武装聖剣アヌスカリバー

月江堂

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最終章 手を取り合って

アポ

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さて、いよいよ魔族の国グラントーレの首都ヴァン・シルトレに到着した。
 
 あまりにもあっさりしすぎだろ、と思うかもしれないけど、人間の国からは『謎の国』として情報が一切なく、魔王城の場所も不明だったけど、いったんグラントーレに入ってみれば別に情報収集する必要も斥候で探らせる必要もなく、首都の位置はみんな知っていたので特に苦労はなかった。
 
「でけえなあ。あの岩山みたいなのが魔王城なのか?」
 
 目の前に広がるのは魔族が暮らす城下町。その遠く無効に巨大な岩山が見え、それをくりぬくように城郭が構築されているらしい。イルウ達がたむろしてたダンジョンもそうだったけど、魔族がこういう自然の環境を大胆に生かす住居が好きなのかね。
 
「それにしても城壁も何も無いんじゃのう。不用心というか……」
 
「魔族は飛行能力を持ってる種族も多いし、あんまり城壁の意味がないのよ」
 
 アスタロウの当然の疑問にアンススが答える。まあ確かに、サッと使える航空戦力があるならいくら城壁を築いても意味はないなあ。
 
 それに、魔族はパーソナルスペースが広いのか城下の町の密度が低すぎてとても全部は城壁で覆えないんだろう。人口密度は低いのに妙に乱雑に感じるのは人間の町に比べて規則性のない建物の並び方のせいか。
 
「まあ、とりあえずは魔王城を目指すか。この距離だと歩いて半日くらいはかかりそうだし、途中いい宿があったらそこも抑えとこう」
 
「勇者よ、なんか……」
 
 なんだアスタロウ? 何か不穏な空気でもつかんだのか? とりあえず日が暮れたら嫌だし歩きながら話を聞くか。
 
「普通すぎんか?」
 
 なにが。
 
「一応、魔王討伐の使命を帯びて攻め込んできた勇者一行のはずなんじゃが、わしら」
 
 んなこと言われてもなあ。逆に魔王城の城下町が普通過ぎてそういうテンションになれん。人間の町に比べるとちょっと小汚ねえけど、普通すぎね? でっかい獣人とか、角の生えた人間が闊歩してるけど、それ以外は暢気なもんだ。
 
 今も普通にすれ違う魔族に軽く会釈して通り過ぎる。なんか、こう……普通だ。こちらの姿を見るなり襲い掛かってくるなり、会話しようと接触した瞬間変なエフェクトがかかって戦闘画面に入ったりするなら物陰に隠れたりしながら進むんだけどな。
 
 それに、アスタロウはいまいちまだ去就を決めかねてるのかもしれないけど、俺ははっきり言って魔王を殺してやろうだとか、魔族を根絶やしにしてやろうなんてつもりもないしな。話し合いをしたいだけだ。
 
「おっと、すいません」
「あっ、悪い」
 
 話しながら歩いてたら人、いや魔族とぶつかってしまった。
 
「ん……あれ?」
 
 なんだ? この魔族、どこかで見たことがあるような……浅黒い肌に長身のイケメンで、頭には一対の立派な角が生えている若い男の魔族。
 
「ケンジ……」
 
 小声でアスタロウが俺に耳打ちしてくる。
 
「あの男……カルナ=カルアじゃ」
 
 カルナ=カルア……
 
「いや、なんでもない。すまんな」(まさか勇者がこんなところをうろついてるわけがないか)
 
「いえ、こちらこそ」(カルナ=カルアって誰だっけ?)
 
「とにかく、お前は気にしすぎなんだよ。もっと自然体にふるまってないとお上りさんだと思われるぞ」
 
「お上りさんくらいなら別に思われてもいいがのう、一応敵地じゃと意識せんと危ないぞ」
 
 そんな話をしながら、途中腹が減ったので屋台で串焼きなどを買いつつ城へと進む。もう首都まで普通にアルトーレの通貨が使えるようになってんのね。
 
 そういやあ忘れてたけど猫獣人の村で出会った魔族の兵士は俺たちのこと報告しなかったのかな。まさかとは思うけどあの説明で納得したんだろうか。
 
 城下町には城壁なんかなかったけど、一応城には堀と石垣が組んで守られている。さすがに不審な人物がこそっと入り込んだりしたらまずいだろうからな。ちゃんと門を通らないと入れないんだろう。
 
「ケンジくん、ここまで来たはいいけどどうやって入り込むつもりなの?」
 
「いや、まあ……戦いにきたつもりはないし、正面から堂々と行こうと思うんだけど」
 
「出たとこ勝負じゃのう」
 
 確かにそうだとは思うけども、せっかくここまでグラントーレ内では騒ぎを起こさずに来たのにここにきてこっそり侵入なんかしたら拗れるのは目に見えてる。とりあえずは正直に行ってみて向こうの出方を伺うのも手じゃないかとは思うんだよな。
 
 正直に言えば初日にカルアミルクとかいうやつとイルウが来てからは魔王軍も積極的に俺の命を狙ってきたりはしてなかったしな。
 
 とりあえずは門の守衛に話をしてみよう。日も暮れちゃうし。
 
「あの~……すいませぇん」
 
「いつものでかい態度はどこいったんじゃ……」
 
 しょうがないだろうこういうの慣れてないんだから。とはいえ少しは威厳を見せた方がいいんだろうか? 堀の跳ね橋の横にある守衛室にいたのはなんかダルそうな表情の魔族のお姉さんだった。
 
 今まで見た魔族の中では一番小さい申し訳程度の角に、背中には蝙蝠のような翼、そして尻尾も生えている。
 
「は~ぃ、なんでしょ?」
 
 ゆるいなぁ。確かにアスタロウの言う通り舐められたらコトだからな。俺はこほんと咳払いをしてから堂々と答える。
 
「我が名はコバヤシ・ケンジ。女神ベアリスより遣わされた人類の希望にして勇者である。魔王殿にお目通り願いたい」
 
「コバ……はぁ?」
 
 ちょっと演技過剰だっただろうか。真意が伝わったかどうかかなり不安だ。
 
「面会希望ですぅ?」
 
「あ、ハイ」
 
 相変わらずのやる気のない態度で守衛室の小窓を通して三白眼をこちらに向けてくる守衛のお姉さん。
 
「ふぅん……」
 
 少し考え込むようなそぶりを見せてから手元をごそごそと探っている。どういうリアクションなんだろう、これは。何を探してるんだろう。もし携帯型の小さい武器なんかでいきなり攻撃されたらどうしよう。
 
 これは先にアヌスカリバーを抜いといたほうがよかっただろうか? いやしかし抜刀した状態で守衛に行ったりしたらもうそれ完全にカチコミじゃん。話し合いなんかできないだろう。
 
「アポ取ってありますぅ?」
 
 へ? アポ?
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