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清掃オメガの運命の人
恵のいつか-1
学生時代に行われた第二性検査の結果を握りしめて泣く母親の姿を、今でも時折思い出す。
笑うも泣くも豪快な、喜怒哀楽がはっきりとしている人が、息子がオメガだと診断されて肩を震わせて静かに泣いていた。
診断された翌週には、区役所から第二性支援課の説明会に保護者と共に参加するよう手紙が届いていた。
利用できる制度や施設の説明は理解できたが、結局、世間一般的にはオメガに対する風当たりはまだまだ強く、進学や将来の選択肢がかなり限られてしまうという厳しい現実を噛み砕いて伝えているだけのような気もした。
説明会の帰り道、母の表情は暗かった。しばらく無言の時間が続いた。
おしゃべりな母が黙り込んでしまうほどショックを受けたのだろう。
母は正社員として働いているが、それはあくまでベータの母とベータの息子の二人での生活だからこそ成り立っていた。保険が適用されてもオメガ専用の抑制剤を買うこと自体が痛い出費になる。
母と同じ目線になり、やっと力になれると思った矢先のことだったのに。恵は自身の存在自体を疎んだ。自分がいなければ母はもっと自由に生きていけたはずなのに、あまつさえオメガと診断されるなんて――。
足元に、ぽつ、ぽつ、と雨が降る。
身近にオメガの知り合いはいたが、男性のオメガとは出会ったことはない。新聞やニュースなどで、男性オメガが事件に巻き込まれたと報道されているのを見かけるだけ。普通に大学に通って、就職する道は高望みなのだろうか。おそらく自分の未来は良くても灰色、お先真っ暗だ、と悲観的になる。
「めぐ」
「……なに」
母は先ほどの表情から一転して、にこっと微笑んだ。
「今日はすき焼きにしよう!」
「……うん」
「めぐが春菊の味が苦手でも、白滝の触感が無理でも、生卵は買ってから二日以内のものじゃないとイヤでも、これから苦手なものや得意じゃないものが増えても、お母さんは、めぐが大好きだよ!」
「っ……。なんだそれ、意味分かんない……あはは!」
どんな第二性でも恵は大事な息子。恵が母の一番の味方であるように、母も恵の一番の味方なのだ。
握られた手はいつの間にか恵よりも小さくなっていたが、頼もしい手だった。中学生にもなって恥ずかしい気持ちもあるが、恵は母と手を繋いで帰った。
高校に入学する頃には、ヒートが始まっていた。
熱く敏感になる体に、うずく下腹部、悔しくて辛くて恥ずかしくて涙が止まらない。ヒート中の記憶は曖昧だが、嫌悪感だけが残る一週間だった。こうして自身が異端な存在だということを嫌でも理解することになった。
同じ高校に男性のオメガは一人もいなかった。
身体検査は恵だけ別室で行われた。伸びない身長に、大きな瞳と高いままの声。ブロンド髪は顔も知らない父親が残した要らぬオプションでしかなかった。
喉仏は触らないと分からないほどなのに、女性らしいわけでもない。丈の余る制服は、恵の希望を打ち砕くには十分な隙間だった。
薄手の半袖ジャージに衣替えをした七月のある日。
体育前の着替えは、いつもこっそりトイレの個室で行っていた。
着替えを終えてトイレから出た瞬間、クラスメイトのアルファに背後から抱き着かれた。
「菅原なんでトイレでこそこそ着替えてんだよ! うわ~ほっそ! 女子みてぇ」
周りの友人たちは、やめろよとか可哀相だろとか半笑いで茶化す。
腰に回っていた手がゆっくりと胸元へと伸びて来る。
恵は恐怖のあまり固まってしまった。
抱き着いてきたのは小学校からの同級生だったため、本当に軽い冗談だったのかもしれないが、恵は尋常ではない量の汗をかき、うなじを押さえながらガタガタと震えて廊下で気を失った。
これでは自分はオメガだと言っているようなものだ。別室で行われた身体測定や体育の着替え、風邪の時期でもないのに一週間も休んだこと、同級生たちの中ですべてが結びついてしまった。
男友達とは皆、疎遠になった。同じアパートに住む幼馴染も苦い顔をして恵を避け始めた。
からかってきた同級生もそうだ。触れられて気を失うほど嫌だと存在自体を否定してしまったのだ。それがオメガの本能的な防衛反応でしかなくとも、思春期の男子が生理的に拒否されたとなれば、さぞかし傷ついたことだろう。
それでも幼馴染や同級生のように腫れ物扱いされて避けられる方がまだ良かった。
あまり関りのない上級生などからは露骨に性的な接触を求められるようになったし、いやらしい視線は三年間途絶えることはなかった。
守ってくれたのは、同じオメガの女子生徒たち。制服の下にパーカーを着込んで、オメガの証であるカラーを隠す方法も教えてくれたのは彼女たちだった。その友人たちは皆早々に結婚したため、高校を卒業して恵が就職してからは会う機会が減ってしまった。
恵が就職したのは、警備・清掃会社のビルディエクリーンという会社だ。オメガ採用枠もあり、幸運なことに安定した職につけた。
真っ暗だった将来の色が少しだけグレーに近づいた気がした。
ただ運が良かっただけだと恵は思い込んでいるが、高校時代に必死に勉強に励んだ結果であり、全国に拠点を置く大手企業に入社できた。
同じオメガ枠で採用された先輩たちと協力しながら業務に取り組み、後輩も増えた。
刺激はないが、穏やかな日々。これからも変わらず、母と二人で暮らしていけると思っていた。
転機が訪れたのは、二十二歳のバレンタインデー。
母が恋人を自宅に連れて来た。
藤江という男は、母が働くスーパーで店長をしているらしい。
自然体で若く見える美しい母に対し、藤江は年相応なおじさんだった。特筆すべき点を挙げるならば、丸眼鏡ににやけた面がなんとも胡散臭く、有り体に言えば苦手なタイプだった。
母の男の趣味が悪いのは昔から変わらないので仕方ない。それに、これまで何度も母の恋人を紹介されてきたが、婚約まで進んだのは初めてだったのだ。今度こそ本気なのだろうと恵は悟った。
恵は無理矢理口角を上げて「おめでとう」と二人を祝福した。
藤江は婚約者の息子に気に入られようと必死なのか、恵の趣味や交友関係などをあれもこれもと聞いて来た。
始めこそ真面目に受け答えしていたが、恋人はいるのか、ヒート時はどうしているのか、とデリカシーのない質問も飛んできた。出会って数十分で恵は完全に心を閉ざした。
「はあ……」「そうですか」「どうですかね」の三パターンの相槌で乗り切ること一時間。いずれ二人が結婚するならば、一人暮らしを視野に入れなければとぼんやり考えていたが、藤江は恵も一緒に三人で暮らそうと提案してきた。
成人した息子なんて邪魔でしかない上に、オメガであることも知っているのに――?
恵の警戒心が跳ね上ったのは当然のことだった。
あれから藤江は頻繁に菅原家に来るようになった。三人で食事をすることも増えたが、正直会いたくはなかった。
母は、藤江は優しくて良い人だというが、我が母ながら男運のなさは随一だ。恵はこの婚約には何か裏があると思っていた。
事件が起きたのは、恵のヒート明けのことだった。
一週間も壁の薄い自宅でヒートを乗り切ることは難しいため、ヒート時は学生の頃から区のオメガ専用施設であるシェルターで過ごしていた。
そのシェルターを出た曲がり角で藤江にばったり遭遇したのだ。
恵は驚きよりも、ほらやっぱり裏があった、と思った。
藤江は偶然を装っていたが、袋小路になっている場所にわざわざ駐車をする理由がない。恵を待ち伏せていたのは明らかだった。
「偶然だね、僕らやっぱり運命なんだ……。さあ、めぐたん。家まで一緒に帰ろうねぇ」
車の助手席のドアを開いた藤江の目は、オメガを狙う卑劣な連中と同じく濁っていた。
ねっとりした猫撫で声も気持ち悪い。幼い子どもを相手にしているかのような喋り方も、仕草も全てに鳥肌が立つ。こんなにも心の底から生理的に受け付けない人間に出会ったのは初めてだ。これから家族になるかもしれないと思うと気が重い。
恵は身震いをすると「最悪」と吐き捨てて、自宅がある方向とは逆の道へと駆け出した。
笑うも泣くも豪快な、喜怒哀楽がはっきりとしている人が、息子がオメガだと診断されて肩を震わせて静かに泣いていた。
診断された翌週には、区役所から第二性支援課の説明会に保護者と共に参加するよう手紙が届いていた。
利用できる制度や施設の説明は理解できたが、結局、世間一般的にはオメガに対する風当たりはまだまだ強く、進学や将来の選択肢がかなり限られてしまうという厳しい現実を噛み砕いて伝えているだけのような気もした。
説明会の帰り道、母の表情は暗かった。しばらく無言の時間が続いた。
おしゃべりな母が黙り込んでしまうほどショックを受けたのだろう。
母は正社員として働いているが、それはあくまでベータの母とベータの息子の二人での生活だからこそ成り立っていた。保険が適用されてもオメガ専用の抑制剤を買うこと自体が痛い出費になる。
母と同じ目線になり、やっと力になれると思った矢先のことだったのに。恵は自身の存在自体を疎んだ。自分がいなければ母はもっと自由に生きていけたはずなのに、あまつさえオメガと診断されるなんて――。
足元に、ぽつ、ぽつ、と雨が降る。
身近にオメガの知り合いはいたが、男性のオメガとは出会ったことはない。新聞やニュースなどで、男性オメガが事件に巻き込まれたと報道されているのを見かけるだけ。普通に大学に通って、就職する道は高望みなのだろうか。おそらく自分の未来は良くても灰色、お先真っ暗だ、と悲観的になる。
「めぐ」
「……なに」
母は先ほどの表情から一転して、にこっと微笑んだ。
「今日はすき焼きにしよう!」
「……うん」
「めぐが春菊の味が苦手でも、白滝の触感が無理でも、生卵は買ってから二日以内のものじゃないとイヤでも、これから苦手なものや得意じゃないものが増えても、お母さんは、めぐが大好きだよ!」
「っ……。なんだそれ、意味分かんない……あはは!」
どんな第二性でも恵は大事な息子。恵が母の一番の味方であるように、母も恵の一番の味方なのだ。
握られた手はいつの間にか恵よりも小さくなっていたが、頼もしい手だった。中学生にもなって恥ずかしい気持ちもあるが、恵は母と手を繋いで帰った。
高校に入学する頃には、ヒートが始まっていた。
熱く敏感になる体に、うずく下腹部、悔しくて辛くて恥ずかしくて涙が止まらない。ヒート中の記憶は曖昧だが、嫌悪感だけが残る一週間だった。こうして自身が異端な存在だということを嫌でも理解することになった。
同じ高校に男性のオメガは一人もいなかった。
身体検査は恵だけ別室で行われた。伸びない身長に、大きな瞳と高いままの声。ブロンド髪は顔も知らない父親が残した要らぬオプションでしかなかった。
喉仏は触らないと分からないほどなのに、女性らしいわけでもない。丈の余る制服は、恵の希望を打ち砕くには十分な隙間だった。
薄手の半袖ジャージに衣替えをした七月のある日。
体育前の着替えは、いつもこっそりトイレの個室で行っていた。
着替えを終えてトイレから出た瞬間、クラスメイトのアルファに背後から抱き着かれた。
「菅原なんでトイレでこそこそ着替えてんだよ! うわ~ほっそ! 女子みてぇ」
周りの友人たちは、やめろよとか可哀相だろとか半笑いで茶化す。
腰に回っていた手がゆっくりと胸元へと伸びて来る。
恵は恐怖のあまり固まってしまった。
抱き着いてきたのは小学校からの同級生だったため、本当に軽い冗談だったのかもしれないが、恵は尋常ではない量の汗をかき、うなじを押さえながらガタガタと震えて廊下で気を失った。
これでは自分はオメガだと言っているようなものだ。別室で行われた身体測定や体育の着替え、風邪の時期でもないのに一週間も休んだこと、同級生たちの中ですべてが結びついてしまった。
男友達とは皆、疎遠になった。同じアパートに住む幼馴染も苦い顔をして恵を避け始めた。
からかってきた同級生もそうだ。触れられて気を失うほど嫌だと存在自体を否定してしまったのだ。それがオメガの本能的な防衛反応でしかなくとも、思春期の男子が生理的に拒否されたとなれば、さぞかし傷ついたことだろう。
それでも幼馴染や同級生のように腫れ物扱いされて避けられる方がまだ良かった。
あまり関りのない上級生などからは露骨に性的な接触を求められるようになったし、いやらしい視線は三年間途絶えることはなかった。
守ってくれたのは、同じオメガの女子生徒たち。制服の下にパーカーを着込んで、オメガの証であるカラーを隠す方法も教えてくれたのは彼女たちだった。その友人たちは皆早々に結婚したため、高校を卒業して恵が就職してからは会う機会が減ってしまった。
恵が就職したのは、警備・清掃会社のビルディエクリーンという会社だ。オメガ採用枠もあり、幸運なことに安定した職につけた。
真っ暗だった将来の色が少しだけグレーに近づいた気がした。
ただ運が良かっただけだと恵は思い込んでいるが、高校時代に必死に勉強に励んだ結果であり、全国に拠点を置く大手企業に入社できた。
同じオメガ枠で採用された先輩たちと協力しながら業務に取り組み、後輩も増えた。
刺激はないが、穏やかな日々。これからも変わらず、母と二人で暮らしていけると思っていた。
転機が訪れたのは、二十二歳のバレンタインデー。
母が恋人を自宅に連れて来た。
藤江という男は、母が働くスーパーで店長をしているらしい。
自然体で若く見える美しい母に対し、藤江は年相応なおじさんだった。特筆すべき点を挙げるならば、丸眼鏡ににやけた面がなんとも胡散臭く、有り体に言えば苦手なタイプだった。
母の男の趣味が悪いのは昔から変わらないので仕方ない。それに、これまで何度も母の恋人を紹介されてきたが、婚約まで進んだのは初めてだったのだ。今度こそ本気なのだろうと恵は悟った。
恵は無理矢理口角を上げて「おめでとう」と二人を祝福した。
藤江は婚約者の息子に気に入られようと必死なのか、恵の趣味や交友関係などをあれもこれもと聞いて来た。
始めこそ真面目に受け答えしていたが、恋人はいるのか、ヒート時はどうしているのか、とデリカシーのない質問も飛んできた。出会って数十分で恵は完全に心を閉ざした。
「はあ……」「そうですか」「どうですかね」の三パターンの相槌で乗り切ること一時間。いずれ二人が結婚するならば、一人暮らしを視野に入れなければとぼんやり考えていたが、藤江は恵も一緒に三人で暮らそうと提案してきた。
成人した息子なんて邪魔でしかない上に、オメガであることも知っているのに――?
恵の警戒心が跳ね上ったのは当然のことだった。
あれから藤江は頻繁に菅原家に来るようになった。三人で食事をすることも増えたが、正直会いたくはなかった。
母は、藤江は優しくて良い人だというが、我が母ながら男運のなさは随一だ。恵はこの婚約には何か裏があると思っていた。
事件が起きたのは、恵のヒート明けのことだった。
一週間も壁の薄い自宅でヒートを乗り切ることは難しいため、ヒート時は学生の頃から区のオメガ専用施設であるシェルターで過ごしていた。
そのシェルターを出た曲がり角で藤江にばったり遭遇したのだ。
恵は驚きよりも、ほらやっぱり裏があった、と思った。
藤江は偶然を装っていたが、袋小路になっている場所にわざわざ駐車をする理由がない。恵を待ち伏せていたのは明らかだった。
「偶然だね、僕らやっぱり運命なんだ……。さあ、めぐたん。家まで一緒に帰ろうねぇ」
車の助手席のドアを開いた藤江の目は、オメガを狙う卑劣な連中と同じく濁っていた。
ねっとりした猫撫で声も気持ち悪い。幼い子どもを相手にしているかのような喋り方も、仕草も全てに鳥肌が立つ。こんなにも心の底から生理的に受け付けない人間に出会ったのは初めてだ。これから家族になるかもしれないと思うと気が重い。
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★『小説家になろう』さんでも掲載しています。