リャッカがしょんぼりする。

 「当たり前です! あれはウラボスが用意してくれた大事なお金なんですからね! ちゃんと考えて使わないと!」

 「うぅ……」

 リャッカはリアーナに正論を返されて言葉を詰まらせる。

 「これで皆さんとの冒険がさらに楽しくなりそうですね!」

 グランザが声を弾ませる。

 「うん! わたし、まだまだ頼りなくてダメなリーダーだけど力を貸してくれる?」

 「もちろんニャ! みんな、リアーナが好きで集まったニャ!」

 「そうですよ! 僕たちのリーダーはリアーナさんなんです。どうか、自信を持ってください」

 ウラボスは無言で会話を聞いている。

 「ニャニャ? ウラボスも何か言うニャ!」

 リャッカがウラボスに発言を促す。

 「俺は特に言うこともないだろ」

 「まったく、ウラボスはノリが悪いニャ! それとも、あたしやグランザとは別の意味でリアーナが好きだから側にいるのかニャア?」

 リャッカがニヤニヤと笑みをこぼしながら、ウラボスとリアーナを交互に見る。

 「リャッカちゃん!!」

 「はぁ……。おまえなぁ……」

 ウラボスは呆れたようにため息混じりの言うと、ウッド・ロッドでリャッカの頭をコツンと叩く。

 「ウニャア! ウラボスがいじめるニャア……」

 リャッカは猫の姿になるとリアーナの胸に飛び込む。リアーナは苦笑しながらもリャッカを優しく撫でる。

 こうして、暁の渡り鳥の賑やかな冒険はさらに続く。

~3章 淫魔に憑かれた村 完~
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