鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂

文字の大きさ
52 / 211

ドロップアウト

しおりを挟む
「ギャラガーは、ドラーガのせいで……ッ!!」

 アンセさんは、苦々しい表情でドラーガさんの方を睨みながらそう言った。当のドラーガさんは通帳を見つめて恍惚の表情だ。

 まさかそんなことが。

 以前に聞いて、昔のメッツァトルメンバーが一人亡くなっていることは知っていたけど、まさかそれがドラーガさんのせいだなんて。もしや、ダンジョンでドラーガさんを守るために危険な目にあって……?

 最近は戦闘で活躍できなくてもドラーガさんの事を少しは見直していたんだけど、人一人の未来を奪っておいてあんな平気な態度を取っていたなんて、最低だ。

「おいおい、ギャラガーの事は俺のせいじゃねえぜ? あいつが弱かっただけだ。そんなもんまで俺の責任にされたんじゃたまんねえぜ」

 何て言い草。アルグスさんは彼の残された家族の事を思ってお金を寄付までしているっていうのに! こんな最低な人だったなんて! 元々評価低かったけど見損なった!

「アルグスさん……一体このパーティーに何があったんですか……? 以前は聞くのをためらいましたが、私もメッツァトルのメンバーの一人です。全てを……教えてください」

 私が尋ねると、アルグスさんは目を逸らし、しばらく迷っていたが、さっきのテーブルに移動してから、ゆっくりと話し出した。……このパーティーに起きた事件、その全貌を。

「ギャラガーは、このパーティーで元々斥候をしていたんだ。非常に優秀な男だった。斥候職の最高峰、兵種クラスはニンジャだったんだが……」

 今はアーチャーのクオスさんが斥候をしているけれど、元々は別の人がやっていたのか。たしかにアーチャーと斥候じゃクオスさんの負担が大きすぎるなあ、とは思っていたけど。

「ドラーガがパーティーに入って、彼の負担が大きくなっていったんだ……僕達はそのことに気が付かずに……」

 確かにドラーガさん平気でダンジョンの罠を起動させるからなあ。罠からドラーガさんを守って命を落としたんだろうか。

「今となっては判断ミスだが、僕は彼にドラーガの教育係を任せた。ダンジョンでの振舞い方とかも彼なら教えられると思ったから」


――――――――――――――――


『ドラーガ! その辺の物を勝手に触るなと言ってるだろう!』
『細かい事言うんじゃねえよ』
『ドラーガ、野営の準備を……ん? お前保存食はどうした?』
『腐りそうだから全部食っといてやったぜ』
『ドラーガ、お願いだからギルドの人間と揉め事を起こさないでくれ!』
『セゴーの頭がハゲてんのが悪ぃんだよ。あれ絶対笑わせようとしてわざとハゲてんだろ』
『ドラーガ、もういい加減に……』
『何もしてないのに壊れた』


――――――――――――――――


「ギャラガーは、うつ病になって冒険者を引退した」

 最後のはアルグスさんなんじゃ……

 しかしまあ、話を要約すると、ドラーガの教育係に指名されたギャラガーさんはその持ち前の責任感から頑張ったんだけど、まあ、あの調子で一向に改善する余地はなく、それどころか新人のくせにやたらデカい態度で上から目線で文句を言ってくる始末。

 何をどうやってもドラーガさんが成長しないことへのプレッシャーと己の無力感、そして教育係を仰せつかったのに結果を出せないことへの申し訳なさから、ギャラガーさんはうつ病になってしまった、ということらしい。

 ううん……なんなんだろうな、これ。

 こう……なんだろう? がっかりした、というと語弊があるんだけど。

 いや、もちろんギャラガーさんが今もご存命というのは大変いい情報なんですけどね。

「あの、ギャラガーさんの口座、じゃなくて、なんでギャラガーさんの家族の口座、なんですか?」

「ああ、ギャラガーの家はカカア天下で財布の紐は奥さんが握ってるから」

 紛らわしい言い方しやがって。

 なんだろうなあ……

 知っても知らなくてもどうでもいい情報だった。わりと。

 まあでも、メッツァトルは仕事を辞めた後のアフターケアまでしっかりしてるアットホームな職場ですよ、っと。

 はぁ……

 と、ため息をついたところに私達のテーブルに二人の人が来た。

 一人は大柄なスキンヘッドの男性、セゴーさん。

 そしてもう一人は小柄な黒髪の女性、魔導士フービエさん。

 うわ、もう……前回のダンジョン探索の黒幕と言ってもいい人達じゃん。まだなんかあるの? ……まあ、そりゃ山ほどあるか。もはや心当たりが多すぎて何の話をしたいのかもわからない。

「お前らに指名依頼がある」

 そう来ましたか。お仕事の話ですか。セゴーさんとフービエさんは椅子に座った。セゴーさんはさっきの不機嫌な表情のままだけど、フービエさんは随分と焦燥しきった顔だ。

 まあそれも当然と言えば当然か。随分と昔のような気もするけれど、アルグスさんとアンセさんが闇の幻影を蹴散らして、その後経緯は分からないけど、フービエさんがあの部屋から逃げて行ったのはほんの昨日の出来事だ。あの部屋の中でいったい何があったんだろう。

「受けるかどうかはお前ら次第だ。あとは好きにしな」

 そう言ってセゴーさんは席を立って二階への階段を登っていった。あとにはフービエさん一人が残される。ほんの一日と少し前に殺し合いした相手に仕事の依頼? いったいどういう事だろう?

「実は、テューマ達の救出を依頼したいの……ムカフ島ダンジョンからの救出を」

「!?」

 私だけじゃない。事情を知らないイリスウーフさんと、何事にも動じないドラーガさん以外の全員が目を丸くして驚いた。ほんの一日前に殺し合いを演じた相手に、その殺し合いがあったダンジョンからの救出を依頼!? 意味が分からない!!
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。 だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。 無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。 人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。 だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。 自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。 殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の取材中、異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた彼は、惑星そのものと同化し、“星骸の主”として不死の存在へと変貌した。 だが女神から与えられた使命は、この世界の生命を滅ぼし、星を「リセット」すること。凛人はその命令を、拒否する。 彼は、大地の女神により創造された星骸と呼ばれる伝説の六英雄の一人を従者とし、世界を知るため、そして残りの星骸を探すため旅に出る。 しかし一つ選択を誤れば世界が滅びる危うい存在…… 女神の使命を「絶対拒否」する不死者と、裏ボス級の従者たち。 これは、世界を滅ぼさず、統治することを選んだ男の英雄譚である。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...