冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

美山 鳥

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10章 レビオルムの惨劇

STORY168 ラフィアスとグラヴィエル

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 「女神ジョアファルア、か……。まさか、神が人間われわれを滅ぼそうとしているというのか?」

 避難民のために謁見の間を開放しているため、暁の渡り鳥たちは国王ラグーナの寝室に通されていた。ウラボスからの報告を受け、ラグーナは表情を凍りつかせる。

 「ジョアファルアの狙いがなんなのか。はっきりしたことはわからない。だが、今回の一件には間違いなくジョアファルアがからんでいる」

 ウラボスの言葉がその場にいた全員の胸に突き刺さる。神を相手に人間がかなうものなのか……。

 「女神ジョアファルアの名前は聞き覚えがある……」

 重々しい空気のなか、魔女リリアが口を開いた。

 「まことか!?」

 ラグーナがある種の期待を込めた眼差しを向ける。何か対策を練ることができれば、と。

 「遥か昔、人間を滅亡させようとした神の名がジョアファルアだったはずです」

 「なんと……」

 神が人間を滅ぼそうとしたという事実にショックを受けるラグーナ。

 「でも、人間が滅んでいないということは対抗できる何かがあったということだニャ?」

 リャッカに訊かれ、リリアは首肯した。

 「当時の世界で、最強の剣士と最強の魔術師が女神ジョアファルアに立ち向かったそうよ。剣士の名はグラヴィエル、魔術師の名は……」

 「ラフィアス様……」

 リリアの言葉をリアーナが続ける。一同が驚いたようにリアーナを見る。

 「よく知ってたわね……。始祖の魔術師ラフィアスの名はほとんど残されていないはず。いったいどこで知ったのよ?」

 「わたしが育った孤児院の創設者がラフィアス様だって伝えられていたの」

 リリアの質問に対して回答するリアーナ。

 「始祖の魔術師ラフィアスが孤児院を? それは初耳だわね」

 リリアが少し興味を示す。

 「しかし、その両名は既にこの世にはおらぬのではないか?」

 ラグーナの指摘にリリアは目を伏せる。

 「たしかにそうです。グラヴィエルもラフィアスも遥か昔の人間……。生きているとは考えられません……」

 場に重苦しい空気が漂い、長い沈黙がおとずれる。

 「へっ! それだけわかれば充分じゃねぇかよ。ラフィアスもグラヴィエルもいねぇだろうが、今の世界には俺や暁の渡り鳥こいつらがいる。その二人が過去にジョアファルアを倒したってことは、俺たちがジョアファルアを倒すことも可能だろ?」

 沈黙を破ったゼルアルの言葉にウラボスをはじめ暁の渡り鳥が同意する。

 「そういうことだ」

 「うん、やろう!」

 「僕たちならできますよ!」

 「賢者リャッカの力を女神に見せつけてやるニャ!」

 暁の渡り鳥とゼルアルにラグーナは希望を見いだす。

 「おぉ! やってくれるのか!? ならば、我が国は協力を惜しまぬと約束しよう!」

 「だったら、まずは最新の飛空艇と腕利きの乗組員を用意してくださいニャ」

 リャッカが早速注文をだす。

 「そうだな。たしかにタレク島に行くのであれば、それくらいは必要であろう。しかし、3ヶ月……いや、2ヶ月待ってほしい。すぐには揃えられぬからな」

 ラグーナが承諾する。

 「飛空艇なんて要るの?」

 リアーナがリャッカに訊く。

 「要るニャ。タレク島は出るのは容易でも入るのは難しいのニャ。その理由はグランザのほうが詳しいはずだよニャ?」

 リャッカがグランザに話のバトンを託す。

 「うん。タレク島は魔族の島ですから、人間や妖精族・獣人族といった他種族の侵入は受け付けないんです」

 「どういうことだ?」

 話を引き継いだグランザにゼルアルが訊く。

 「魔族以外の者の侵入に対して、島を守護するタロスというゴーレムの一種がいます。今まで数えきれない人たちが上陸を試みましたが成功例はありません……」

 グランザの説明に重い空気が再び漂う。

 「上等じゃねぇか! だったら、俺たちがその第一号になってやろうぜ!」

 ゼルアルはどこまでも前向きにとらえているばかりか、どこか愉しげでさえある。

 「ゼルアルの言うとおりだ。俺たちは2ヶ月の間にできる限りの準備をしておくとしよう」

 ウラボスもゼルアルの意見に賛同する。

 「話がまとまったなら、頼みたいことがあるんだが……」

 ゼルアルがラグーナに言う。

 「なにかな?」

 「こいつのことだ」

 ゼルアルは自分の足元にいる水色髪の少年の頭を撫でる。

 「その魔族の少年がどうかしたのか?」

 「こいつの面倒をみてやってほしいんだ」

 「ふむ。それはかまわぬが、この少年は何者なのだ?」

 「こいつは……」

 「僕は嫌だ……」

 説明しようとするゼルアルを水色髪の少年が遮る。

 「僕はゼルアルさんと一緒のほうがいい!!」

 涙に潤んだ瞳でまっすぐにゼルアルを見上げる少年。

 「そうは言ってもな……タレク島に連れていく訳にもいかねぇだろ」

 「危険な所だってかまわないよ! それに、魔族の僕に居場所なんて……」

 少年は目を伏せて消え入りそうな声で呟く。

 「あの……だったら、わたしの育った孤児院はどうかな? あそこならこの子だって安心して預けられるよ。それに、この子が望むのなら、タレク島から帰ってきたときに迎えにいってあげればいいと思うし……」

 「おお! そいつは名案だな! どうだ、坊主?」

 「……帰ってきたら、すぐに迎えに来てくれる?」

 「おぅ、約束するぜ!」

 「……だったら、行くよ……」

 ゼルアルを信用した少年は渋々ながら承諾する。

 「それじゃ、場所のメモと紹介状を書くね。ほんとなら、わたしが直接行くべきなのかもしれないけど、勇者になるまでは戻らないって決めてるから……」

 リアーナが申し訳なさげにする。

 「いや、充分だ。感謝するぜ」

 ゼルアルはそんなリアーナに頭を下げる。

 「ところで、この子の名前は?」

 「さぁ?」

 リアーナに訊かれたゼルアルはあっさりと答える。

 「え? それじゃ、今まで名前も知らないまま連れ回してたの?……」

 「おぅ!」

 堂々とした態度で答えるゼルアルに一同は絶句した。

 「僕の名前はリュアードです……」

 少年が小さな声で名乗る。

 こうして、それぞれが2ヶ月後に向けて行動を開始するのであった。

~10章 レビオルムの惨劇 完~
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