転生先の環境が気に入らないから6回チェンジしたらヤクザが来たでござるの巻

月江堂

文字の大きさ
11 / 53
第二章 知識チート

ナックルウォーク

しおりを挟む
 光がおさまると、俺は木造建築の広い部屋の中央に座っていた。

 太い丸太でしっかりと造られた骨組みに、綺麗に削り出された木材の部屋。木材が豊富に取れる場所なんだろうか。気温も少し蒸し暑いし、もしかすると熱帯地方なのかもしれない。

 少しずつ目が慣れてくるとさっきの異世界と同じように俺を中心に大勢の人が胡坐をかいて座っていることに気付いた。

 丸顔で浅黒い肌にぱっちりとした目は東南アジアの人達を連想させる。服装は貫頭衣の上に鮮やかな模様の織物を羽織るように着ており、やはり南国を連想させる。

 よくよく見てみれば床にも見事な毛織物が敷かれている。いわゆる民芸品的なものだ。

 こう言っちゃ悪いがあまり文明のレベルは高くなさそうに感じる。というか前回に比べると都市、というか集落の規模が大分小さそうだ。

「おお、女神が我らの願いに応えて下さった!」
「勇者を遣わして下さったぞ!!」

 周りの男たちが口々に喜びの声を上げる。

 すると正面にいた立派な髭の中年男性がサッと手を上げみなを静まらせた。年齢的にはまだ50歳前後といったところだろうか。しかしこの中では一番年嵩の男性。見た感じリーダーっぽいけど。

「異界より参った若者よ、そなたが我らを助けるために女神に遣わされた勇者様に間違いないだろうか」

 きたきた。

 待ってたよこの時を。バチッと決めてやるぜ。俺は咳払いをして立ち上がる。

「いかにも。我こそが夜の森と狩りの女神ベアリスの使徒、コバヤシケンジである」

 決まった……

「ベア……え?」
「なに? 夜の森? 昼は?」
「聞いたことあります?」
「勇者ガチャ失敗したんでは……?」

 またかよ。もう驚かねーぞ。

「ああはいはい、いいですよ別に小声で言わなくても。知名度のない女神だって事は知ってますから」

「あ、いえ、もちろん……もちろん知っております。この私が直接ベアルス様に世界をお救い頂く様祈りをささげたのですから!」

 ベアスね。別に気を使わなくていいって。知らねーんだろ?

 それはいいとして……

「どうしました? 勇者様」

 俺は辺りを見回す。

 なんか……雰囲気が変、というか。

 全員床に座布団みたいなものを敷いて座ってるんだけど。

 俺が立って「女神の使徒」を宣言したっていうのに全員座ったままってどうなの? なんか失礼な気がするんだけど……まあ、俺が勝手に立ち上がったんだけどさぁ。こんなもんなのかな?

「そんなに立っていては疲れるでしょう。さ、お座りください」
「アッハイ」

 まあいいや。そういう習慣の国なんだろう。とりあえずはそんな事よりもこの世界を襲っているっていう危機について直接聞こう。ベアリスからはなんかふわふわした話しか聞けなかったし。

「では勇者様、この『ネオリシク』を襲っている危機について説明させていただきます」

 正面にいるリーダーらしき男はそう言って座ったまま深く一礼してから、身振り手振りを交えながら説明を始めた。

 曰く、元々この世界では争いもなく人も、獣も、魔族も平和に暮らしていたという。小さな小競り合いくらいはあるものの、人と魔族が全面的に武力衝突するような悲劇は有史以来一度も起きたことはなかったらしい。

 しかしここ十数年ほどで状況は一変した。

 急に台頭した魔族の長「魔王」を中心として組織的に人間を攻撃するようになったらしい。

「我らは長く続いた平和によりもはや戦うすべを持たぬのです。それは奴ら、魔族も同じはずなのですが、ここ十数年で急激に力をつけ始めたのです。
 奴らは強く、その力の前にもはや我ら人類は風前の灯火です」

 まあ、だいたいベアリスから聞いていた通りだ。ここ十数年で急に、ってのが気になるけど。まさかまた邪神が関わってたりしないだろうな。

 たとえば……そうだ、インカ帝国最後の皇帝の名前がマ〇コ・インカだった気がする。嫌な予感がする。

 しかし、戦う力を持たない、か……確かに辺りを見回してみても鎧や剣で武装している人が一人もいない。一族のリーダーとどこの馬の骨とも知れない異世界人が会見するっていうのに護衛の一人もいないなんていくら何でも不用心だ。そういうノウハウもないのかもしれない。

「分かりました。俺に任せてください。必ずやこの世界を救って見せましょう」

 思えばイーリヤには申し訳ないことをした。

 自分自身よく分からない理由で世界を救うのを放り出してしまって。今頃どうしてるんだろう。もしかしたらイーリヤが「ち〇この勇者」になって魔王と戦ったんだろうか。これは大変な事やと思うよ。

 今度こそ、この世界を救ってみせる。

「ありがとうございます、勇者様。申し遅れましたが私は点在する人族の一つ、バルスス族の首長オールムと申します。こちらは私の妻、アルテット」

 オールムの右にいた、落ち着いた雰囲気の美しい女性がぺこりと頭を下げる。ああ、なんか母親を思い出しちゃうな。

「そして、こちらが私達の末の娘、ファーララです」

 実はちょっと気になってはいた。くりくりとした瞳をキラキラ輝かせて、少し恥ずかしそうにこちらを見ている美少女。

 射干玉ぬばたまのように黒く艶のある美しいボブカットくらいのショートヘア。チューブトップの、ほとんどブラジャーみたいな短いトップスに元気そうなキュロット。胸は小さいが年相応という感じで可愛らしい。

 あまりじろじろ見ていたらオールムの後ろに隠れてしまった。恥ずかしがり屋みたいだ。

「さあ、勇者様も異世界から来てお疲れでしょう。まずは歓迎の宴としましょう」

 そう言ってオールムが手を叩いて合図すると、どこに控えていたのか、女官と思しき人たちが次々と料理を運んできた。

 そう来なくっちゃ。実を言うと前の世界で朝ご飯を食い損ねてたから腹が減ってたんだ。

 料理は小麦かなにかをこねたパンや野菜が中心で、申し訳程度にヤギか何かの串焼肉もある。毛織物が主要産業みたいだからヤギじゃなくてヒツジかな? 他には熱帯魚の素揚げみたいな魚がいっぱいあるから、これが主なタンパク源なんだろうか。

 テーブルはなく、床に所狭しと料理が並べられて、薄く焼いてあるパンをちぎって食器代わりに野菜や肉を巻いて食べるのが彼らのやり方みたいだ。

 食事もすすんで腹八分目、と言ったところでオールムが話しかけてきた。

「勇者様、儂の娘のファーララなのですが、どうも見たところ勇者様と年の頃も同じくらいなのですが、勇者様とお話がしたいようで……」

 ええ? なになに? そういうこと? もう~、仕方ないなあ。まあ俺もぜひ彼女とはお近づきになりたいとは思ってたんだけどね? すんごい可愛いし。いじらしいし。

 彼女は俺の視線に気づくと、頬を染めて視線を逸らした。

 何この思春期特有の「興味はあるけど直接声をかけるのは恥ずかしい」みたいなじれじれ感。まあ俺も思春期なんだけどさ。たまらなく可愛い。

「ファーララ、こっちへ来て一緒に話そうよ」

 俺がそう声をかけると、彼女はまるで大輪のヒマワリが咲いたように元気な笑顔を見せて立ち上がった。

 のちに、中腰になって、俺の隣に移動してきた。

 ナックルウォーク(※)で。

※ナックルウォーク……軽く握った拳の第二関節で体を支えて歩く四足歩行。類人猿が使用することが多い。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

処理中です...