上 下
117 / 207
6章 オーク大戦

STORY111 欲望①

しおりを挟む
 「はぁ……今回はさすがに疲れたわ。全身が痛いし……」

 洞窟を引き返す途中で、ぐったりとした様子のニーネが漏らす。

 「まぁまぁ、命があっただけでもよかったじゃない。……あっ、洞窟を抜けるよ!」

 隣を歩くサナが言い、前方の明かりを指差す。

 「ホントだ! 私たち助かったんだね!!」

 ニーネが明かりに向かって駆け出し、後ろを振り返って大きく手を振る。

 「早く早く! 街に戻ったら暫くはゆっく……」

 ドスッ

 突然だった。ニーネが前のめりに倒れる。

 「ニーネ!!」

 サナが慌てて駆け寄る。

 「行くな! 戻れ!!」

 ウラボスが呼び戻すが遅かった。駆け寄ったサナの頭部に矢が突き刺さる。

 「オークどもか!?」

 ベイズが長剣と大剣を構える。

 「待て。まずは俺とリャッカが行く。防御は任せてもらおう。リャッカは二人を頼む」

 「わかったニャ!」

 ウラボスとリャッカは互いに目配せして同時に駆ける。

 「防御魔術プロテクト

 ウラボスが詠唱発動することでバリアを生じさせた直後、大量の矢が飛んできた。

 「どうだ?」

 ウラボスはリャッカに訊く。が、リャッカは眼を閉じて首を横に振る。

 「ダメだニャ。二人とももう息はないニャ……」

 リャッカは沈んだ声で告げる。

 「そうか。とにかく二人の遺体を奥へ……。これ以上傷つけたくはない」

 リャッカはグランザとベイズに視線を向ける。瞬時に理解した二人はすぐさまニーネとサナの遺体をリアーナがいる所まで連れてくる。それを確認してウラボスとリャッカも一度後退する。

 「どうしてこんな酷いことを!」

 リアーナが怒りに震える。

 「もう、戦いは終わったんじゃねぇのかよ!?」

 ベイズは洞窟の壁を殴り、悔しさをにじませる。

 「相手はオークじゃないニャ…」

 リャッカが沈痛な面持ちで言う。

 「なんだと!? じゃあ、いったい……」

 「ルチヌムの冒険者たちだ」

 「まさか!? 信じられん!!」

 ウラボスの言葉にベイズの表情が硬くなる。

 「だったら、自分の目で確かめるんだな。まずは俺一人で先陣をきって飛び出す。入り口周辺の奴らを一掃したら声をかける。そのあとはリャッカを先頭に順次出てくるんだ」

 ウラボスの提案した作戦に全員が頷く。

 「ウラボス、気をつけてね! 無茶しちゃダメなんだからね!?」

 リアーナが心配そうにウラボスを見つめる。

 「そんな顔をするなよ。俺なら大丈夫だって!」

 ウラボスはリアーナの頭を軽く撫でたあと、洞窟の入り口へと駆け出す。その背中をリアーナは見守っていた。
しおりを挟む

処理中です...