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9章 魔女リリア討伐戦

STORY146 VSゾワル②

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 (小娘、何か様子が変わったか?)

 ゾワルはリアーナの何かが変化したことに気付く。

 「なに!」

 目を離していないはずだった。なのに、対峙していた少女の姿を一瞬見失う。

 「くっ!」

 ガキッ

 間一髪のところで、リアーナが横に振ったレイピアを弓で受け止める。だが、リアーナの攻撃は止まらない。斬撃と刺突を組み合わせた連続攻撃に鎧の損傷ひどくなる。それだけではない。ゾワルの身体をも傷つけていく。

 (なんだ、こいつは!?)

 先刻までとはまるで別人の動きを見せるリアーナ。ゾワルは危機感を募らせる。

 「加速魔術クイック

 ゾワルは補助魔術で自らの動きを機敏にする。しかし、それでもなおリアーナの動きはゾワルよりも速い。

 (ならば!!)

 ゾワルはさらに魔力を練る。

 「減速魔術スピードダウン!」

 「なっ!?」

 ゾワルか続いて魔術を詠唱発動する。リアーナは急に体が重たくなる感覚の襲われ、動きが鈍くなってしまう。

 「どうだ、小娘! 小爆発魔術ボム!!」

 ゾワルの魔術詠唱によって発生した爆発はリアーナを吹き飛ばす。

 ズザザザザザ……!

 「くっ…うぅ……」

 空中で体勢を立て直したリアーナは両足を踏ん張る。屋上にレイピアを突き立てることでどうにか耐えた。が、ダメージは軽くはない。

 (全能力強化超魔術オールラウンドで回復力も強化されてるけど、あまりダメージを受けすぎると魔力が続かない……)

 リアーナが焦りつつも動く。腰のポシェットかろ魔石を一つ取り出して投げる。リアーナの手から離れた魔石はゾワルの近くで砕けた。

 (何をした!?)

 ゾワルは目を見張る。だが、何も起こらない。

 「む!」

 魔石に気をとられた一瞬の隙にリアーナの接近をゆるしてしまった。後方へと逃れるゾワル。だが、遅い。リアーナの斬撃と刺突のコンビネーション攻撃が繰り出される。

 (ぬぅぅ! 今のはただの石だったか!)

 ゾワルはまんまとリアーナの策に乗せられてしまったと唇を噛む。

 「えぇい! 小娘がぁ!!」

 イラついたゾワルは弓を横の一閃する。リアーナは後方に移動してかわす。そして、レイピアの切っ先を敵に向けて構える。

 ゾワルもまたリアーナから離れる。矢筒から取り出した矢をつがえ、弦を引き絞って狙いを定める。

 (なん……だ?…)

 ゾワルは急に眠気を感じた。

 (……しまった!…さっきのはただの石ではなく睡眠魔術スリープの魔石か!!)

 気付いた時にはもう遅すぎた。ゾワルを攻撃範囲内にとらえたリアーナがレイピアを突きだす。

 キン!

 リアーナのレイピアがゾワルの鎧に弾かれてしまう。ウラボスにかけてもらった武具強化魔術ハイ・アームズが解けてしまったのだ。

 (好機!!!)

 この機を逃すわけにはいかない。ゾワルはリアーナの腹に蹴りをいれる。

 「うぐっ!」

 苦しげに呻き声を漏らすリアーナを回し蹴りで蹴り飛ばす。

 「くぅっ……うぅ……」

 激しく屋上に体を打ち付けたリアーナ。それでもどうにか立ち上がる。

 「きゃあ!」

 リアーナはゾワルの矢を寸前のところでレイピアで防ぐ。その衝撃でレイピアを弾き飛ばされてしまう。それだけではない。全能力強化超魔術オールラウンドも効果を失くしてしまった。

 「もらった!」

 ゾワルは一気に間合いを詰める。

 (くっ!……)

 絶体絶命の窮地きゅうちにあっても決して勝利を諦めない。リアーナはポシェットから魔石を取り出すと同時に左手をかざす。

 (この小娘、まだ!?)

 リアーナの勝利への執念しゅうねんに驚嘆するゾワル。しかし、ゾワルとて敗北するつもりなど毛頭ない。勝利への思いならば敗けてはいないはずである。弓でリアーナに殴りかかる。

 「ぬぉぉぉぉっ!!」

 ゾワルが攻撃しようと弓を持つ手に力を込める。その時、リアーナの投げた小爆発魔術ボムの魔石が爆発した。

 「ぬぐぉっ!」

 爆発を直撃で受けたゾワルは吹き飛ばされる。だが、空中で体勢を立て直して着地を成功させた。

 「もらった!」

 ゾワルは屋上を蹴って加速し、リアーナの眼前まで移動する。

 「光線魔術レイ・アロー!」

 左手をかざしていたリアーナは練り上げた最後の魔力で光線に撃つ。放たれた光線はゾワルの鎧の左胸を貫通した。

 「そ…んな……バカ……な……」

 強い衝撃に再び吹き飛ばされたゾワルは屋上に倒れ、そのまま起き上がることもなく絶命した。

 「…勝っ……た……」

 自らの勝利を確認したリアーナもまた屋上に崩れ落ちた。
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