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5章 海賊討伐
35話 海賊討伐依頼
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「海賊?」
アルスヴェイル城の謁見の間。玉座に腰を下ろしていた俺は、跪いている初老の男に聞き返す。
ルット、セラ、メルティナ、ウィナーも玉座を両脇に控えている。
男の名はガザフ。クラッツェルンから南に向かって伸びる街道を進んだ先にある港町ワントナの町長だ。
「はい。ワントナ近海に海賊が出現するようになり、漁船・商船・貨物船などに多大な被害がでております。このままではワントナは……」
「なるほど。それで、騎士団を派遣してほしい、と」
「はい。お願い申し上げます。もはや我々の力だけではどうにもなりません」
「騎士団の派遣については問題ない。しかし、ワントナの自警団では手に負えないのか?」
たしか、ワントナにも自警団が組織されていて、これまでは海賊を撃退していたはずだと思い、質問をぶつけてみる。
「はっ。仰られますように、我がワントナにも自警団は存在します。そのへんの海賊ならばおそるるに足りません。しかし、海賊ワイズラットはこれまでのやつらとは別格なのでございます……」
ガザフは顔面に恐怖を張り付かせて答える。
「海賊ワイズラットか。わかった。騎士団を早急に……」
「なぁ、アルフォスの旦那」
側に控えていたウィナーが俺の言葉を遮る。
「どうかしたのか?」
「その海賊討伐なんだけどよ、オレとリーシャに任せちゃくれねぇか?」
ウィナーとしては、リーシャに実戦経験を積ませたいのだろう。しかし……
「気持ちはわからなくはない。しかし、リーシャに実戦はまだ早いんじゃないか?」
俺が疑問を口にすると、ウィナーは首を横に振る。
「あいつは基礎は叩き込まれているみてぇだぜ。たぶん、前から修行してたんだろうな。あいつにとって実戦を経験することは大きな意味を持つはずなんだ。頼む!」
ウィナーの思い入れが感じられる。これほどの思いをぶつけられては無下に断りにくい。それに、ウィナーが同行すれば安全性は高まるだろう。だが、問題はある。
「本人にその気があるなら、リーシャを連れていくことは許可する。しかし、相手が海賊というのが厄介だな」
「船上での戦闘には不慣れな者ばかりですものね」
俺の考えを察したセラが言葉を続ける。
「それに関しては、僕が同行しようと思います」
今度はルットが進言する。
「海戦の経験でもあるのか?」
「はい。何度かは……」
それは知らなかった。おそらくは俺がいない間のことだろう。
「では、近衛騎士団長ウィナーおよび騎士団を派遣しよう。なお、指揮権はルットに与える」
「「はっ!」」
ルットとウィナーが声を揃える。
「それならば、メルティナも出すべきですわ。リーシャと同じく経験を積むよい機会ではないかと思います」
「……どうだ?」
セラの提案を受けてメルティナの意思を確認する。
「出ます!」
メルティナが力強く答える。
「出陣させる騎士の選抜はルットに任せる」
「御意。それでは、準備があるので失礼いたします」
ルットがウィナーと共に謁見の間を出ていく。
(海戦か……ルットが指揮するとはいえ、厳しい戦いになるかもしれないな……)
全員が無事に帰還することを祈るのみだ。
アルスヴェイル城の謁見の間。玉座に腰を下ろしていた俺は、跪いている初老の男に聞き返す。
ルット、セラ、メルティナ、ウィナーも玉座を両脇に控えている。
男の名はガザフ。クラッツェルンから南に向かって伸びる街道を進んだ先にある港町ワントナの町長だ。
「はい。ワントナ近海に海賊が出現するようになり、漁船・商船・貨物船などに多大な被害がでております。このままではワントナは……」
「なるほど。それで、騎士団を派遣してほしい、と」
「はい。お願い申し上げます。もはや我々の力だけではどうにもなりません」
「騎士団の派遣については問題ない。しかし、ワントナの自警団では手に負えないのか?」
たしか、ワントナにも自警団が組織されていて、これまでは海賊を撃退していたはずだと思い、質問をぶつけてみる。
「はっ。仰られますように、我がワントナにも自警団は存在します。そのへんの海賊ならばおそるるに足りません。しかし、海賊ワイズラットはこれまでのやつらとは別格なのでございます……」
ガザフは顔面に恐怖を張り付かせて答える。
「海賊ワイズラットか。わかった。騎士団を早急に……」
「なぁ、アルフォスの旦那」
側に控えていたウィナーが俺の言葉を遮る。
「どうかしたのか?」
「その海賊討伐なんだけどよ、オレとリーシャに任せちゃくれねぇか?」
ウィナーとしては、リーシャに実戦経験を積ませたいのだろう。しかし……
「気持ちはわからなくはない。しかし、リーシャに実戦はまだ早いんじゃないか?」
俺が疑問を口にすると、ウィナーは首を横に振る。
「あいつは基礎は叩き込まれているみてぇだぜ。たぶん、前から修行してたんだろうな。あいつにとって実戦を経験することは大きな意味を持つはずなんだ。頼む!」
ウィナーの思い入れが感じられる。これほどの思いをぶつけられては無下に断りにくい。それに、ウィナーが同行すれば安全性は高まるだろう。だが、問題はある。
「本人にその気があるなら、リーシャを連れていくことは許可する。しかし、相手が海賊というのが厄介だな」
「船上での戦闘には不慣れな者ばかりですものね」
俺の考えを察したセラが言葉を続ける。
「それに関しては、僕が同行しようと思います」
今度はルットが進言する。
「海戦の経験でもあるのか?」
「はい。何度かは……」
それは知らなかった。おそらくは俺がいない間のことだろう。
「では、近衛騎士団長ウィナーおよび騎士団を派遣しよう。なお、指揮権はルットに与える」
「「はっ!」」
ルットとウィナーが声を揃える。
「それならば、メルティナも出すべきですわ。リーシャと同じく経験を積むよい機会ではないかと思います」
「……どうだ?」
セラの提案を受けてメルティナの意思を確認する。
「出ます!」
メルティナが力強く答える。
「出陣させる騎士の選抜はルットに任せる」
「御意。それでは、準備があるので失礼いたします」
ルットがウィナーと共に謁見の間を出ていく。
(海戦か……ルットが指揮するとはいえ、厳しい戦いになるかもしれないな……)
全員が無事に帰還することを祈るのみだ。
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