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7章 最後の戦い
84話 決戦へ
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「……ジュラス、いいわよね?」
「このジュラス、我が使命をまっとういたしましょう!」
フィアーゼがジュラスに目配せする。
(なんだ!?)
俺は目の前で起きた光景に目を疑った。ジュラスの半透明の体が膨張して巨大なスライムとなった。女神フィアーゼをはじめとした周囲のあらゆるものをその体内に取り込んでいる。この巨大スライムがジュラスの正体だというのか?
「ウフフフフ……」
巨大スライムと化したジュラスの体内でフィアーゼが笑みを浮かべて左手を挙げた。瞬間、巨大スライムのジュラスが女神フィアーゼの体内へと吸収され、跡形もなく消失する。
「な、なんだ……あの魔力は!?」
女神フィアーゼからほとばしる膨大な魔力に驚嘆の声をあげる。あれは確実にリュカリオンの魔力すらも上回っているぞ!
「ジュラスはね、あたしの分体だったのよ。あたしは眠りについていて動けないから、自我を持った優秀な分体を作り出したってわけ。もちろん、あたしに絶対服従のね。それだけじゃないわ。分体は長く活動すればするほどに、より強大な力を持つようにもした」
フィアーゼが自慢げに種明かしをする。
「なるほど。つまり、その分体を吸収した貴様はとてつもなく強大な力を得たということだな?」
リュカリオンが苦々しく訊く。
「そういうこと! もう、あたしがなにを言いたいかわかるわよね? 満身創痍のあなたたちには勝ち目なんかないってわけなの。もちろん、逃がすつもりも赦すつもりもないわ。あなたたちには死の未来しかないってことね。アハハハハハ!!」
勝ち誇ったようなフィアーゼの高笑いが謁見の間に響く。たしかに、戦況は絶望的なほど不利ではある。だが、まだ打つ手がないわけではない。
「メルティナ!」
女神の動向に細心の注意を払いつつ第三従者の名を呼ぶ。
「任せて!」
俺が言いたいことを理解しているメルティナが魔力を最大限まで高めていく。その様子をフィアーゼは冷笑を浮かべて眺めている。
「今さらなにをするのかしら? 魔族ならともかく、たかだか人間風情が何をしたところで全くの無意味なのがわからないの?」
「たしかにあなたは強い。だけど、絶対に勝てない相手じゃないわ!……治癒最上級魔術!!!」
メルティナが自身の全ての魔力を使い切って究極の回復魔術を発動してくれた。この魔術を扱えるのは、全種族においてもおそらくメルティナだけだろう。まさに、俺たちにとって切り札というべきものだ。
俺とリュカリオン、セラ、ウィナー、ルットが負っていた傷が全て跡形もなく消える。また、体力も完全に回復した。それだけではない。この場にいる、まだ息がある兵士・騎士たちもどうにか動けるていどには回復したようだ。
「ほぉ。これは驚いた! メルティナに回復魔術の才があるのは知っておったが、まさかこれほどとはな……」
リュカリオンが驚嘆の声を漏らす。才能と不断の努力があっての結果なのだろう。
「……うぅ……」
しかし、これほど強力な回復魔術を行使すれば術者にかなりの負担がかかるものだ。膨大な魔力を一気に消費したため、崩れ落ちるように両膝をつく。彼女にこれだけの負担をかけさせてしまったことに心が痛む。
「ご苦労さまでしたわね。あとは、わたくしたちに任せて休んでなさいな」
傍に寄り添うように肩を貸したセラがメルティナを気遣う。
「動ける者たちは速やかにこの場から撤退しろ。それもこの城からできるだけ遠くにだ。ピファ、先導を任せた。リーシャとアシャは護衛を頼む。セラ、ウィナー、ルットは俺とともに女神フィアーゼを討つぞ」
仲間たちに指示を出す。その様子を見ていたリュカリオンの口元に笑みがこぼれたのを見逃さない。
「どうした?」
「……いいや、なんでもない。随分と頼もしく成長してくれたものだと思ってな」
訊いた俺にリュカリオンはクスリと笑って答える。だが、女神フィアーゼは不快感を露わにして殺気立っていた。
「人間ごときが出過ぎた真似をしてくれるじゃない。そんな無駄なことをしたところで、ほんの少しだけ寿命が延びるだけよ!」
「そうか。しかし、余は貴様から焦りを感じるのだがな。本来の貴様ならば、絶対に勝てる自信があれば殺戮を楽しむはず。違うか?」
リュカリオンは涼やかな表情で問いかける。
「……いいわ。それじゃあ、おまえたちを皆殺しにして全てを終わらせてやる!!!」
フィアーゼの燃え立つような憤怒の激情が激しく逆巻く魔力となって吹き荒れる。
「このジュラス、我が使命をまっとういたしましょう!」
フィアーゼがジュラスに目配せする。
(なんだ!?)
俺は目の前で起きた光景に目を疑った。ジュラスの半透明の体が膨張して巨大なスライムとなった。女神フィアーゼをはじめとした周囲のあらゆるものをその体内に取り込んでいる。この巨大スライムがジュラスの正体だというのか?
「ウフフフフ……」
巨大スライムと化したジュラスの体内でフィアーゼが笑みを浮かべて左手を挙げた。瞬間、巨大スライムのジュラスが女神フィアーゼの体内へと吸収され、跡形もなく消失する。
「な、なんだ……あの魔力は!?」
女神フィアーゼからほとばしる膨大な魔力に驚嘆の声をあげる。あれは確実にリュカリオンの魔力すらも上回っているぞ!
「ジュラスはね、あたしの分体だったのよ。あたしは眠りについていて動けないから、自我を持った優秀な分体を作り出したってわけ。もちろん、あたしに絶対服従のね。それだけじゃないわ。分体は長く活動すればするほどに、より強大な力を持つようにもした」
フィアーゼが自慢げに種明かしをする。
「なるほど。つまり、その分体を吸収した貴様はとてつもなく強大な力を得たということだな?」
リュカリオンが苦々しく訊く。
「そういうこと! もう、あたしがなにを言いたいかわかるわよね? 満身創痍のあなたたちには勝ち目なんかないってわけなの。もちろん、逃がすつもりも赦すつもりもないわ。あなたたちには死の未来しかないってことね。アハハハハハ!!」
勝ち誇ったようなフィアーゼの高笑いが謁見の間に響く。たしかに、戦況は絶望的なほど不利ではある。だが、まだ打つ手がないわけではない。
「メルティナ!」
女神の動向に細心の注意を払いつつ第三従者の名を呼ぶ。
「任せて!」
俺が言いたいことを理解しているメルティナが魔力を最大限まで高めていく。その様子をフィアーゼは冷笑を浮かべて眺めている。
「今さらなにをするのかしら? 魔族ならともかく、たかだか人間風情が何をしたところで全くの無意味なのがわからないの?」
「たしかにあなたは強い。だけど、絶対に勝てない相手じゃないわ!……治癒最上級魔術!!!」
メルティナが自身の全ての魔力を使い切って究極の回復魔術を発動してくれた。この魔術を扱えるのは、全種族においてもおそらくメルティナだけだろう。まさに、俺たちにとって切り札というべきものだ。
俺とリュカリオン、セラ、ウィナー、ルットが負っていた傷が全て跡形もなく消える。また、体力も完全に回復した。それだけではない。この場にいる、まだ息がある兵士・騎士たちもどうにか動けるていどには回復したようだ。
「ほぉ。これは驚いた! メルティナに回復魔術の才があるのは知っておったが、まさかこれほどとはな……」
リュカリオンが驚嘆の声を漏らす。才能と不断の努力があっての結果なのだろう。
「……うぅ……」
しかし、これほど強力な回復魔術を行使すれば術者にかなりの負担がかかるものだ。膨大な魔力を一気に消費したため、崩れ落ちるように両膝をつく。彼女にこれだけの負担をかけさせてしまったことに心が痛む。
「ご苦労さまでしたわね。あとは、わたくしたちに任せて休んでなさいな」
傍に寄り添うように肩を貸したセラがメルティナを気遣う。
「動ける者たちは速やかにこの場から撤退しろ。それもこの城からできるだけ遠くにだ。ピファ、先導を任せた。リーシャとアシャは護衛を頼む。セラ、ウィナー、ルットは俺とともに女神フィアーゼを討つぞ」
仲間たちに指示を出す。その様子を見ていたリュカリオンの口元に笑みがこぼれたのを見逃さない。
「どうした?」
「……いいや、なんでもない。随分と頼もしく成長してくれたものだと思ってな」
訊いた俺にリュカリオンはクスリと笑って答える。だが、女神フィアーゼは不快感を露わにして殺気立っていた。
「人間ごときが出過ぎた真似をしてくれるじゃない。そんな無駄なことをしたところで、ほんの少しだけ寿命が延びるだけよ!」
「そうか。しかし、余は貴様から焦りを感じるのだがな。本来の貴様ならば、絶対に勝てる自信があれば殺戮を楽しむはず。違うか?」
リュカリオンは涼やかな表情で問いかける。
「……いいわ。それじゃあ、おまえたちを皆殺しにして全てを終わらせてやる!!!」
フィアーゼの燃え立つような憤怒の激情が激しく逆巻く魔力となって吹き荒れる。
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