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兄と弟-1
恵と番になった一週間後の日曜日。
幸せの絶頂にいるはずの多都希の顔には疲労が浮かんでいた。
朔や森といった一部の友人には番ができたことを報告した。役所で番申請などの手続きを一通り済ませ、会社に報告するための書類も提出した。ここまでは良かった。
朔と森はこちらが引いてしまうほど泣いて祝福してくれたし、普段は面倒な役所手続きも恵との将来への大きな一歩だと思えば心が躍った。
問題は、社内の人間からの告白が増えたことだ。
番を得た情報が中途半端に漏れて、多都希に〝恋人ができた〟ではなく〝恋人を探している〟という誤った噂が広まってしまったのだ。
告白されたのは男女合わせて七人で、全く話したこともない者もいれば、仕事で関わる者もいた。告白を断るのはそれなりにパワーのいることで、あなたからの好意は受け取れないと真摯に対応しても、少なからず罪悪感は胃の底に溜まっていく。
三日目までは告白されて断ったことを正直に恵に伝えていたが、萎れていく多都希を不憫に思ったのか、モテるのは分かっているから一から十まで説明しなくてもいいと宥められてしまった。
そしてたった今、多都希の精神的疲労がピークに達しようとしている。
強引に呼び出された多都希と恵は、鹿威しと鳥の囀りが聞こえる料亭で昼から懐石料理を振舞われていた。
大きなテーブルをはさんだ向かいに座っているのは、多都希の兄である塩谷那由多。
歳は多都希の二歳上だが、身長は十センチ程低い。アルファにしては細身で、アンダーリムの銀縁眼鏡は神経質そうなオーラを増幅させていた。
アルファにしては小柄というだけで、恵よりは当然ながら大きいし、多都希よりも威圧感がある。勿論、那由多には恵を害するつもりは微塵もないが、恵の肩の力は抜けない。元来アルファとはこういう生き物なのだ。気高く、近寄りがたい、圧倒的なパワーがある。
多都希は緊張でカチコチになった恵のために那由多を急かす。
同じアルファであっても、那由多は先頭に立って群を率いるタイプで、穏やかで明るい祖父は、常に人々の中心にいるようなリーダーだ。祖父がいてくれた方が場が和む。
「いつになったらお爺様はいらっしゃるんだ?」
腕を組んだ多都希が大きなため息を吐くと、那由多は料理を運んで来た若女将にアルコール類は不要であることを伝えるついでと言わんばかりに「祖父はここには来ない」と言った。
「来ないだと? 声をかけていると言っていただろうが」
「そうだ、声はかけた。だが、お爺様は今、厚生省の人間とアメリカに行っている。海外で疑似ベータ薬の密輸が問題になっていることくらい知っているだろう。あまつさえ偽物まで横行している。我々にとって利益にならないどころか、アメリカ支部はその問い合わせでパンク状態だ」
「だったらなんでお前は日本に残ってんだよ……」
「私には私のやるべきことがある。それに父がこの場に同席していないだけいいだろう。息子がオメガを連れて来た、とショックを受けてこの場で絶命されても困るからな」
那由多の言う通り、父は人生を狂わせたオメガを嫌っている。病気で体も弱り精神も病んでいるため、きっと恵にひどい言葉を投げかけるだろう。恵にはとてもじゃないが会わせられない。
「……オレがオメガだから、塩谷家には歓迎されないということですか?」
恵は口の端をきゅっと結んで俯く。
「我々の父はそうだろうな」
「兄貴! まだ父の病状は恵に詳しく話していないんだ。恵、お前が悪いわけじゃない」
「うん、ありがとう、塩谷さん……。お兄さん、塩谷家はアルファ一族だと聞いています。オメガな上に、庶民のオレでは生活水準も違う、見て来た世界が違う、生まれながらにして違うのだと、感じる瞬間は何度もありました」
「めぐ……」
「それでもオレは多都希さんに出会えました。オメガだからじゃなくて、菅原恵だからいいと手を取ってくれました。だからオレもオレの人生をかけて大事にすると決めたんです。お父様やお兄さんに反対されても、オレは多都希さんから絶対に離れません……!」
テーブルに手をついて立ち上がった恵は勇ましく、多都希は思わず見惚れてしまった。
眉間に皺を寄せた那由多はグラスを手に取り水を一口飲むと、恵に尋ねた。
「せっかくの食事が冷める。食べながらでいいから聞かせてくれ。君は、弟のどこを好いている?」
「あ、ありがとう、ございます……。好きなところは、たくさんあります。毎日オレが作ったご飯を残さず食べてくれるんですけど、最初に一言くらい感想がほしいって伝えたら、それから律儀にずっとコメントしてくれるんです。根は真面目なんですよねぇ。そういうところが可愛いなと思っています」
「お、おい、やめろ……」
黙々と箸を進める那由多に、力説する恵。多都希は耳まで赤くして止めろと訴えるが、恵は義兄を説得したい一心なのか、止まりそうにない。
「基本的に強がりだし……まあ、強がっても大抵のことは出来ちゃうから周りからは平気そうに見えるんだろうけど、家でも資格の勉強をして、影ではずっと黙々と努力して頑張っています。そんな姿を尊敬してるし、かっこいいな、オレも頑張らなくちゃって思うんです。でも、最近は素直に疲れたって寄りかかってくれることもあって、オレを頼ってくれてるのかなと思うことも増えました。それが嬉しくて愛おしくて……大事にしたいなって思ってます。オレがまだまだ未熟なのは承知しています。今すぐ認めてくださいとは言いません。でも、どうかオレたちの仲を引き裂こうとしないでください!」
恵はもう一度頭を深く下げる。
選ばれなかったアルファから、恵に選ばれたたった一人になれただけで満足していたのに、離れまいと必死に言葉と態度を尽くしている。多都希は眩暈がしそうなほど心を打たれた。
目を輝かせている弟を見た那由多はさらに顔を顰める。
「なるほど……君の考えと希望は理解した」
「じゃあ……」
「誤解しているようだが、私はお前たちの結婚に反対するとは一言も言っていない」
「はァ⁉ 兄貴がこの場に親父が来たら絶命するって言ったんじゃねぇか!」
「父はそうだろう。精神的な病だ。家族でも医師でもどうにもできなかった。もう穏やかに余生を謳歌してもらうほかない。だが、父と同じ第二性を無効化する方針を指示していたとしても、私は違う。そもそもオメガ性もアルファ性も否定などしていない。私はお前たちの婚姻には初めから賛成だし、忌避するどことか、恵君がオメガであることをありがたく思っている。だからこうして祝いの席を設けたのだ。打算も含まれているが、祝福したいと思っている」
「打算だ?」
反対していないのならば、初めからそう言っておけと多都希は舌打ちする。
兄の考えは理解したが、時折宇宙人と話しているような気分になる。同じ家で育ったというのに、会話のテンポが昔から噛み合わないのだ。
恵は気が抜けたのかストンと椅子に腰かけると、ぽっかり口を開けていた。
幸せの絶頂にいるはずの多都希の顔には疲労が浮かんでいた。
朔や森といった一部の友人には番ができたことを報告した。役所で番申請などの手続きを一通り済ませ、会社に報告するための書類も提出した。ここまでは良かった。
朔と森はこちらが引いてしまうほど泣いて祝福してくれたし、普段は面倒な役所手続きも恵との将来への大きな一歩だと思えば心が躍った。
問題は、社内の人間からの告白が増えたことだ。
番を得た情報が中途半端に漏れて、多都希に〝恋人ができた〟ではなく〝恋人を探している〟という誤った噂が広まってしまったのだ。
告白されたのは男女合わせて七人で、全く話したこともない者もいれば、仕事で関わる者もいた。告白を断るのはそれなりにパワーのいることで、あなたからの好意は受け取れないと真摯に対応しても、少なからず罪悪感は胃の底に溜まっていく。
三日目までは告白されて断ったことを正直に恵に伝えていたが、萎れていく多都希を不憫に思ったのか、モテるのは分かっているから一から十まで説明しなくてもいいと宥められてしまった。
そしてたった今、多都希の精神的疲労がピークに達しようとしている。
強引に呼び出された多都希と恵は、鹿威しと鳥の囀りが聞こえる料亭で昼から懐石料理を振舞われていた。
大きなテーブルをはさんだ向かいに座っているのは、多都希の兄である塩谷那由多。
歳は多都希の二歳上だが、身長は十センチ程低い。アルファにしては細身で、アンダーリムの銀縁眼鏡は神経質そうなオーラを増幅させていた。
アルファにしては小柄というだけで、恵よりは当然ながら大きいし、多都希よりも威圧感がある。勿論、那由多には恵を害するつもりは微塵もないが、恵の肩の力は抜けない。元来アルファとはこういう生き物なのだ。気高く、近寄りがたい、圧倒的なパワーがある。
多都希は緊張でカチコチになった恵のために那由多を急かす。
同じアルファであっても、那由多は先頭に立って群を率いるタイプで、穏やかで明るい祖父は、常に人々の中心にいるようなリーダーだ。祖父がいてくれた方が場が和む。
「いつになったらお爺様はいらっしゃるんだ?」
腕を組んだ多都希が大きなため息を吐くと、那由多は料理を運んで来た若女将にアルコール類は不要であることを伝えるついでと言わんばかりに「祖父はここには来ない」と言った。
「来ないだと? 声をかけていると言っていただろうが」
「そうだ、声はかけた。だが、お爺様は今、厚生省の人間とアメリカに行っている。海外で疑似ベータ薬の密輸が問題になっていることくらい知っているだろう。あまつさえ偽物まで横行している。我々にとって利益にならないどころか、アメリカ支部はその問い合わせでパンク状態だ」
「だったらなんでお前は日本に残ってんだよ……」
「私には私のやるべきことがある。それに父がこの場に同席していないだけいいだろう。息子がオメガを連れて来た、とショックを受けてこの場で絶命されても困るからな」
那由多の言う通り、父は人生を狂わせたオメガを嫌っている。病気で体も弱り精神も病んでいるため、きっと恵にひどい言葉を投げかけるだろう。恵にはとてもじゃないが会わせられない。
「……オレがオメガだから、塩谷家には歓迎されないということですか?」
恵は口の端をきゅっと結んで俯く。
「我々の父はそうだろうな」
「兄貴! まだ父の病状は恵に詳しく話していないんだ。恵、お前が悪いわけじゃない」
「うん、ありがとう、塩谷さん……。お兄さん、塩谷家はアルファ一族だと聞いています。オメガな上に、庶民のオレでは生活水準も違う、見て来た世界が違う、生まれながらにして違うのだと、感じる瞬間は何度もありました」
「めぐ……」
「それでもオレは多都希さんに出会えました。オメガだからじゃなくて、菅原恵だからいいと手を取ってくれました。だからオレもオレの人生をかけて大事にすると決めたんです。お父様やお兄さんに反対されても、オレは多都希さんから絶対に離れません……!」
テーブルに手をついて立ち上がった恵は勇ましく、多都希は思わず見惚れてしまった。
眉間に皺を寄せた那由多はグラスを手に取り水を一口飲むと、恵に尋ねた。
「せっかくの食事が冷める。食べながらでいいから聞かせてくれ。君は、弟のどこを好いている?」
「あ、ありがとう、ございます……。好きなところは、たくさんあります。毎日オレが作ったご飯を残さず食べてくれるんですけど、最初に一言くらい感想がほしいって伝えたら、それから律儀にずっとコメントしてくれるんです。根は真面目なんですよねぇ。そういうところが可愛いなと思っています」
「お、おい、やめろ……」
黙々と箸を進める那由多に、力説する恵。多都希は耳まで赤くして止めろと訴えるが、恵は義兄を説得したい一心なのか、止まりそうにない。
「基本的に強がりだし……まあ、強がっても大抵のことは出来ちゃうから周りからは平気そうに見えるんだろうけど、家でも資格の勉強をして、影ではずっと黙々と努力して頑張っています。そんな姿を尊敬してるし、かっこいいな、オレも頑張らなくちゃって思うんです。でも、最近は素直に疲れたって寄りかかってくれることもあって、オレを頼ってくれてるのかなと思うことも増えました。それが嬉しくて愛おしくて……大事にしたいなって思ってます。オレがまだまだ未熟なのは承知しています。今すぐ認めてくださいとは言いません。でも、どうかオレたちの仲を引き裂こうとしないでください!」
恵はもう一度頭を深く下げる。
選ばれなかったアルファから、恵に選ばれたたった一人になれただけで満足していたのに、離れまいと必死に言葉と態度を尽くしている。多都希は眩暈がしそうなほど心を打たれた。
目を輝かせている弟を見た那由多はさらに顔を顰める。
「なるほど……君の考えと希望は理解した」
「じゃあ……」
「誤解しているようだが、私はお前たちの結婚に反対するとは一言も言っていない」
「はァ⁉ 兄貴がこの場に親父が来たら絶命するって言ったんじゃねぇか!」
「父はそうだろう。精神的な病だ。家族でも医師でもどうにもできなかった。もう穏やかに余生を謳歌してもらうほかない。だが、父と同じ第二性を無効化する方針を指示していたとしても、私は違う。そもそもオメガ性もアルファ性も否定などしていない。私はお前たちの婚姻には初めから賛成だし、忌避するどことか、恵君がオメガであることをありがたく思っている。だからこうして祝いの席を設けたのだ。打算も含まれているが、祝福したいと思っている」
「打算だ?」
反対していないのならば、初めからそう言っておけと多都希は舌打ちする。
兄の考えは理解したが、時折宇宙人と話しているような気分になる。同じ家で育ったというのに、会話のテンポが昔から噛み合わないのだ。
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★『小説家になろう』さんでも掲載しています。