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トルトゥーガ破れたり
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「喰らえッ!!」
意外にも、カルナ=カルアが挑んできたのは超接近戦。
無手にて挑んでくるその姿からは少なからず魔法を使った戦い方を予想していたアルグスの計算を見事に打ち破っていた。
しかしだからと言って後れを取る勇者ではない。
目突きを躱し、死角から姑息にも放たれてくる足払いをカットし、ショートソードでの反撃を試みる。しかしアルグスの攻撃もやはりいなされ、回転しながらの裏肘打ちが飛んでくる。
(くそ、なかなか間合いが取れない)
アルグスの顔に焦りが浮かぶ。カルナ=カルアはストロークの短い連続攻撃を仕掛けてくる。
トルトゥーガの投擲を恐れて近い間合いでの戦いを仕掛けてくるものは実は意外に多い。つい最近では人形使いクラリスがまさにその戦い方をした。それが「トルトゥーガ封じ」の最も簡単な方法なのだ。
そこまで気づく者は多い。しかし実際にやってみればアルグスはトルトゥーガを投擲できなくとも強い。盾で受け、いなして体勢を崩し、とどめを打つ。それがいつもの接近戦でのアルグスの戦い方ではあるが、しかし手合いの距離(肘を起点とした攻撃が有効な超接近戦)での攻防と、無尽蔵とも思えるスタミナ。さらには……
(攻撃がいなせない……)
ラウンドした盾の回転により攻撃をいなすことができないのだ。カルナ=カルアは真っ直ぐ、垂直に、盾の中心を目掛けて攻撃を当ててくる。
攻撃をいなせず、ただ重い攻撃に耐えるしかできない。体勢を立て直す前に次の攻撃が来る。しかし何かおかしい。
(なぜ崩しに来ない? 確かに盾の中心を攻撃すれば回転でいなされることはないが、お前の攻撃は僕に永遠に届かないぞ!)
攻撃の合間、アルグスは腰を落とし、次の攻撃に備え、そして押し返す。攻撃される場所が分かっていればシールドバッシュで敵の体勢を崩すまで。
「おおぉ!!」
「むぅっ!?」
肩を起点に、肘、拳、そして頭突きでの補強、テューマを一撃で倒したシールドバッシュがカルナ=カルアをはじき返す。魔人は10メートルほども吹き飛ばされながらも、何とか地面に着地する。
「これは僕の間合いだ!!」
トルトゥーガの投擲。しかしカルナ=カルアはそれを躱し、ショートソードを構えるアルグスに突っ込む。剣と拳、尋常であれば相手になどならないが、敵はモンスター達の総大将、魔族の四天王である。右手を貫き手に固めて襲い掛かってくる。
「盾はもうねえぜ! 剣だけで俺の攻撃を捌けるか!!」
「……あるさ」
カルナ=カルアはベアリングの回転する音を後方に聞いた。アルグスがトルトゥーガを引き戻したのだ。
「挟み撃ちだ! これが躱せるか!?」
ゆらり、とアルグスのショートソードが揺れる。軌道の読めない攻撃、後ろに気を取られた状態で躱せる生易しい剣閃ではない。
「喰らえッ!!」
しかしその横薙ぎの剣をカルナ=カルアは両手で挟み込み、白刃取りを敢行。
「終わりだ」アルグスは思った。ほんのコンマ数秒後にはカルナ=カルアの首が跳ぶ。背後から迫りくるトルトゥーガによって。
だがカルナ=カルアはニヤリと笑った。
「俺の考えた『トルトゥーガ破り』がただの超接近戦だと思ったか? 間抜けめ!!」
依然両手は塞がったまま。カルナ=カルアは首を狙うトルトゥーガに対し防御姿勢が取れない。
「コオォォォォッ!!」
体の芯に支柱を通すように。
全身の筋肉を引き絞る様に。
大地を両足で挟み込むように「立つ」。徒手空拳における守りの型の基本にして最終奥義。それによって全身を鋼のように固めて、トルトゥーガを正面から受けるのだ。
アルグスにはそれがただの無謀に見えた。ブロンズゴーレムの身体を両断するトルトゥーガがそんなもので防げるはずがないと。必ずやカルナ=カルアの首が落ちると。
だが次の瞬間、バラバラに分解され、宙を舞ったのはトルトゥーガであった。
「なんだとっ!?」
制御を失い、宙を舞う盾。花火のようにはじけ飛ぶ軸受の中に入っていた金属球。全ての攻撃を受けきって、アルグスを守ってきたトルトゥーガが敗北した瞬間であった。
「俺が何の考えもなく漠然と盾を叩き続けたと思っていたのか? お前のボールベアリングはアキシアル荷重(回転の軸方向にかかる力)にいつまでも耐えられるような強度はねえんだよ!!」
「がっかりだよ」
「へ?」
後ろに、トルトゥーガに気を取られていたカルナ=カルアはフッ、と止めていた剣から力が抜けたのを感じ取った。
だがその時にはもう遅かった。
前をむけばアルグスの姿はそこにはなく。
いや、いたのだ。視界から消えていた彼は身を低くしてカルナ=カルアの膝裏に腕をまわし、片膝タックルで足を持ち上げる。
「むぐっ!?」
と、同時に反対の手でカルナ=カルアの顎に掌底。そのまま彼を地面に押し倒してマウントポジションをあっさりとった。
「君は『僕の弱点を見つけた』と言ったね? ふたを開けてみれば何のことは無い、トルトゥーガの弱点を見つけただけじゃないか」
ゴッ、と鈍い音がする。アルグスの右拳がカルナ=カルアの顔面を襲ったのだ。
「僕が自分の武器の弱点を把握してないとでも思ったのか? 不自然に盾に攻撃を集中させている時点で、盾の破壊を狙っていることには当然気づいていたよ」
「ちょっ、待っ……!!」
鈍い音が連続する。
アルグスはカルナカルアに馬乗りにのしかかったまま両膝で彼の腕を押さえつけ、無抵抗な状態にして両手での拳により殴りつけ続ける。
さらに左手にはトルトゥーガを繋いでいた鎖を巻き付けて拳の重量を上げる。殴り、殴り、殴り続ける。
「四天王と言ってもこの程度か! トルトゥーガを破ったくらいでいい気になるな! 素手の人間に魔人が負けるはずないとでも思ったか!!」
鼻が折れ、白い歯が飛び散り、鮮血は水音までを響かせる。
やがてカルナ=カルアは一切の抵抗、逃げようとする意志すら見せる事ができなくなり、その動きを完全に止めた。
それでもしばらく殴り続けていたアルグスは、拳を止めて、ゆっくりと立ち上がった。
「テューマ達の仇、取らせてもらったよ」
意外にも、カルナ=カルアが挑んできたのは超接近戦。
無手にて挑んでくるその姿からは少なからず魔法を使った戦い方を予想していたアルグスの計算を見事に打ち破っていた。
しかしだからと言って後れを取る勇者ではない。
目突きを躱し、死角から姑息にも放たれてくる足払いをカットし、ショートソードでの反撃を試みる。しかしアルグスの攻撃もやはりいなされ、回転しながらの裏肘打ちが飛んでくる。
(くそ、なかなか間合いが取れない)
アルグスの顔に焦りが浮かぶ。カルナ=カルアはストロークの短い連続攻撃を仕掛けてくる。
トルトゥーガの投擲を恐れて近い間合いでの戦いを仕掛けてくるものは実は意外に多い。つい最近では人形使いクラリスがまさにその戦い方をした。それが「トルトゥーガ封じ」の最も簡単な方法なのだ。
そこまで気づく者は多い。しかし実際にやってみればアルグスはトルトゥーガを投擲できなくとも強い。盾で受け、いなして体勢を崩し、とどめを打つ。それがいつもの接近戦でのアルグスの戦い方ではあるが、しかし手合いの距離(肘を起点とした攻撃が有効な超接近戦)での攻防と、無尽蔵とも思えるスタミナ。さらには……
(攻撃がいなせない……)
ラウンドした盾の回転により攻撃をいなすことができないのだ。カルナ=カルアは真っ直ぐ、垂直に、盾の中心を目掛けて攻撃を当ててくる。
攻撃をいなせず、ただ重い攻撃に耐えるしかできない。体勢を立て直す前に次の攻撃が来る。しかし何かおかしい。
(なぜ崩しに来ない? 確かに盾の中心を攻撃すれば回転でいなされることはないが、お前の攻撃は僕に永遠に届かないぞ!)
攻撃の合間、アルグスは腰を落とし、次の攻撃に備え、そして押し返す。攻撃される場所が分かっていればシールドバッシュで敵の体勢を崩すまで。
「おおぉ!!」
「むぅっ!?」
肩を起点に、肘、拳、そして頭突きでの補強、テューマを一撃で倒したシールドバッシュがカルナ=カルアをはじき返す。魔人は10メートルほども吹き飛ばされながらも、何とか地面に着地する。
「これは僕の間合いだ!!」
トルトゥーガの投擲。しかしカルナ=カルアはそれを躱し、ショートソードを構えるアルグスに突っ込む。剣と拳、尋常であれば相手になどならないが、敵はモンスター達の総大将、魔族の四天王である。右手を貫き手に固めて襲い掛かってくる。
「盾はもうねえぜ! 剣だけで俺の攻撃を捌けるか!!」
「……あるさ」
カルナ=カルアはベアリングの回転する音を後方に聞いた。アルグスがトルトゥーガを引き戻したのだ。
「挟み撃ちだ! これが躱せるか!?」
ゆらり、とアルグスのショートソードが揺れる。軌道の読めない攻撃、後ろに気を取られた状態で躱せる生易しい剣閃ではない。
「喰らえッ!!」
しかしその横薙ぎの剣をカルナ=カルアは両手で挟み込み、白刃取りを敢行。
「終わりだ」アルグスは思った。ほんのコンマ数秒後にはカルナ=カルアの首が跳ぶ。背後から迫りくるトルトゥーガによって。
だがカルナ=カルアはニヤリと笑った。
「俺の考えた『トルトゥーガ破り』がただの超接近戦だと思ったか? 間抜けめ!!」
依然両手は塞がったまま。カルナ=カルアは首を狙うトルトゥーガに対し防御姿勢が取れない。
「コオォォォォッ!!」
体の芯に支柱を通すように。
全身の筋肉を引き絞る様に。
大地を両足で挟み込むように「立つ」。徒手空拳における守りの型の基本にして最終奥義。それによって全身を鋼のように固めて、トルトゥーガを正面から受けるのだ。
アルグスにはそれがただの無謀に見えた。ブロンズゴーレムの身体を両断するトルトゥーガがそんなもので防げるはずがないと。必ずやカルナ=カルアの首が落ちると。
だが次の瞬間、バラバラに分解され、宙を舞ったのはトルトゥーガであった。
「なんだとっ!?」
制御を失い、宙を舞う盾。花火のようにはじけ飛ぶ軸受の中に入っていた金属球。全ての攻撃を受けきって、アルグスを守ってきたトルトゥーガが敗北した瞬間であった。
「俺が何の考えもなく漠然と盾を叩き続けたと思っていたのか? お前のボールベアリングはアキシアル荷重(回転の軸方向にかかる力)にいつまでも耐えられるような強度はねえんだよ!!」
「がっかりだよ」
「へ?」
後ろに、トルトゥーガに気を取られていたカルナ=カルアはフッ、と止めていた剣から力が抜けたのを感じ取った。
だがその時にはもう遅かった。
前をむけばアルグスの姿はそこにはなく。
いや、いたのだ。視界から消えていた彼は身を低くしてカルナ=カルアの膝裏に腕をまわし、片膝タックルで足を持ち上げる。
「むぐっ!?」
と、同時に反対の手でカルナ=カルアの顎に掌底。そのまま彼を地面に押し倒してマウントポジションをあっさりとった。
「君は『僕の弱点を見つけた』と言ったね? ふたを開けてみれば何のことは無い、トルトゥーガの弱点を見つけただけじゃないか」
ゴッ、と鈍い音がする。アルグスの右拳がカルナ=カルアの顔面を襲ったのだ。
「僕が自分の武器の弱点を把握してないとでも思ったのか? 不自然に盾に攻撃を集中させている時点で、盾の破壊を狙っていることには当然気づいていたよ」
「ちょっ、待っ……!!」
鈍い音が連続する。
アルグスはカルナカルアに馬乗りにのしかかったまま両膝で彼の腕を押さえつけ、無抵抗な状態にして両手での拳により殴りつけ続ける。
さらに左手にはトルトゥーガを繋いでいた鎖を巻き付けて拳の重量を上げる。殴り、殴り、殴り続ける。
「四天王と言ってもこの程度か! トルトゥーガを破ったくらいでいい気になるな! 素手の人間に魔人が負けるはずないとでも思ったか!!」
鼻が折れ、白い歯が飛び散り、鮮血は水音までを響かせる。
やがてカルナ=カルアは一切の抵抗、逃げようとする意志すら見せる事ができなくなり、その動きを完全に止めた。
それでもしばらく殴り続けていたアルグスは、拳を止めて、ゆっくりと立ち上がった。
「テューマ達の仇、取らせてもらったよ」
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追記:2025/09/20
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