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6章 オーク大戦

STORY115 もうひとつの事件②

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 クロは瞬時にデルガロックを黒鎌の攻撃範囲内におさめると、素早く振りかざす。

 (速い!!)

 黒鎌の刃がデルガロックの胸を深くえぐる。

 「ぐっ…この!」

 デルガロックはウォー・ハンマーを振るって反撃する。

 ブォンッ

 そこにクロの姿は既になく、ウォー・ハンマーによる反撃は空振りに終わる。

 ズブッ

 クロは黒鎌の柄部の槍をデルガロックの腹に突き刺す。

 「ぐばぁっ!」

 デルガロックの口から大量の血が吐き出される。

 「雑魚ざこが。俺にかなうとでも思ったか……」

 クロは黒鎌をデルガロックの腹から引き抜く。その傷口からも大量の血が流れ出て床に血だまりを作る。

 力量の差は歴然だった。クロは両膝をついて血だまりの上に半ば倒れかけているデルガロックを捨て置き、今回の標的ターゲットがいるとおぼしき奥の部屋へと向かう。

 クロの黒鎌は扉を切り裂く。

 「ひぃぃぃぃっ!!!」

 奥の部屋にはゲルザたち親子がいた。一様に恐れおののいている。

 「覚悟してもらおうか」

 クロはゲルザ親子を金色の瞳で睨み、黒鎌を掲げる。

 「ま……待ってくれ! 金を出そう!! いくらで我々の抹殺を吹き受けた!? その金額の5倍……いや、10倍を支払う!! どうだ、悪い条件ではないだろう!?」

 ゲルザの父ガミスが交渉を持ち掛ける。

 「そうよ! それがいいわ! それにあなたを終身雇用してあげるわ! 一生、楽して暮らせるのよ!?」

 続いてゲルザの母ゲミリーが言う。

 「そうさ! 金も女も好きなものを好きなだけ思う存分楽しめるんだぞ! まさに薔薇ばら色の人生が待ってるんだ!! 断る手はないだろ!?」

 ゲルザも好条件を提示する。

 「本当にいいんだな?」

 「あ…ああ! もちろんだ!! 君ほどの者が護衛についてくれれば心強い! もう、我々を脅かす者など何人なんぴともいなくなるというものだ!!」

 クロに訊かれ、ガミスが答える。

 「救いようのないバカどもめ。俺が訊いてるのは、最後に言い残すのがそんな下らんことでいいのかということだ」

 クロから発せられた一言でガミスたちに戦慄が走る。クロは黒鎌に力を込めた。

 ガバッ

 突然、背後からデルガロックが抱きついてきた。

 「なにをしている? 助かったのならおとなしく放せ。それとも、このまま俺を締め殺す気か?」

 クロは落ち着き払った様子で言う。

 「くははは…。……残念だが、俺様にそれだけの……力はない」

 「ならば、どうする?」

 クロが動きを封じられたままで訊く。

 「以前、グランザという…サイクロプスの戦士と戦った…。そいつはな、どれだけ傷つき、追い詰められても……決して諦めずに立ち向かってきた。……で、遂にはこの俺様に…勝っちまいやがった……」

 「何が言いたい?」

 クロが続けて訊く。

 「つまりだ。……俺様もそいつを見ならってみようかと思ってな」

 「ほぉ。どうやって俺に勝つつもりだ?」

 「……こうだ!!」

 デルガロックはクロを拘束したまま窓に向かって駆け出した。

 (こいつ、自分もろとも最上階ここから飛び降りるつもりか!?)

 バリィィィンッ

 クロの読みどおり、デルガロックは躊躇ちゅうちょなく、クロを抱いたまま窓ガラスを突き破って身を投げ出した。

 「よし、よくやった!!」

 「これで助かったわ!!」

 「やった! やった!!」

 ガミス、ゲミリー、ゲルザはデルガロックの身を一切気にかけることもなく、自分たちが助かったことを歓喜した。

 だが、その直後に表情は凍りついた。窓からクロが入ってきたからだ。

 デルガロックが窓から身を投げ出した瞬間、クロはデルガロックの股間部を思い切り蹴り、拘束が一瞬だけ僅かに緩まった隙に抜け出し、窓枠に指をかけたのだった。こうしてデルガロックだけが落下し、死亡した。

 「死ね」

 クロは短く言い捨て、3人の息の根を絶った。
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