鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂

文字の大きさ
3 / 211

賢者ドラーガ・ノート

しおりを挟む
「荷物持ち……?」
 
 私は自分の耳を疑った。
 
 大陸一と名高いSランク冒険者パーティーの拠点で一番の大物臭を放ちながら上座に鎮座していた男性。悠々と構えているその佇まいはいかにも『只者ではない』って感じだったんだけど……その人からの突然の荷物持ち発言。私が握手したまま固まっていると、プッ、と噴き出す声が聞こえた。
 
「アーッハハハハハ! 冗談! 冗談だって!! 真面目か!! ハハハハ……」
 
 大声で笑いだしたのはドラーガ・ノートさん、と名乗った本人だった。そりゃそうだよね。これだけ大物臭を醸しておいて『荷物持ち』なんて窓際族みたいなクラスの人なんかいるわけがない。っていうか兵種クラス『荷物持ち』って初めて聞いたし。それってクラスじゃなくて担当だよね。
 
「ハ……ハハ……」
 
 新人の洗礼というものだろうか、リアクションしづらいネタを振られて私は苦笑いで返した。初めて会う人なのによく分からない内輪ネタを振られても正直困ってしまう。
 ……のだが、どうやら違ったようで、私の半笑いでも場は全く和んでいなかったのだった。
 
「チッ」
 アルグスさんが舌打ちをする。
 
「穀潰しがッ……」
 アンセさんはそう呟いて椅子の背もたれに寄りかかってつまらなそうな表情で天を仰ぐ。
 
「うふふ、ドラーガさん本当に荷物持ちじゃないですか」
 唯一クオスさんだけは当たりがソフトだけど、それでも言ってることは厳しい。
 
 勇者様はそのまま忌々しそうな表情でドラーガさんの方から視線を逸らしている。空気は冷えっ冷えである。
 
 此は如何なることか
 
 おかしい。何かがおかしい。
 
 話の流れからまず間違いなく、いやこのメッツァトルの本拠地の建物の中にいることからしても、間違いなくこのドラーガ・ノートさんもメッツァトルの主力メンバーであるはずなのに。なのになぜこんな扱いなんだろう。確かに、少し空気読めないかな~? って感じるところはあったけども、でもいくら何でもこの塩対応は酷いんじゃないだろうか。
 
 なんだかこのパーティーでやっていける自信がなくなってしまう。噂のメッツァトルがこんな空気のギスギスしたパーティーだったなんて。
 
 私がおろおろしているとその気持ちを察したのか、アルグスさんがこちらを気遣って話しかけてきた。
 
「ああ、ごめん。普段はこんなじゃないんだよ。ただ……」
 
 勇者様の表情が、暗く、いや黒くなったように感じた。
 
「ただ、こいつはちょっと特殊だから……まあ、キミもその内わかるよ……それより、自己紹介してもらえるかな。キミのことが知りたいんだ」
 
 勇者様にそう言われて私は思わず顔を紅潮させてしまう。そうだった。パーティー加入の面接に来たっていうのに、肝心の自分が自己紹介をしていなかった。なんたる失態か。
 
「す、すいません! 私の名前はマッピです。北の方の、レーウェの村から来ました。兵種クラス回復術士ヒーラーです!」
 
 その瞬間、小屋の中で「おお!」と歓喜の声が上がった。
 
「やった! 待望のヒーラーだ! これで、もっとダンジョンの奥の階層まで行けるぞ!!」
 
 勇者様がガッツポーズをとりながらそう言う……んだけど、『待望の』……? 違和感を感じた私はその質問を率直にぶつけてみることにした。
 
「え? メッツァトルって今までヒーラー無しでやってきたんですか? 確かにヒーラーはそれだけで生計立てられるから冒険者ギルドに所属してる人は少ないですけど、大陸一の実力と名高いメッツァトルにヒーラーがいなかったなんて……」
 
「いや……まあ……」
 
 アルグスさんは妙に歯切れの悪い回答だった。
 
「なんだよ水臭いな! 回復魔法なら俺が使えるだろうが! この『賢者』ドラーガ・ノート様がなぁ!!」
 
 その言葉に私は思わずバッと首を思いっきり振って彼の方を見てしまった。急な動きだったので少しドラーガさんがビクッとする。
 
「けっ、賢者!?」
 
 大きくなってしまった自分の声に気付いて私は慌てて口を手でふさぐようなしぐさをする。でも仕方ないよ。それくらい驚いたんだから。この人が賢者だって!?
 
「お、おう、そうだ。悪い悪い、さっきの自己紹介の時ちゃんと言ってなかったな。俺の兵種クラスは『賢者』だ。よろしくな」
 
 『賢者』……まさか実在したなんて。戦士職の最高峰が勇者であるように、魔法職の最高峰に燦然と君臨する伝説のクラス、賢者。
 
 攻撃魔法を得意とする魔術師やウィッチ、聖属性や回復魔法を得意とするヒーラーやクレリック。そして属性を問わず魔法を使えるけれど、戦闘職というよりはどちらかというと研究者の側面が強いウォーロックやスペルマスター。
 
 そして、全ての魔法を駆使し、最前線で戦い、それだけでなく相反する二つの属性を『同時』に扱うことができるという伝説のクラス。それが賢者。
 
 さっ、さすがは大陸一と名高いSランクパーティーのメッツァトル。伝説ともいえるほどのレアなクラス『勇者』と『賢者』が揃っているなんて……
 
 あれ? でも、だとしたらさっきから場を支配しているこの不穏な空気は一体なんなの?
 
 この人って、パーティーでどういう立ち位置なの?
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。 だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。 無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。 人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。 だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。 自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。 殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の取材中、異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた彼は、惑星そのものと同化し、“星骸の主”として不死の存在へと変貌した。 だが女神から与えられた使命は、この世界の生命を滅ぼし、星を「リセット」すること。凛人はその命令を、拒否する。 彼は、大地の女神により創造された星骸と呼ばれる伝説の六英雄の一人を従者とし、世界を知るため、そして残りの星骸を探すため旅に出る。 しかし一つ選択を誤れば世界が滅びる危うい存在…… 女神の使命を「絶対拒否」する不死者と、裏ボス級の従者たち。 これは、世界を滅ぼさず、統治することを選んだ男の英雄譚である。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

処理中です...