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5章 幸運の獣
STORY87 ゼヴァノンの拠点への潜入①
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「いやぁ…皆さん、お待たせいたしました! ゼヴァノンの居所が判りやしたぜ!!」
ジョーがニギヤカ亭で待機中の暁の渡り鳥の元に情報を持ってきたのは依頼から二日後の夕暮れ時であった。
「よかった! まだこの街にいたのね!?」
ゼヴァノンが既にこの街から離れている可能性を危惧していたリアーナが言う。
「はい! ですが、お急ぎください。あの野郎は既にカーバンクルを手に入れて今夜にでも街を発つつもりですぜ!」
「時間的に余裕はなし、か。すぐに行動を起こしたほうがよさそうだな」
ウラボスたちは立ち上がる。
「これがあの野郎の居場所です! どうか、やつを!!」
ジョーは1枚のメモをウラボスに手渡し、両手で握手を交わす。
「わかった。任せておいてくれ」
ジョーとしっかり誓いを立て、暁の渡り鳥はニギヤカ亭をあとにした。
◎
「ここ、だよね?」
ジョーから手渡された地図を確認して一件の廃屋の前で立ち止まる。
「あたしとリアーナで中に踏み込むニャ。ウラボスとグランザは外に出てきたところを捕まえてほしいニャ」
「はい、お気をつけて」
グランザが潜入組の二人に声をかける。
リアーナとリャッカは互いに目配せし合ってから内部へ突入する。
中は荒れ果てていて家具類は散乱している。
「手分けして探そう」
「了解ニャ。だけど、階を移動する時は一人で行動しちゃダメだニャ。危険すぎるニャ」
リャッカからの提案にリアーナは頷く。
ギィ…
リアーナは廃屋の一室のドアをそっと開けて中を覗く。
(暗い…)
腰のポシェットに手を伸ばして照明魔術の魔石を取り出す。魔石から放つ明かりによって視界が確保される。
一歩ずつ慎重に中に入っていく。不気味なほどの静まり返った部屋には人影はなく、それらしい気配もない。
ピンッ
何かが足に引っかかるような微かな感触が伝わる。
リアーナは考えるよりも先に危険を察知して後方に飛び退いた。天井から無数の針が降り注ぎ、直前まで立っていた床に突き刺さった。
(なっ!?)
今度は背中に糸が引っかかるのを感じ、部屋の出入口へと跳ぶ。直後に先ほどと同様のトラップが発動した。
リアーナは恐怖によって強く早くなる鼓動を抑えつつ、室内を確認する。奥のほうは薄暗くはっきりとはわからない。
意を決して再び室内に入る。より慎重に一歩を確かめながらゆっくりと進む。
(あれは?)
部屋の奥の床に落ちている何か小さな物が照明魔術の魔石が放つ光を反射している。
(…指輪?)
目を凝らすと、それは指輪のようだった。側まで行き、ゆっくりと指輪に手を伸ばして拾い上げる。
リアーナはまたしても飛び退いた。指輪は床と極細の糸で繋がれており、指輪を持ち上げることで糸が引っ張られる仕組みになっていた。
「くっ!」
様々な角度から針が飛来する。リアーナは廊下へと急ぎつつ、レイピアで針を叩き落とし、どうにか危機を乗り切ることができた。
(危なかった…)
リアーナは冷や汗を拭いながら深呼吸をして自らを落ち着かせる。
(ウラボスとの特訓がなければ対応しきれなかった……)
リアーナは、修行に付き合ってくれるウラボスに感謝しながら探索を続ける。
ジョーがニギヤカ亭で待機中の暁の渡り鳥の元に情報を持ってきたのは依頼から二日後の夕暮れ時であった。
「よかった! まだこの街にいたのね!?」
ゼヴァノンが既にこの街から離れている可能性を危惧していたリアーナが言う。
「はい! ですが、お急ぎください。あの野郎は既にカーバンクルを手に入れて今夜にでも街を発つつもりですぜ!」
「時間的に余裕はなし、か。すぐに行動を起こしたほうがよさそうだな」
ウラボスたちは立ち上がる。
「これがあの野郎の居場所です! どうか、やつを!!」
ジョーは1枚のメモをウラボスに手渡し、両手で握手を交わす。
「わかった。任せておいてくれ」
ジョーとしっかり誓いを立て、暁の渡り鳥はニギヤカ亭をあとにした。
◎
「ここ、だよね?」
ジョーから手渡された地図を確認して一件の廃屋の前で立ち止まる。
「あたしとリアーナで中に踏み込むニャ。ウラボスとグランザは外に出てきたところを捕まえてほしいニャ」
「はい、お気をつけて」
グランザが潜入組の二人に声をかける。
リアーナとリャッカは互いに目配せし合ってから内部へ突入する。
中は荒れ果てていて家具類は散乱している。
「手分けして探そう」
「了解ニャ。だけど、階を移動する時は一人で行動しちゃダメだニャ。危険すぎるニャ」
リャッカからの提案にリアーナは頷く。
ギィ…
リアーナは廃屋の一室のドアをそっと開けて中を覗く。
(暗い…)
腰のポシェットに手を伸ばして照明魔術の魔石を取り出す。魔石から放つ明かりによって視界が確保される。
一歩ずつ慎重に中に入っていく。不気味なほどの静まり返った部屋には人影はなく、それらしい気配もない。
ピンッ
何かが足に引っかかるような微かな感触が伝わる。
リアーナは考えるよりも先に危険を察知して後方に飛び退いた。天井から無数の針が降り注ぎ、直前まで立っていた床に突き刺さった。
(なっ!?)
今度は背中に糸が引っかかるのを感じ、部屋の出入口へと跳ぶ。直後に先ほどと同様のトラップが発動した。
リアーナは恐怖によって強く早くなる鼓動を抑えつつ、室内を確認する。奥のほうは薄暗くはっきりとはわからない。
意を決して再び室内に入る。より慎重に一歩を確かめながらゆっくりと進む。
(あれは?)
部屋の奥の床に落ちている何か小さな物が照明魔術の魔石が放つ光を反射している。
(…指輪?)
目を凝らすと、それは指輪のようだった。側まで行き、ゆっくりと指輪に手を伸ばして拾い上げる。
リアーナはまたしても飛び退いた。指輪は床と極細の糸で繋がれており、指輪を持ち上げることで糸が引っ張られる仕組みになっていた。
「くっ!」
様々な角度から針が飛来する。リアーナは廊下へと急ぎつつ、レイピアで針を叩き落とし、どうにか危機を乗り切ることができた。
(危なかった…)
リアーナは冷や汗を拭いながら深呼吸をして自らを落ち着かせる。
(ウラボスとの特訓がなければ対応しきれなかった……)
リアーナは、修行に付き合ってくれるウラボスに感謝しながら探索を続ける。
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