115 / 207
6章 オーク大戦
STORY109 姉弟の思い
しおりを挟む
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
己の限界を遥かに越える力を出し切ったマカは草原に座り込んで激しく息切れしていた。もはや立ち上がる力も残されてはいない。
「…勝っ…た……」
マカは倒れたまま動かないウラボスを見て勝利を確信する。
「残念だけど、俺はまだ生きてるぜ」
身体を起こしたウラボスはマカに視線を送る。
「そ…んな……」
マカはどうにか立ち上がろうとするが力が入らない。絶望が胸中に押し寄せてくる。
「なぁ、ひとつ訊いておきたいんだけど、いいか?」
マカはウラボスの質問を待つ。
「おまえ、どうしてそこまで勝利に拘るんだ? でなきゃ、自分の力をあそこまで超えることはできないだろ?」
ウラボスに問われたマカは暫し沈黙していたが、やがて口を開く。
「ルチヌムの街の連中に報復し、土地を取り返すためよ! そのためには敗けるわけにいかなかったのよ!!」
「それはどういうことだ?」
問い返すウラボスにマカはフンと鼻を鳴らす。
「そのままよ。あの街の土地には人狼族の里があったのに人間たちが奪っていった!!」
マカは瞳に激しい憎悪を宿す。
「……人間たちによる侵略か」
「ええ、そうよ! 人間たちはいつもそうだわ! 他種族の縄張りを踏み荒らしては自分たちの好きなように作り替えていく! 私たちはそんな身勝手な人間たちから土地を取り返そうとしただけだわ!! それのどこが悪いと言うの!?」
溢れだす感情のままに言葉をぶつけるマカ。
「そうだな。おまえたちの気持ちもわからなくはない。だが、そのためにあれだけの数のオークを利用し、戦争のようなことを始めたのはいただけないな」
「ふん、人間が偉そうなこと言わないでよね!」
「だいたい、人狼族と人間との問題にあのオークたちは関係なかったんじゃないか? だとしたら、あのオークたちも今回の件の被害者とも言えるんじゃないのか?」
「それは……」
ウラボスに指摘され、マカは口ごもる。
「……まぁ、とにかくさっきの場所に戻ろうぜ。あんたも相方がどうなったか気になるだろ?」
「ウォグは…弟は強いわ! あなたの仲間はもう死んでるわ!!」
自信ありげに言い放つマカ。
「それも含めて自分の目で確かめればいいだろ」
「敗れた私を殺さないの?」
立ち上がり、手を差し伸べるウラボスにマカが訊く。
「ふっ……。以前の俺ならばそうしていたかもな。だどさ、泣き虫で未熟者で……それでもただひたすらに前を向いて頑張るお人好しのうちのリーダーに出会って変われたんだと思うよ」
マカは黙ったままウラボスを見つめる。
「ほら、さっさと行こうぜ」
手を差し伸べたまま微笑するウラボスの手をとるマカ。その姿はいつの間にか人狼化を解いていた。
己の限界を遥かに越える力を出し切ったマカは草原に座り込んで激しく息切れしていた。もはや立ち上がる力も残されてはいない。
「…勝っ…た……」
マカは倒れたまま動かないウラボスを見て勝利を確信する。
「残念だけど、俺はまだ生きてるぜ」
身体を起こしたウラボスはマカに視線を送る。
「そ…んな……」
マカはどうにか立ち上がろうとするが力が入らない。絶望が胸中に押し寄せてくる。
「なぁ、ひとつ訊いておきたいんだけど、いいか?」
マカはウラボスの質問を待つ。
「おまえ、どうしてそこまで勝利に拘るんだ? でなきゃ、自分の力をあそこまで超えることはできないだろ?」
ウラボスに問われたマカは暫し沈黙していたが、やがて口を開く。
「ルチヌムの街の連中に報復し、土地を取り返すためよ! そのためには敗けるわけにいかなかったのよ!!」
「それはどういうことだ?」
問い返すウラボスにマカはフンと鼻を鳴らす。
「そのままよ。あの街の土地には人狼族の里があったのに人間たちが奪っていった!!」
マカは瞳に激しい憎悪を宿す。
「……人間たちによる侵略か」
「ええ、そうよ! 人間たちはいつもそうだわ! 他種族の縄張りを踏み荒らしては自分たちの好きなように作り替えていく! 私たちはそんな身勝手な人間たちから土地を取り返そうとしただけだわ!! それのどこが悪いと言うの!?」
溢れだす感情のままに言葉をぶつけるマカ。
「そうだな。おまえたちの気持ちもわからなくはない。だが、そのためにあれだけの数のオークを利用し、戦争のようなことを始めたのはいただけないな」
「ふん、人間が偉そうなこと言わないでよね!」
「だいたい、人狼族と人間との問題にあのオークたちは関係なかったんじゃないか? だとしたら、あのオークたちも今回の件の被害者とも言えるんじゃないのか?」
「それは……」
ウラボスに指摘され、マカは口ごもる。
「……まぁ、とにかくさっきの場所に戻ろうぜ。あんたも相方がどうなったか気になるだろ?」
「ウォグは…弟は強いわ! あなたの仲間はもう死んでるわ!!」
自信ありげに言い放つマカ。
「それも含めて自分の目で確かめればいいだろ」
「敗れた私を殺さないの?」
立ち上がり、手を差し伸べるウラボスにマカが訊く。
「ふっ……。以前の俺ならばそうしていたかもな。だどさ、泣き虫で未熟者で……それでもただひたすらに前を向いて頑張るお人好しのうちのリーダーに出会って変われたんだと思うよ」
マカは黙ったままウラボスを見つめる。
「ほら、さっさと行こうぜ」
手を差し伸べたまま微笑するウラボスの手をとるマカ。その姿はいつの間にか人狼化を解いていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる