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10章 レビオルムの惨劇

STORY166 急襲!⑨

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 「おい、いつまでそうしているつもりだ?」

 地面に落下したまま動かないバゼルに訊く。

 「おやおや。見抜かれましたか……。どこまでも厄介な方ですね」

 バゼルはゆっくりとした動作で体を起こす。だが、隙はない。ウラボスはリア・ファルの杖を構えて臨戦態勢をとり続ける。

 「そう警戒なさらないで下さい。わたくしはそろそろおいとまさせていただきます」

 立ち上がったバゼルは深々と一礼する。

 「逃がすと思うか?」

 ウラボスに訊かれてバゼルは苦笑する。

 「そう言わずに逃がして下さいませ。代わりといってはなんですが……」

 バゼルは魔力を練り、魔杖の石突で素早く地面を突く。瞬間、バゼルの足元の土が盛り上がった。

 ウラボスは素早く後退して様子を伺う。盛り上がった土は形をみるみる変え、最終的には巨人となる。ジャイアント・ゴーレムだ。

 「さすがにコレを野放しにするわけにはいかないですよね? それでは失礼させていただきます。タレク島でお待ちしておりますので、そこで決着をつけましょう」

 バゼルは再び一礼し、瞬間移動魔術テレポーテーションを無詠唱発動して立ち去った。

 (たく……どっちが厄介なんだか……)

 残されたジャイアント・ゴーレムと対峙しながら、ウラボスはため息をついた。

 「ガォォォォォォン!」

 ジャイアント・ゴーレムは咆哮をあげて、右手でウラボスを叩き潰そうとする。

 ダァァァァァァン!!

 凄まじい音と衝撃波は周辺の空気を激しく振動させた。

 (さてさて……。大爆発魔術エクスプロージョンを連続で撃ち込めばすむんだけど、墓地ここをこれ以上荒らすのもなぁ……)

 後方へと飛び退いて回避したウラボスが思考する。

 「よし!」

 対応を決めたウラボスは魔力を急速に高める。

 「武具強化魔術ハイ・アームズ! 剛力魔術パワー!」

 ウラボスは補助魔術を連続詠唱で発動し、自らの攻撃力を大幅に強化した。

 「うぉぉぉぉぉ!」

 ウラボスは吼え、飛行魔術フライングを無詠唱発動し滑空する。

 「一気に終わらせる!!」

 ジャイアント・ゴーレムの周りを飛び回りながら、その全身に強烈な攻撃を加えていく。その一撃は、魔力によって強固になっているはずのジャイアント・ゴーレムの体を削っていく。

 「まっ、こんなもんだろ!」

 ジャイアント・ゴーレムを秒殺にしたウラボスが地面に降り立つ。

 「もう夜明けか……」

 東の空から日が昇るのを見て呟く。その光に照らされてレビオルムのアンデッドたちも浄化されて次々に消滅していく。

 計り知れない犠牲をだした悪夢のような一夜が明けた。

 この事件は《レビオルムの惨劇》と呼ばれ、後世に語り継がれることになる……。
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