冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

美山 鳥

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5章 幸運の獣

STORY79 宿屋ニギヤカ亭

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 宿屋ニギヤカ亭。

 「リアーナ、ひとつ訊いてもいいかニャ?」

 リャッカが隣の席に座るリアーナに声をかける。

 「なぁに、リャッカちゃん?」

 リアーナが笑顔で答える。

 「あの立派な宿屋で泊まろうかと相談していたあたしたちが、こんなボロ宿に宿泊しているわけが知りたいニャ」

 「あは…は……は…は……。どうしてだろうね?」

 リアーナが視線をそらしながら返す。

 「ニャハハハ……。それはニャ、あのネネカって娘に泣き付かれたリアーナがこっちに泊まることを決めたからニャ!」

 「ごめ~ん、リャッカちゃん!」

 リャッカに肉球でポスポス殴られながらリアーナが謝っている。

 「べつにいいじゃないか。こっちだってグランザが泊まれるだけの広さはあるし、料理も旨かったぞ……」

 「そうだよ、リャッカ。それに宿泊客も僕たちだけだから気を遣わなくていいじゃない」

 ウラボスとグランザがリアーナに助け船を出す。

 「全っ然よくないニャ!」

 リャッカはすっかりご機嫌斜めである。

 コンコン

 扉をノックする音のあと、ネネカが客室へと入ってくる。

 「いやぁ、お客様をとれなくて困ってたんだよね。リアーナさんたちに出会えて助かったわ。本当にありがとうございます!」

 ネネカは改めて暁の渡り鳥に頭を下げる。

 「いえいえ。こちらこそ夕食がとっても美味しくて大満足です。ご馳走さまでした!」

 リアーナはネネカに笑顔を見せる。

 「ホントに!? そう言ってもらえるとすっごく嬉しい! 張り切った甲斐があるってもんだわ!」

 ネネカが嬉々として返す。

 「あっ、そうだ。猫ちゃんによかったらコレを…と思ってきたんだ」

 そう言って取り出したのはマタタビの木片だった。

 「ありがとニャ♪ あたしもこっちの宿にしておいてよかったって思ってたとこだったニャ!」

 ものすごい早さでマタタビの木片を受け取ったリャッカがすっかりご満悦の様子で話す。

 (おいおい、いったいどの口がそれを言ってるんだ?)

 ウラボスは心の中で密かにツッコミを入れておく。

 その時、客室の出入口から小さな人影が3つ中に入ってきた。

 「すげぇ! 本物の冒険者だ!」

 「すごいであります!」

 「あっ、イケメン魔術師様だぁ!」

 小さな人影は暁の渡り鳥を見て、口々に感想を述べている。

 「こらっ、あんたたち! お客様の部屋に勝手に入っちゃダメでしょ!」

 ネネカが3つの小さな影の頭にゲンコツを落としていく。

 「うげっ!」

 「痛っ!」

 「きゃんっ!」

 ネネカの鉄拳制裁を受け、自らの頭を撫でる子供たち。

 「ほらほら、大切なお客様なんだから、きちんと挨拶なさい!」

 ネネカに促され、子供たちは横一列に整列する。

 「オッス! オイラはジック!」

 緑の髪の少年が元気に挨拶する。

 「自分はクックであります!」

 続いて、眼鏡をかけた細身の男児が挨拶をする。

 「はじめまして! うちはコノネっていうの。よろしくね、イケメン魔術師様♪」

 最後に、おしゃれに髪を結わえた少女がVサインをしながら挨拶をした。その視線はウラボスに向けられていて、他は眼中にないようである。

 「すみません。この子たちはあたしの妹と弟なんだ。あまり騒がしくさせないようにするから、余所よそへ行かないでね!?」

 ネネカが3人の弟妹と一緒に頭を下げる。
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