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第1章 聖剣アヌスカリバー
聖剣はいずこ
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やあみんな、俺の名前はコバヤシ・ケンジ。どこにでもいる高校生さ。
少し人と違うところがあるとすれば、ついさっき赤信号を無視して道路を横断しようとしたらトラックにはねられてそのまま死んで、女神様の力で異世界に転生したところくらいかな。
え? 今時転生トラックとかなろうでも流行んねーよって? あ? やんのかコラ。お前も今すぐ異世界転生させてやってもいいんだぞ。
ともかく、そんなこんなで女神様の依頼で選ばれし勇者として滅亡の危機にある異世界を救いに来たってわけさ。
そんなわけで今俺はいかにもな感じの中世ヨーロッパ風の石造りの城に来ている。え? 石造りの城なんて中世どころか今でも現存してるだろうがって? 本当にうるせー奴だなそんなに転生してーのか。
「あの、勇者様? いったい誰とお話をしているのか……」
おっと、どうやら心の声が漏れていたようだ。件の城の中で俺は今、人だかりに囲まれている。どうやらこいつらが女神に嘆願して俺を召喚したみたいだ。今話しかけた中年の男性が服装からしてこの中のリーダー、まあ国王ってところだろうか。
「ああ、すいません。で、俺は何をすればいいんですか? 女神さまからは『助けろ』としか言われてないんで……」
「おお、やはり女神さまが応えて下さったのだ……」
「では、本物の勇者……」
「これで我が国の未来も明るいぞ」
ざわざわと周りが騒ぎ出す。人気者はつらいね。いっちょぼんくら揃いの原住民を助けてやるとしますか。
「我が国は今、魔王軍からの攻撃を受けて滅亡の危機に瀕しています。勇者様には強大な力を持ち、我らでは到底かなわない魔王を討伐して頂きたいのです」
なるほど、月並みな要望だな。とはいうものの、実際俺に魔王に匹敵する力なんかあるんだろうか? 女神は太鼓判押してたけど、俺普通の高校生だぞ。
「魔王の力は強大です。しかし四百年前に女神様より賜った伝説の聖剣があります。それを用いれば、きっと魔王とも対等に渡り合えるでしょう」
ほほう、そんな伝説のアイテムが。っていうかそんなすげーもんがあるならお前らがそれ使って戦えばいいんじゃねーの? 他力本願過ぎない?
「いえ、聖剣は選ばれし勇者にしか抜くことができず、我々の力ではとても……まずは勇者様にその聖剣を抜いていただきたいのです」
おっ、なんかアーサー王伝説の聖剣エクスカリバーみたいだな。そう言えば来る前に女神もなんかそんなこと言ってたわ。先行して送ってある、なんかエクスカリバーみたいな名前の聖剣があるからそれを使えって。
まあ、女神も知ってて俺をここに派遣したんだからまさか抜けないって事はないだろうとは思うけども、これでもし全然聖剣が抜けなかったら赤っ恥もいいところだな。なんか不安になってきた。
『大丈夫ですよ、勇者ケンジよ』
「うおびっくりしたぁ!!」
「うわっ、びっくりしたッ!!」
女神のやつ、急に脳内に話しかけてきやがった。そんなことできるって知らなかったからめちゃくちゃびっくりした。しかも俺のリアクションに連鎖して周りの人間も驚いてる。
『何かあったんですか、ケンジ!?』
「おめーの声にびっくりしたんだよ、いきなり脳内に話しかけてくんなよ! ああ、すいません、なんか今ちょっと女神のやつが急に脳内に話しかけてきたんで……」
「おお、女神さまと会話を……」
「神降ろしというやつか」
「さすがは勇者様だ」
間の悪い女神の事は置いておいて、こいつら何やってもいいように受け止めてくれるな。正直チョロすぎるだろう。まあ、それだけ進退窮まって勇者の存在を渇望していたって事なんだろうけどさ。こりゃ俺も一肌脱いでやらないとな。女神も大丈夫って言ってるし。
「では、勇者様、ついて来て頂けますか? 聖剣の間にご案内いたします」
ほほう、なるほど、どこかの部屋か、宝物庫にでも安置されているっていう事か。もしくは地下のダンジョンとか。その最深部で岩に聖剣が突き刺さっているとか、そんなところだろう。俺は国王(多分)の先導に従って後をついていった。
それにしても来て早々に勇者の選別イベントか。なんかここでいきなりずっこけたら怖いな。もうワンクッション挟んでほしいというか、そうだ、ヒロインとかいないのかな? まだ視界におっさんしか入ってきてないんだけどさあ。気の利かない奴らだな。
しかし国王とその一団は別に地下に降りていくでもなく、かび臭い宝物庫に案内するでもなく、謁見の間と思しき最初の部屋から数十メートル廊下を歩いた部屋に案内しただけだった。
「さ、この部屋へどうぞ、勇者様」
んん? なんなんだこの部屋? 見たところ、普通の客室みたいな……こんな普通の部屋に聖剣が安置されているのか? それとも聖剣の事は一旦置いておいて、ここが俺の今日泊まる部屋ってことか? ここでヒロインが夜中に現れて、英気を養う的な? いやまいったな、俺まだ高校生なんだけどな。お決まりのパターンだと奴隷とかメイドの女をあてがわれるけど、それを拒否することでチョロインが「ポッ」とかなる展開なんだろうけど……
ってそんなはずないか。さっき確かに「聖剣の間に案内する」って言ってたもんな。
そして俺の目の前に現れたのは豪奢な身なりに身を包んだおっさんだった。奴隷でもなければメイドでもない。そもそも女ですらない。おっさんだ。
「来たか……勇者よ」
なんなんこの偉そうなおっさん?
俺が困惑していると、仁王立ちで待っていたおっさんはくるりと後ろを向いて土下座。こちらに尻を見せた。
……というか、なんだこれ。
ケツから……剣の柄のような物が飛び出している……
いや、普通に考えて逆だ。このおっさんのケツに剣が突き刺さっているんだ。普通ってなんだよ普通はケツに剣なんか刺さんねぇよ。まさか、聖剣って……いやな予感しかしない。
「さあ! 勇者よ!!」
さあじゃねえよ。何なんだよこのおっさん。おい、誰かこの変態をつまみ出せ。
「勇者様」
戸惑いを隠せない俺の態度に見かねてか、ようやく国王が口を開いた。おせーよ。
「彼のアヌスに突き刺さった聖剣を、勇者様のお力でヌいて下さい!!」
どうしてこうなった。
少し人と違うところがあるとすれば、ついさっき赤信号を無視して道路を横断しようとしたらトラックにはねられてそのまま死んで、女神様の力で異世界に転生したところくらいかな。
え? 今時転生トラックとかなろうでも流行んねーよって? あ? やんのかコラ。お前も今すぐ異世界転生させてやってもいいんだぞ。
ともかく、そんなこんなで女神様の依頼で選ばれし勇者として滅亡の危機にある異世界を救いに来たってわけさ。
そんなわけで今俺はいかにもな感じの中世ヨーロッパ風の石造りの城に来ている。え? 石造りの城なんて中世どころか今でも現存してるだろうがって? 本当にうるせー奴だなそんなに転生してーのか。
「あの、勇者様? いったい誰とお話をしているのか……」
おっと、どうやら心の声が漏れていたようだ。件の城の中で俺は今、人だかりに囲まれている。どうやらこいつらが女神に嘆願して俺を召喚したみたいだ。今話しかけた中年の男性が服装からしてこの中のリーダー、まあ国王ってところだろうか。
「ああ、すいません。で、俺は何をすればいいんですか? 女神さまからは『助けろ』としか言われてないんで……」
「おお、やはり女神さまが応えて下さったのだ……」
「では、本物の勇者……」
「これで我が国の未来も明るいぞ」
ざわざわと周りが騒ぎ出す。人気者はつらいね。いっちょぼんくら揃いの原住民を助けてやるとしますか。
「我が国は今、魔王軍からの攻撃を受けて滅亡の危機に瀕しています。勇者様には強大な力を持ち、我らでは到底かなわない魔王を討伐して頂きたいのです」
なるほど、月並みな要望だな。とはいうものの、実際俺に魔王に匹敵する力なんかあるんだろうか? 女神は太鼓判押してたけど、俺普通の高校生だぞ。
「魔王の力は強大です。しかし四百年前に女神様より賜った伝説の聖剣があります。それを用いれば、きっと魔王とも対等に渡り合えるでしょう」
ほほう、そんな伝説のアイテムが。っていうかそんなすげーもんがあるならお前らがそれ使って戦えばいいんじゃねーの? 他力本願過ぎない?
「いえ、聖剣は選ばれし勇者にしか抜くことができず、我々の力ではとても……まずは勇者様にその聖剣を抜いていただきたいのです」
おっ、なんかアーサー王伝説の聖剣エクスカリバーみたいだな。そう言えば来る前に女神もなんかそんなこと言ってたわ。先行して送ってある、なんかエクスカリバーみたいな名前の聖剣があるからそれを使えって。
まあ、女神も知ってて俺をここに派遣したんだからまさか抜けないって事はないだろうとは思うけども、これでもし全然聖剣が抜けなかったら赤っ恥もいいところだな。なんか不安になってきた。
『大丈夫ですよ、勇者ケンジよ』
「うおびっくりしたぁ!!」
「うわっ、びっくりしたッ!!」
女神のやつ、急に脳内に話しかけてきやがった。そんなことできるって知らなかったからめちゃくちゃびっくりした。しかも俺のリアクションに連鎖して周りの人間も驚いてる。
『何かあったんですか、ケンジ!?』
「おめーの声にびっくりしたんだよ、いきなり脳内に話しかけてくんなよ! ああ、すいません、なんか今ちょっと女神のやつが急に脳内に話しかけてきたんで……」
「おお、女神さまと会話を……」
「神降ろしというやつか」
「さすがは勇者様だ」
間の悪い女神の事は置いておいて、こいつら何やってもいいように受け止めてくれるな。正直チョロすぎるだろう。まあ、それだけ進退窮まって勇者の存在を渇望していたって事なんだろうけどさ。こりゃ俺も一肌脱いでやらないとな。女神も大丈夫って言ってるし。
「では、勇者様、ついて来て頂けますか? 聖剣の間にご案内いたします」
ほほう、なるほど、どこかの部屋か、宝物庫にでも安置されているっていう事か。もしくは地下のダンジョンとか。その最深部で岩に聖剣が突き刺さっているとか、そんなところだろう。俺は国王(多分)の先導に従って後をついていった。
それにしても来て早々に勇者の選別イベントか。なんかここでいきなりずっこけたら怖いな。もうワンクッション挟んでほしいというか、そうだ、ヒロインとかいないのかな? まだ視界におっさんしか入ってきてないんだけどさあ。気の利かない奴らだな。
しかし国王とその一団は別に地下に降りていくでもなく、かび臭い宝物庫に案内するでもなく、謁見の間と思しき最初の部屋から数十メートル廊下を歩いた部屋に案内しただけだった。
「さ、この部屋へどうぞ、勇者様」
んん? なんなんだこの部屋? 見たところ、普通の客室みたいな……こんな普通の部屋に聖剣が安置されているのか? それとも聖剣の事は一旦置いておいて、ここが俺の今日泊まる部屋ってことか? ここでヒロインが夜中に現れて、英気を養う的な? いやまいったな、俺まだ高校生なんだけどな。お決まりのパターンだと奴隷とかメイドの女をあてがわれるけど、それを拒否することでチョロインが「ポッ」とかなる展開なんだろうけど……
ってそんなはずないか。さっき確かに「聖剣の間に案内する」って言ってたもんな。
そして俺の目の前に現れたのは豪奢な身なりに身を包んだおっさんだった。奴隷でもなければメイドでもない。そもそも女ですらない。おっさんだ。
「来たか……勇者よ」
なんなんこの偉そうなおっさん?
俺が困惑していると、仁王立ちで待っていたおっさんはくるりと後ろを向いて土下座。こちらに尻を見せた。
……というか、なんだこれ。
ケツから……剣の柄のような物が飛び出している……
いや、普通に考えて逆だ。このおっさんのケツに剣が突き刺さっているんだ。普通ってなんだよ普通はケツに剣なんか刺さんねぇよ。まさか、聖剣って……いやな予感しかしない。
「さあ! 勇者よ!!」
さあじゃねえよ。何なんだよこのおっさん。おい、誰かこの変態をつまみ出せ。
「勇者様」
戸惑いを隠せない俺の態度に見かねてか、ようやく国王が口を開いた。おせーよ。
「彼のアヌスに突き刺さった聖剣を、勇者様のお力でヌいて下さい!!」
どうしてこうなった。
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