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5章 幸運の獣

STORY93 カーバンクルのテルースタ

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 「いや~、一時はどうなることかと肝を冷やしたわ~!」

 籠から解放されたカーバンクルは大きく伸びをしながら言う。

 「しっかし、あんたら、めっちゃ強いやん! あの盗賊ゼヴァノンを倒してまうやなんてびっくりやわ!」

 「なんか、思ってた幸運の幻獣とはイメージが違うニャ……」

 「そら、あんたらの一方的なイメージやんか! オイラたちだって個性はあるんやで!?」

 リャッカの言葉にカーバンクルは反論する。

 「それにしても、こいつの個性は強烈だな…」

 ウラボスもポツリと漏らす。

 「ねぇ、ゼヴァノンに捕まる前はどこにいたの?」

 リアーナがカーバンクルに訊く。

 「オイラはさすらいのカーバンクルや!」

 「つまり、旅をしてたってことだね?」

 グランザが確認するとカーバンクルは首肯し、胸を張る。

 「一匹でか?」

 ウラボスが訊くとカーバンクルは眉間にしわを寄せる。

 「一匹やないで一人っちゅうてんか!」

 「いろいろ面倒くさいな…」

 ウラボスが呆れたように吐き捨てる。

 「それで、カーバンクル君は…」

 「テルースタや」

 「え?」

 「そやから、オイラの名前はテルースタや」

 「じゃあ、テルースタ君はこれからどうしたいの?」

 「そやなぁ……とりあえず、行くあてもないし、あんたらと一緒に旅するのもおもろそうやな!」

 テルースタから飛び出した言葉に暁の渡り鳥のメンバーは顔を見合わせる。

 「ちょっと待つニャ! とんでもないこと言っちゃダメだニャ! 勝手に決めるんじゃないニャ!」

 リャッカが反論する。

 「そないなこと言わんと頼むわ。オイラ一人やったら、またさらわれるかもしれんし……」

 テルースタが瞳を潤ませて懇願する。

 (まずいニャ! この展開はリアーナが承認する流れニャ!!)

 「あたしたちは冒険者ニャ。非常に危険なことも多いニャ! そんな旅に同行させるのは賛成できないニャ!」

 リャッカが正論でテルースタの同行を阻止しようとする。

 「いやいや、オイラだっていろいろできるで! 歌にダンスに話芸も得意や!」

 「それは冒険者に要らないスキルだと思うニャ」

 リャッカに冷めた口調で言われ、テルースタはフリーズする。

 「まぁ、その話は宿でゆっくりするとして、ひとまず冒険者ギルドへ行って報告と、ここのギルドが抱えてる最大の案件とやらを聞きにいかないか?」

 「そうね。テルースタ君のことは後でゆっくり決めましょ。リャッカちゃんもテルースタ君もそれでいいよね?」

 ウラボスの提案に賛成したリアーナがリャッカとテルースタに訊く。

 「それでいいニャ」

 「オイラもそれでええで!」

 こうして、暁の渡り鳥とカーバンクルのテルースタは冒険者ギルドへと向かった。
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