冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

９章 魔女リリア討伐戦

STORY143 ＶＳ黒騎士団①

　魔女リリアのいる建物に向かって突き進むリアーナとグランザを迎え撃つべく、黒騎士団が立ちはだかる。

　「ぜやぁぁ！」

　グランザが戦斧で薙ぎ払う。戦斧は黒騎士たちの強固な鎧を切り裂き、致命傷を与えていく。

　「凄い！　ウラボスさんが施してくれた武具強化魔術ハイ・アームズのおかげで戦いがこんなに楽になるなんて！」

　グランザが魔術によって一時的に強化された武器の威力に感激する。が、その直後に飛来した矢がグランザの頬を掠めていく。グランザとリアーナの視線が一ヶ所に集中する。そこには弓を構えたゾワルの姿があった。

　（ほぉ。咄嗟に上体を僅かにずらしたか）

　自分たちの拠点となる建物の屋上でゾワルは口角を上げていた。

　「グランザ、ここはお願い！」

　リアーナは言い置くと黒騎士たちの間をすり抜けていく。ウラボスの武具強化魔術ハイ・アームズが効いている間に倒したいところである。

　「ゾワル様の元に行かせるな！」

　黒騎士たちはリアーナを止めようと動く。

　戦斧を振り上げた黒騎士がリアーナに襲いかかる。

　「させない！」

　グランザが突きだした槍の穂先が戦斧を持った黒騎士の鎧を貫く。

　「リアーナさんの邪魔はさせません！」

　グランザは槍を引き抜き、戦斧と槍で周囲の敵を薙ぎ倒す。

　こうなっては、黒騎士たちもグランザを無視することはできなくなった。

　「まずはあのサイクロプスを殺やるぞ！」

　「氷塊魔術アイス・ブロック！」

　黒騎士の一人が撃った攻撃魔術により発生した氷塊をグランザは戦斧で打ち砕く。

　「死ね！」

　直後、別の黒騎士のハンマーがグランザの背中を打つ。

　「うっ…」

　短く呻いて２、３歩前によろめくグランザに黒騎士たちが一斉に追撃する。

　「くっそ！」

　頭部を守るようにしながら回避行動をとる。

　「雷撃矢魔術ライトニング・アロー！」

　数人の黒騎士が電撃の矢を同時に放つ。

　「ぐぁぁぁっ！」

　悲鳴をあげて片膝をつくグランザ。

　「今だ！　かかれ！！」

　黒騎士たちが再び襲いかかる。

　（くっ……まずは魔術をなんとかしないと！）

　グランザは槍と戦斧を振りかざして周囲の黒騎士を倒し、魔術を使う黒騎士をターゲットにして武器を構える。しかし、グランザの考えをよんだ黒騎士たちは飛行魔術フライングで空中に浮かび上がる。

　グランザは槍の穂先を空中にいる黒騎士に向けて投げる。

　「ぐあっ」

　グランザの槍は黒騎士の左胸に深く突き刺さった。体勢を崩し、地面に落下する黒騎士。

　「うぉぉぉぉぉっ！」

　その落下地点へと戦斧で敵を切り払いつつ進むグランザ。

　「この……化け物が！！」

　黒騎士の一人が手にしていた鎖鎌の分銅グランザの脚に絡からめる。

　「ぐっ…」

　体勢を崩して前のめりに倒れたグランザを黒騎士たちが取り囲む。

　（このままだと……）

　命の危険を感じたグランザは、両腕で頭部をかばいつつ最終手段にでる。自らの闘争本能を極限まで高める。

　「ウガァァァァァァ！！！」

　グランザの咆哮が戦場の空気を激しく振動させ、周囲の黒騎士たちを一瞬怯ひるませた。

　「ヌガァァァッ！！」

　その隙に起き上がったグランザは戦斧で周りの黒騎士を次々に屠ほふる。

　「くそ！　小爆発魔術ボム！！」

　「ヌ……ガァァッ！」

　空中の黒騎士が放った爆発系魔術をくらってグランザは後方によろめく。が、倒れることはなく、そのまま手に持った戦斧を投げつけた。

　「ひっ……」

　恐怖から体が強張り、回避行動を取れなかった黒騎士は戦斧によって引き裂かれて絶命する。

　「アガァァァッ！」

　グランザは素手で黒騎士たちを殴り倒しつつ進み、地面に倒れている黒騎士の死体から槍を引き抜くと、さらに近くに落ちていた戦斧も拾い上げた。

　血塗ちまみれの狂戦士バーサーカーを前にした黒騎士たちは戦慄を覚えていた。