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6章 決戦! 正義の鉄槌
48話 潜入
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正義の鉄槌のアジトへの入り口となっている洞窟。俺たちはほぼ同時に到着し、無事に合流した。
「アルフォス様、お怪我はありませんか!?」
俺の姿を目にした瞬間、セラは驚くべき速さで抱きついてきた。
「ああ、大丈夫だ。セラたちも無事か?」
「はい。問題ありませんわ」
セラが俺の顔を見つめながら答える。
「ちょっと、セラ! 敵地なんだからベタベタしないほうがいいんじゃないかしら?」
メルティナはムスッと不機嫌そうな態度をとる。
「あらあら、未熟なあなたたちならともかく、わたくしやアルフォス様は易々と奇襲されたりしませんわよ」
言いつつ、セラは鞭を振るった。
何かが地面に落ちる音がして、ルットとメルティナとリーシャが視線を向ける。そこにはナイフが転がっていた。
「けっ……せっかく毒ナイフで仕留められるところだったのによ!」
洞窟の闇の中から黒いローブを纏った男が顔をしかめながら出てくる。
「あら、おバカさんですわね。わたくしはもちろん、アルフォス様もあなたの存在に気付いておられましたわ。そもそも、そのローブには隠密魔術が付与されているようですが、そんなお粗末な付与では、気配を隠しているとは言えませんわ」
セラが呆れたように言う。
「このクソ女ァ!」
自慢の逸品を貶された男は怒りを顕にする。
「許さねぇ!」
黒ローブの男は新たなナイフを取り出し、セラとの距離を縮めてくる。
「あなた、アサシンですわよね? 不意討ちに失敗したうえ、怒りにまかせて突っ込んでくるなんて、暗殺者として失格ですわよ」
セラは、俺から離れながら黒ローブの男にダメ出しをする。
「るせぇ!!」
それが男の怒りを余計に増幅する。
「はぁ……」
黒ローブの男が振りかざした毒ナイフをしゃがんで躱し、セラはため息をつく。そして、隙だらけの男の顎を蹴り上げる。
続いて、宙に浮いた男の身体に鞭を巻き付けると地面に叩きつけた。
「げふっ!」
短く声をあげる黒ローブの男を鞭から解放すると、今度は左手を向けた。
「覚悟なさい、三流アサシンさん。火属性初級魔術」
容赦なくトドメの一撃が放たれ、男は炎の包まれて死亡した。
「こ、怖ぇ……」
ウィナーが率直な感想を呟く。
「あら、敵の情けをかける必要なんてありませんわ。戦いでは非情にならなければ足元をすくわれますわよ。何か反論はありますの?」
セラはウィナーに視線を向ける。
「いえ、ありません……」
ウィナーはあっさりと引き下がった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「いよぉし! このまま一気に突入して終わりだな!」
ウィナーは愛剣クレイモアを肩に担いでニヤリと笑みをこぼす。
「いや。突入するのは俺とセラだけでいい。あとはこの場で待機だ」
「あ? なんでだよ?」
ウィナーが納得できないといった様子で抗議の眼差しを向けてくる。
「おバカさんですわね。全員で突入したとして、もし、わたくしたちがこの洞窟に誘い込まれていたとしたらどうしますの?」
俺に代わってセラが聞き返す。
「どういうこった?」
だが、ウィナーはセラの質問の意味を理解していないようだ。
「つまりは、この洞窟が出口のない行き止まりだったとする。その場合、全員で突入して奥までたどり着いたタイミングでこの入り口を封鎖されれば俺たちはあっさりと閉じ込められることになる」
「だったら、中から魔術か何かでぶっ飛ばせばいいじゃねぇか」
ウィナーが自信満々に返すのを聞いてセラは深くため息をつく。
「そんなことをして、もしも洞窟が脆くなっていたとしたらどうするというんですの? 一瞬で生き埋めになりますわよ?」
セラに指摘され、ウィナーは絶句する。
「そういうことだ。そこで、ウィナー、ルット、メルティナ、リーシャにはここを守ってもらう」
「だったら、わたしもアルフォスと一緒に行く!」
メルティナが俺たちと共に突入すると言い出す。
「いや、メルティナにもここに残ってもらう。魔族の目は暗闇の中でも視界が利くからな」
メルティナの申し出を断った。
「だったら、オレが一緒に乗り込むぜ!」
今度は魔族であるウィナーが名乗り出る。
「ダメですわ。もしも接近戦を得意とする手練れが現れた場合、リーシャひとりでは対処しきれない可能性もありますわ。そのためにもあなたは残るべきですわ。それに……」
「まだ、何かあるのかよ?」
セラに却下されたウィナーが問う。
「わたくしとアルフォス様、二人きりの時間はだれにも邪魔させませんわ!」
セラが堂々と言い放った一言にメルティナがピクリと反応する。
「と……とにかく、ここを押さえておくことはかなり重要だ。それに、4人いれば何かあれば二手に別れて行動することもできるだろ? そういうわけだから頼んだぞ」
面倒なことになる前に、俺はセラとともに洞窟内へと足を踏み入れていくのだった。
「アルフォス様、お怪我はありませんか!?」
俺の姿を目にした瞬間、セラは驚くべき速さで抱きついてきた。
「ああ、大丈夫だ。セラたちも無事か?」
「はい。問題ありませんわ」
セラが俺の顔を見つめながら答える。
「ちょっと、セラ! 敵地なんだからベタベタしないほうがいいんじゃないかしら?」
メルティナはムスッと不機嫌そうな態度をとる。
「あらあら、未熟なあなたたちならともかく、わたくしやアルフォス様は易々と奇襲されたりしませんわよ」
言いつつ、セラは鞭を振るった。
何かが地面に落ちる音がして、ルットとメルティナとリーシャが視線を向ける。そこにはナイフが転がっていた。
「けっ……せっかく毒ナイフで仕留められるところだったのによ!」
洞窟の闇の中から黒いローブを纏った男が顔をしかめながら出てくる。
「あら、おバカさんですわね。わたくしはもちろん、アルフォス様もあなたの存在に気付いておられましたわ。そもそも、そのローブには隠密魔術が付与されているようですが、そんなお粗末な付与では、気配を隠しているとは言えませんわ」
セラが呆れたように言う。
「このクソ女ァ!」
自慢の逸品を貶された男は怒りを顕にする。
「許さねぇ!」
黒ローブの男は新たなナイフを取り出し、セラとの距離を縮めてくる。
「あなた、アサシンですわよね? 不意討ちに失敗したうえ、怒りにまかせて突っ込んでくるなんて、暗殺者として失格ですわよ」
セラは、俺から離れながら黒ローブの男にダメ出しをする。
「るせぇ!!」
それが男の怒りを余計に増幅する。
「はぁ……」
黒ローブの男が振りかざした毒ナイフをしゃがんで躱し、セラはため息をつく。そして、隙だらけの男の顎を蹴り上げる。
続いて、宙に浮いた男の身体に鞭を巻き付けると地面に叩きつけた。
「げふっ!」
短く声をあげる黒ローブの男を鞭から解放すると、今度は左手を向けた。
「覚悟なさい、三流アサシンさん。火属性初級魔術」
容赦なくトドメの一撃が放たれ、男は炎の包まれて死亡した。
「こ、怖ぇ……」
ウィナーが率直な感想を呟く。
「あら、敵の情けをかける必要なんてありませんわ。戦いでは非情にならなければ足元をすくわれますわよ。何か反論はありますの?」
セラはウィナーに視線を向ける。
「いえ、ありません……」
ウィナーはあっさりと引き下がった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「いよぉし! このまま一気に突入して終わりだな!」
ウィナーは愛剣クレイモアを肩に担いでニヤリと笑みをこぼす。
「いや。突入するのは俺とセラだけでいい。あとはこの場で待機だ」
「あ? なんでだよ?」
ウィナーが納得できないといった様子で抗議の眼差しを向けてくる。
「おバカさんですわね。全員で突入したとして、もし、わたくしたちがこの洞窟に誘い込まれていたとしたらどうしますの?」
俺に代わってセラが聞き返す。
「どういうこった?」
だが、ウィナーはセラの質問の意味を理解していないようだ。
「つまりは、この洞窟が出口のない行き止まりだったとする。その場合、全員で突入して奥までたどり着いたタイミングでこの入り口を封鎖されれば俺たちはあっさりと閉じ込められることになる」
「だったら、中から魔術か何かでぶっ飛ばせばいいじゃねぇか」
ウィナーが自信満々に返すのを聞いてセラは深くため息をつく。
「そんなことをして、もしも洞窟が脆くなっていたとしたらどうするというんですの? 一瞬で生き埋めになりますわよ?」
セラに指摘され、ウィナーは絶句する。
「そういうことだ。そこで、ウィナー、ルット、メルティナ、リーシャにはここを守ってもらう」
「だったら、わたしもアルフォスと一緒に行く!」
メルティナが俺たちと共に突入すると言い出す。
「いや、メルティナにもここに残ってもらう。魔族の目は暗闇の中でも視界が利くからな」
メルティナの申し出を断った。
「だったら、オレが一緒に乗り込むぜ!」
今度は魔族であるウィナーが名乗り出る。
「ダメですわ。もしも接近戦を得意とする手練れが現れた場合、リーシャひとりでは対処しきれない可能性もありますわ。そのためにもあなたは残るべきですわ。それに……」
「まだ、何かあるのかよ?」
セラに却下されたウィナーが問う。
「わたくしとアルフォス様、二人きりの時間はだれにも邪魔させませんわ!」
セラが堂々と言い放った一言にメルティナがピクリと反応する。
「と……とにかく、ここを押さえておくことはかなり重要だ。それに、4人いれば何かあれば二手に別れて行動することもできるだろ? そういうわけだから頼んだぞ」
面倒なことになる前に、俺はセラとともに洞窟内へと足を踏み入れていくのだった。
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