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本当に何もしてないのに
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「いいか、アンセ。クラリスを信じろ。俺の信じたクラリスを信じるんだ」
「だからお前が信じられないからそもそもその前提が成り立たないっての!」
まあ……ぶっちゃけアンセさんの言うとおりだ。
言い合いの終わりそうにないアンセさんとドラーガさんを横目に、アルグスさんがクラリスに話しかける。
「だがガスタルデッロに敵対する気はないんだろう? 何か裏切らないという証拠は出せないのか? 向こうの情報を渡すとか……七聖鍵とギルドはいったい何をするつもりなんだ?」
そう問いかけると、クラリスさんは暫く目を宙に彷徨わせて考え込む。出せる情報、出せない情報を考えているんだろう。
「七聖鍵とギルドが求めてるものは、野風。ギルドマスターのセゴーは、そ、それを使ってオクタストリウムを支配しようと、してるわ。で、でも七聖鍵は……」
「この地の人類を滅ぼして、竜人族の再興を狙っている。違いますか?」
クラリスさんの言葉を遮ったのはそれまで静かにしていたイリスウーフさんだった。すっかり存在を忘れてたけど、そう言えば彼女はクラリスさんの事を「同族」と言っていた。
「ということは、七聖鍵は全員……?」
「い、いひひ……その、その通り。全員ドラゴニュートの生き残り。い、イリスウーフを手に入れたいのは、野風を手に入れるだけじゃない。ど、ドラゴニュート再興の旗頭が必要だから……」
「もう一つ気になることがあります」
さらにイリスウーフさんが尋問を続ける。
「さっき不老不死は『まだ』秘密にするって言ってましたね……『まだ』ってことは、そのうち言えるようになるんですか?」
「くふふふ……」
そうだ。たしかにアンセさんが「どうやって不老不死になるのか」って言ったら「まだ秘密」と言っていた。普通ならそんな誰もが喉から手が出るほど欲しがる技術、ずっと自分達だけのものにしとこうと思いそうなものだけど、そのうち公開するつもりなんだろうか。
「うひひ、そ、それも当たり。細かい技術は言えないけど、りゅ、竜の魔石さえ集まれば私達はいつでも誰でも不老不死にできる。い、石さえ集まれば私達はこの技術を、い、一般公開するつもり……」
「なぜそんなことを? 人間にそんな力を与えたら、ドラゴニュートには不利にならないんですか?」
当然の疑問だと思う。でも私がそう尋ねると、またクラリスさんは不気味な声で笑った。
「いひひひ……そ、想像してみればいい。不老不死を求めるのは愚かな人間の中でも、とびきり愚かな奴ら。そ、そんなやつらに、不老不死を与えたら、な、何が起こるか。わ、私はドラゴニュートの再興になんて興味ないけど、な、何が起こるかは凄く楽しみなの」
少し私は想像力を働かせる。今でも金と権力を持った年寄りを「老害」なんて言ったりするけど、そんな人たちが不老不死を得て、社会の上層に居座ったら何が起こるか。
変化を望まず、社会は停滞し、階層は固定され、持つ者はより持つようになり、持たぬ者は奪われ続ける。今の人間社会ですら起きてること。それが永遠に続くとなれば、人間はやがてゆっくりと滅んでいくだろうことは想像に難くない。
そんな遠大な計画を? 一体何百年かかるか分からないのに。でもよくよく考えればすでに七聖鍵は不老不死になっているんだから、それこそ何百年でも待てるのか。人がゆっくりと滅びるのを。
「う、奪わんと欲すれば、先ずは与えるべし……
じ、人類とドラゴニュートは何百年も前から、あ、争ってきた……それこそ何度もドラゴニュートはこの地の人間を根絶やしにしようとした。で、でも人間はしぶとい。だ、だったら、与え続けて骨抜きにしてやればいいって、でゅ、デュラエスが言ってた」
「それを言っても良かったのか? そんな恐ろしいたくらみがあると知れば、僕は絶対に阻止する。それがドラゴニュートの謀略だ。不老不死に手を出してはいけないと公言するぞ」
アルグスさんが真剣な顔で静かに言った。たしかにその通りだ。彼女にとってこれは「言ってもいい情報」だったんだろうか。それとも勢いに任せてつい喋ってしまった?
「だ、大丈夫。それが分かっていても、愚か者は『自分だけは、自分と家族だけは』って、不老不死を求める。そういう愚かな奴にだけ不老不死を与えるだけで、社会は大混乱に陥り、や、やがて深刻な社会の断絶を生み出す」
アジトに沈黙の時が流れる。
正直言ってそこまでの大きな話になるとは思ってもみなかった。下手をすればギルド全体、そしてこの国をも揺るがす大事件になる。おまけにもし七聖鍵が領主や国王を抱き込んだら、それとも全面対決しなければならない。
いや、正直言ってその可能性はかなり高い。
権力者からすれば不老不死なんて喉から手が出るほど欲しいものだろうから。
「全面対決だ。僕は何があろうともそんなたくらみを放ってはおけない」
そうだ。“勇者”アルグスなら、きっとそう答えるだろうと思っていた。私は震えが止まらない。
「ふぅん……なるほどな。大体仕組みは分かったぜ」
その決定に抵抗するかと思われていたドラーガさんは意外なほどにすんなりとそれを受け入れていた。
「その竜の魔石に、魂か、記憶か、そんなもんがあるのか分からねえが、それを封じ込めて、魔石を破壊されない限り何度でも復活できるってわけか。だからあの全裸マンは俺から魔石をわざわざ奪いに来たんだな。
ひょっとしたら魔石のスペアなんかもあったりしてな」
おっと、全然違うことを話し出したぞ。この人ちゃんとアルグスさんの話聞いてたのかな。不安になる。しかしアルグスさんは彼の事はあまり気にしてないみたいで、後ろからクラリスさんの身体をひょいと持ち上げた。
「じゃあ、もしかしてこの人形の体の中にあの魔石が入ってるのか……? ん……なんか硬いな……これかな?」
「ちょ、ちょっと、乱暴しないで! そんなにぐにぐに押したら……あっ♡」
なんかエロイな。アルグスさんはクラリスさんの言葉を無視して人形の背中の辺りを熱心に揉んでいる。
「ああっ…………」
と、声をあげたきり、クラリスさんは糸の切れた操り人形のようにかくん、と項垂れて動かなくなってしまった。
「あ~あ……」
「やっちゃった……」
アンセさんとクオスさんがアルグスさんを非難の目で見る。
「えっ? いや、ちがっ……かってに……じどうてきに……」
「何するんですかアルグスさん!!」
怒った表情でターニーさんがアルグスさんからクラリスさんを取り上げる。本当に自動人形なのかな、この人結構表情豊かだな。
「ああ~……もう!」
何かごそごそとターニーさんが人形をいじくっているけれど、クラリスさんが復活する兆しはない。
「殺し……たんですか……」
ぼそっと呟くイリスウーフさんの言葉にアルグスさんがビクッとする。
「目的のためなら手段を選ばねえな、アルグス。いくらクラリスが気に食わねえからって強硬手段にでるとは……」
「何やっちゃったんですかアルグスさん」
「わからない……何もしてないのに壊れた……」
この人機械を壊す才能にあふれてるな。
「だからお前が信じられないからそもそもその前提が成り立たないっての!」
まあ……ぶっちゃけアンセさんの言うとおりだ。
言い合いの終わりそうにないアンセさんとドラーガさんを横目に、アルグスさんがクラリスに話しかける。
「だがガスタルデッロに敵対する気はないんだろう? 何か裏切らないという証拠は出せないのか? 向こうの情報を渡すとか……七聖鍵とギルドはいったい何をするつもりなんだ?」
そう問いかけると、クラリスさんは暫く目を宙に彷徨わせて考え込む。出せる情報、出せない情報を考えているんだろう。
「七聖鍵とギルドが求めてるものは、野風。ギルドマスターのセゴーは、そ、それを使ってオクタストリウムを支配しようと、してるわ。で、でも七聖鍵は……」
「この地の人類を滅ぼして、竜人族の再興を狙っている。違いますか?」
クラリスさんの言葉を遮ったのはそれまで静かにしていたイリスウーフさんだった。すっかり存在を忘れてたけど、そう言えば彼女はクラリスさんの事を「同族」と言っていた。
「ということは、七聖鍵は全員……?」
「い、いひひ……その、その通り。全員ドラゴニュートの生き残り。い、イリスウーフを手に入れたいのは、野風を手に入れるだけじゃない。ど、ドラゴニュート再興の旗頭が必要だから……」
「もう一つ気になることがあります」
さらにイリスウーフさんが尋問を続ける。
「さっき不老不死は『まだ』秘密にするって言ってましたね……『まだ』ってことは、そのうち言えるようになるんですか?」
「くふふふ……」
そうだ。たしかにアンセさんが「どうやって不老不死になるのか」って言ったら「まだ秘密」と言っていた。普通ならそんな誰もが喉から手が出るほど欲しがる技術、ずっと自分達だけのものにしとこうと思いそうなものだけど、そのうち公開するつもりなんだろうか。
「うひひ、そ、それも当たり。細かい技術は言えないけど、りゅ、竜の魔石さえ集まれば私達はいつでも誰でも不老不死にできる。い、石さえ集まれば私達はこの技術を、い、一般公開するつもり……」
「なぜそんなことを? 人間にそんな力を与えたら、ドラゴニュートには不利にならないんですか?」
当然の疑問だと思う。でも私がそう尋ねると、またクラリスさんは不気味な声で笑った。
「いひひひ……そ、想像してみればいい。不老不死を求めるのは愚かな人間の中でも、とびきり愚かな奴ら。そ、そんなやつらに、不老不死を与えたら、な、何が起こるか。わ、私はドラゴニュートの再興になんて興味ないけど、な、何が起こるかは凄く楽しみなの」
少し私は想像力を働かせる。今でも金と権力を持った年寄りを「老害」なんて言ったりするけど、そんな人たちが不老不死を得て、社会の上層に居座ったら何が起こるか。
変化を望まず、社会は停滞し、階層は固定され、持つ者はより持つようになり、持たぬ者は奪われ続ける。今の人間社会ですら起きてること。それが永遠に続くとなれば、人間はやがてゆっくりと滅んでいくだろうことは想像に難くない。
そんな遠大な計画を? 一体何百年かかるか分からないのに。でもよくよく考えればすでに七聖鍵は不老不死になっているんだから、それこそ何百年でも待てるのか。人がゆっくりと滅びるのを。
「う、奪わんと欲すれば、先ずは与えるべし……
じ、人類とドラゴニュートは何百年も前から、あ、争ってきた……それこそ何度もドラゴニュートはこの地の人間を根絶やしにしようとした。で、でも人間はしぶとい。だ、だったら、与え続けて骨抜きにしてやればいいって、でゅ、デュラエスが言ってた」
「それを言っても良かったのか? そんな恐ろしいたくらみがあると知れば、僕は絶対に阻止する。それがドラゴニュートの謀略だ。不老不死に手を出してはいけないと公言するぞ」
アルグスさんが真剣な顔で静かに言った。たしかにその通りだ。彼女にとってこれは「言ってもいい情報」だったんだろうか。それとも勢いに任せてつい喋ってしまった?
「だ、大丈夫。それが分かっていても、愚か者は『自分だけは、自分と家族だけは』って、不老不死を求める。そういう愚かな奴にだけ不老不死を与えるだけで、社会は大混乱に陥り、や、やがて深刻な社会の断絶を生み出す」
アジトに沈黙の時が流れる。
正直言ってそこまでの大きな話になるとは思ってもみなかった。下手をすればギルド全体、そしてこの国をも揺るがす大事件になる。おまけにもし七聖鍵が領主や国王を抱き込んだら、それとも全面対決しなければならない。
いや、正直言ってその可能性はかなり高い。
権力者からすれば不老不死なんて喉から手が出るほど欲しいものだろうから。
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そうだ。“勇者”アルグスなら、きっとそう答えるだろうと思っていた。私は震えが止まらない。
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その決定に抵抗するかと思われていたドラーガさんは意外なほどにすんなりとそれを受け入れていた。
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「じゃあ、もしかしてこの人形の体の中にあの魔石が入ってるのか……? ん……なんか硬いな……これかな?」
「ちょ、ちょっと、乱暴しないで! そんなにぐにぐに押したら……あっ♡」
なんかエロイな。アルグスさんはクラリスさんの言葉を無視して人形の背中の辺りを熱心に揉んでいる。
「ああっ…………」
と、声をあげたきり、クラリスさんは糸の切れた操り人形のようにかくん、と項垂れて動かなくなってしまった。
「あ~あ……」
「やっちゃった……」
アンセさんとクオスさんがアルグスさんを非難の目で見る。
「えっ? いや、ちがっ……かってに……じどうてきに……」
「何するんですかアルグスさん!!」
怒った表情でターニーさんがアルグスさんからクラリスさんを取り上げる。本当に自動人形なのかな、この人結構表情豊かだな。
「ああ~……もう!」
何かごそごそとターニーさんが人形をいじくっているけれど、クラリスさんが復活する兆しはない。
「殺し……たんですか……」
ぼそっと呟くイリスウーフさんの言葉にアルグスさんがビクッとする。
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