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第1章 邪龍との邂逅
1ー13 邪龍の迷宮⑧
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「うぉぉぉぉっ! 闘気戦術・大飛閃!!」
部屋に侵入した直後、立ちはだかるゴブリン、ローリング・ボール、バウンド・ボール、ジャイアント・スネーク、スライムといったモンスターの群れに向かって、ルドアが先制攻撃をくり出す。振り抜かれた片手剣から放出された闘気の斬撃波が多数の敵を巻き込んでいく。
「僕も遠慮なくいかせてもらおうか! バキューム・ブレイド!」
ギゼムが次々に撃ち出した真空の刃がモンスターたちを切り裂く。
「……やっぱ、半端ねぇな……」
ギゼムとルドアの無双ぶりを見てゼイナスがポツリと漏らす。それにはエルフェリオンも同感であった。スラム街でならず者を相手に大暴れするのには慣れているが、これだけの数のモンスターを目の当たりにしては物怖じしてしまう。しかし、二人は数の不利を実力で跳ね除けているではないか。
「おらっ、ボサッとしてんじゃねぇ!!」
足が止まっているエルフェリオンとゼイナスにルドアが怒鳴る。そこでエルフェリオンとゼイナスは我に返った。
「すまない! いくぞ、ゼイナス!!」
「おぅ!!」
エルフェリオンとゼイナスはギゼムとルドアが切り開いた道を通って祭壇へと駆ける。
「邪魔だ!」
立ちふさがるゴブリンをすれ違いざまにロングソードで斬り捨て、続いて現れたジャイアント・スネークの首を返す刃で刎ねる。
「ったく! しつこいんだよ!!」
空中に跳ね上がって襲いかかるスライムの気配を察知したエルフェリオンは、ダガーの切先を上に向けて突き上げる。
ザクッ
核を貫かれたスライムはゲル状の体を維持できずに絶命した。スライムは半透明のゲル状の体に獲物を取り込むことで相手を窒息死させて消化する。しかし、核と呼ばれる球状の部位は非常に脆い。ここに攻撃を受ければあっさりと倒すことができる。
(魔術を使えればもっと安全に倒すことができるんだがな……)
ドロリと溶けたスライムの死体が霧消していくのを視界の端に捉えながら、エルフェリオンは魔術が使えない未熟さを感じていた。だが、現状でそれを考えたところでどうにもならない。足を止めることなく祭壇へと急ぐ。
「そりゃあ!」
ゼイナスは豪快に大戦斧を振りかざしてローリング・ボールやゴブリンを屠る。
「ちっ、きりがねぇ!!」
道を切り開いたあとからすぐに集まってくるモンスターに苛立つゼイナス。
「バーニング・トルネード!」
ゼイナスが苦戦しているのをみて、ギゼムが火炎の竜巻を発生させてモンスターを消し炭と化す。
「ゼイナス君、今のうちに行きたまえ!」
「すまねぇ!」
ゼイナスはギゼムの魔術によってできた道を駆け抜ける。
「ヌガァァァァァッ!」
大型のゴブリンが大剣を振り上げて行く手に立ちふさがる。
「ゼイナス様をなめんじゃねぇ!」
ガキィンッ
ゼイナスは振り下ろされた大剣を大戦斧で弾き、返す刃で大型ゴブリンの胴を斬る。
「ゴガァァァッ!」
鍛え上げられた両腕でしっかりと握られた大戦斧によって深く斬りつけられた大型ゴブリンの腹から血が噴き出す。だが、一撃で即死させるほどのものではなかった。大型ゴブリンは後退りして大剣を構える。
「こっちは急いでんだ。さっさと終わらせてやらぁ!」
大戦斧を中段後方に構えたゼイナスが大型ゴブリンのほうへと大きく踏み込む。
「ガァァァァァァァッ!」
大型ゴブリンが力任せに大剣を真横に振り抜いた。しかし、手応えはない。
「お返しだぁ!!」
しゃがんで躱したゼイナスが大戦斧を右斜め上に滑らせる。
ザンッ
ゼイナスの腕にたしかな手応えが伝わる。
「ゴヴァァァァァァァッ!!」
大型ゴブリンは絶叫をあげて仰向けに倒れて霧消する。
「うっし!」
勝利をおさめたゼイナスは祭壇の階段を駆け上がり、魔法陣の中へと侵入する。隣では、既に到着していたエルフェリオンが眼下で奮戦しているギゼムとルドアに目をやっていた。
「よし! 二人とも無事に魔法陣に入ったみたいだ。あとは僕たちがモンスターを片付ければ!!」
ハルバートでモンスターを薙ぎ倒したギゼムが嬉々として言う。
「やってやるぜ! 闘気戦術・連舞!!」
闘気を武器にまとわせて一時的に片手剣の重量をなくし、さらに斬れ味を強化したルドアが高速度の連続斬撃を放ち、モンスターたちをみるみる倒す。
◎★☆◎
「よぉし! これで全部か!?」
モンスターを一掃したルドアが周囲を見回す。が、敵の姿は見当たらない。
「いや、おかしい!……魔法陣はまだ発動していない」
ルドアの言葉をギゼムが否定する。
「どうなってんだ!? 情報が間違ってたってのかよ!!?」
前人未踏のエリアを最初に攻略し、冒険者として名を上げるという目的が頓挫し、焦燥感を露わにするルドア。それに対してギゼムは幾分か冷静さを保っている。些細なことも見逃すまいと注意深く部屋中に視線を巡らせる。
「くっ……今度はなんだ!?」
空間の一部に歪みが生じた。ギゼムとルドアは各々の武器を油断なく構えて戦闘に備えている。
「トロル!……それもウォリアー級トロルか!?」
歪みから現れたモンスターを見たギゼムに緊張がはしった。鼻と耳が大きく、緑の肌と黒い単眼をもつ巨人型モンスターが出現した。右手にはトゲ付きの棍棒を持っている。
ズシン……ズシン……ズシン……ズシン……
重々しい足音を響かせてウォリアー級トロルがゆっくりとした歩調でギゼムとルドアに近付いてくる。
部屋に侵入した直後、立ちはだかるゴブリン、ローリング・ボール、バウンド・ボール、ジャイアント・スネーク、スライムといったモンスターの群れに向かって、ルドアが先制攻撃をくり出す。振り抜かれた片手剣から放出された闘気の斬撃波が多数の敵を巻き込んでいく。
「僕も遠慮なくいかせてもらおうか! バキューム・ブレイド!」
ギゼムが次々に撃ち出した真空の刃がモンスターたちを切り裂く。
「……やっぱ、半端ねぇな……」
ギゼムとルドアの無双ぶりを見てゼイナスがポツリと漏らす。それにはエルフェリオンも同感であった。スラム街でならず者を相手に大暴れするのには慣れているが、これだけの数のモンスターを目の当たりにしては物怖じしてしまう。しかし、二人は数の不利を実力で跳ね除けているではないか。
「おらっ、ボサッとしてんじゃねぇ!!」
足が止まっているエルフェリオンとゼイナスにルドアが怒鳴る。そこでエルフェリオンとゼイナスは我に返った。
「すまない! いくぞ、ゼイナス!!」
「おぅ!!」
エルフェリオンとゼイナスはギゼムとルドアが切り開いた道を通って祭壇へと駆ける。
「邪魔だ!」
立ちふさがるゴブリンをすれ違いざまにロングソードで斬り捨て、続いて現れたジャイアント・スネークの首を返す刃で刎ねる。
「ったく! しつこいんだよ!!」
空中に跳ね上がって襲いかかるスライムの気配を察知したエルフェリオンは、ダガーの切先を上に向けて突き上げる。
ザクッ
核を貫かれたスライムはゲル状の体を維持できずに絶命した。スライムは半透明のゲル状の体に獲物を取り込むことで相手を窒息死させて消化する。しかし、核と呼ばれる球状の部位は非常に脆い。ここに攻撃を受ければあっさりと倒すことができる。
(魔術を使えればもっと安全に倒すことができるんだがな……)
ドロリと溶けたスライムの死体が霧消していくのを視界の端に捉えながら、エルフェリオンは魔術が使えない未熟さを感じていた。だが、現状でそれを考えたところでどうにもならない。足を止めることなく祭壇へと急ぐ。
「そりゃあ!」
ゼイナスは豪快に大戦斧を振りかざしてローリング・ボールやゴブリンを屠る。
「ちっ、きりがねぇ!!」
道を切り開いたあとからすぐに集まってくるモンスターに苛立つゼイナス。
「バーニング・トルネード!」
ゼイナスが苦戦しているのをみて、ギゼムが火炎の竜巻を発生させてモンスターを消し炭と化す。
「ゼイナス君、今のうちに行きたまえ!」
「すまねぇ!」
ゼイナスはギゼムの魔術によってできた道を駆け抜ける。
「ヌガァァァァァッ!」
大型のゴブリンが大剣を振り上げて行く手に立ちふさがる。
「ゼイナス様をなめんじゃねぇ!」
ガキィンッ
ゼイナスは振り下ろされた大剣を大戦斧で弾き、返す刃で大型ゴブリンの胴を斬る。
「ゴガァァァッ!」
鍛え上げられた両腕でしっかりと握られた大戦斧によって深く斬りつけられた大型ゴブリンの腹から血が噴き出す。だが、一撃で即死させるほどのものではなかった。大型ゴブリンは後退りして大剣を構える。
「こっちは急いでんだ。さっさと終わらせてやらぁ!」
大戦斧を中段後方に構えたゼイナスが大型ゴブリンのほうへと大きく踏み込む。
「ガァァァァァァァッ!」
大型ゴブリンが力任せに大剣を真横に振り抜いた。しかし、手応えはない。
「お返しだぁ!!」
しゃがんで躱したゼイナスが大戦斧を右斜め上に滑らせる。
ザンッ
ゼイナスの腕にたしかな手応えが伝わる。
「ゴヴァァァァァァァッ!!」
大型ゴブリンは絶叫をあげて仰向けに倒れて霧消する。
「うっし!」
勝利をおさめたゼイナスは祭壇の階段を駆け上がり、魔法陣の中へと侵入する。隣では、既に到着していたエルフェリオンが眼下で奮戦しているギゼムとルドアに目をやっていた。
「よし! 二人とも無事に魔法陣に入ったみたいだ。あとは僕たちがモンスターを片付ければ!!」
ハルバートでモンスターを薙ぎ倒したギゼムが嬉々として言う。
「やってやるぜ! 闘気戦術・連舞!!」
闘気を武器にまとわせて一時的に片手剣の重量をなくし、さらに斬れ味を強化したルドアが高速度の連続斬撃を放ち、モンスターたちをみるみる倒す。
◎★☆◎
「よぉし! これで全部か!?」
モンスターを一掃したルドアが周囲を見回す。が、敵の姿は見当たらない。
「いや、おかしい!……魔法陣はまだ発動していない」
ルドアの言葉をギゼムが否定する。
「どうなってんだ!? 情報が間違ってたってのかよ!!?」
前人未踏のエリアを最初に攻略し、冒険者として名を上げるという目的が頓挫し、焦燥感を露わにするルドア。それに対してギゼムは幾分か冷静さを保っている。些細なことも見逃すまいと注意深く部屋中に視線を巡らせる。
「くっ……今度はなんだ!?」
空間の一部に歪みが生じた。ギゼムとルドアは各々の武器を油断なく構えて戦闘に備えている。
「トロル!……それもウォリアー級トロルか!?」
歪みから現れたモンスターを見たギゼムに緊張がはしった。鼻と耳が大きく、緑の肌と黒い単眼をもつ巨人型モンスターが出現した。右手にはトゲ付きの棍棒を持っている。
ズシン……ズシン……ズシン……ズシン……
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