冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

９章 魔女リリア討伐戦

STORY144 ＶＳ黒騎士団②

　ビュッ

　リアーナと交戦中のゾワルがグランザの蟀谷こめかみを狙って矢を放った。

　グランザは素早く上体を反らす。矢は単眼の前を勢いよく通り過ぎる。怒りに任せてゾワルに襲いかかろうとするグランザ。しかし、その動作は途中で停止する。

　（ダメだ！　今、リアーナさんがあいつと戦ってるんだ。この状態の僕がいっちゃうとリアーナさんまで危険だ！）

　グランザの中の理性が暴走しようとする体を抑える。

　ガン！

　突然、強烈な衝撃に襲われる。黒騎士にハンマーで撲られたグランザは怒りの矛先を周りの黒騎士に戻す。

　手近にいたハンマーを持った黒騎士を槍で貫き、戦斧で手当たり次第に黒騎士たちを斬り倒す。

　黒騎士ゾワルはリアーナとの戦闘が激化し、グランザにまで攻撃を向ける余裕がなくなっている。

　「怪物め！　頭を叩き割ってやる！！」

　大剣を構えた黒騎士がグランザを睨む。

　「グガァッ！」

　黒騎士は、グランザが振りかざした戦斧を後方へ飛び退くことで回避する。下段に構えていた大剣をグランザの右脇腹から左肩口を斬りつけるように閃かせる。

　しかし、大剣はグランザのプレート・アーマーによって防がれ、充分なダメージを与えることはできなかった。

　大剣の黒騎士は素早く後退し、グランザの反撃に備える。

　「ウガァァァァァァ！」

　グランザが咆哮をあげて槍を振りかざす。黒騎士はグランザの攻撃を受け流すと、大剣を水平に構えて狙いを定める。

　「せぁっ！」

　気合いとともに大剣に切っ先をプレート・アーマーの腰部の隙間に突き刺す。

　鮮血が飛び散る。だが、狂戦士バーサーカー化しているグランザは怯ひるまない。持っていた戦斧を大剣の黒騎士の頭上に振り下ろす。

　「ぎゃあ！」

　短い悲鳴をあげて黒騎士は足元の血だまりに沈む。

　「ガァァッ！」

　グランザは血を滴らせながらも黒騎士たちを屠ほふる。もはや、黒騎士たちは戦意を喪失そうしつし、逃げ惑うばかりである。

　（もう、勝負は着いた。これ以上の戦いは無益だ！　止まれ！！）

　狂戦士バーサーカーグランザの中にある意思が自らを制止しようと懸命になるが、その動きは止まらない。逃げ惑う黒騎士たちを容赦ようしゃなく斬り伏せていく。

　（止まれ！　止まれったら！！　止まるんだぁぁぁ！！！）

　狂戦士バーサーカーグランザの内なる意思がどうにか止めることができたのは、黒騎士団が全滅したあとのことだった……。