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魔眼の子
36.助け合い
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リアースに来てから二ヶ月半が経過した。
王城に残り訓練に励む野木、王都の教会に移り聖女として働き出したフミ、王都を駆け回り雑誌を発行する麻耶、皆それぞれ新たな人生を歩み出した。
野木と麻耶とは度々会う機会はあるが、フミとは会っていない。
一度だけ教会から手伝いが必要だと連絡があったが、その日は麻耶と印刷会社へと行く予定だったため、教会には重盛が一人で向かった。
帰宅後、何のために教会に呼ばれたのかと聞いてみると、遊びに来る子供達の相手をしていたのだという。一体何をして遊んできたのか、重盛は全身泥だらけだった。
「今後も呼ばれることがあれば俺が行くから」と決定事項のように言い残して、彼は風呂へと向かっていった。
フミに会いたくない自分を気遣っているのかもしれない。
大事に、とても大事にされているのだと日々感じている。
「甘えすぎかなぁ」
重盛が選んだパジャマとブランケットに包まれながら、丸くなった真紘はソファーに沈み込んでいった。
マルクスから招待状を受け取り、ついに旅に出ることになった。
馬車を借りて向かうのもよいが、王都の外を自分の目で見て感じる良い機会だ。
距離は東京駅から箱根までと同じ、約八十キロメートル。
二人は寄り道しながらタルハネイリッカ領まで歩いて向かうことにした。
王都を離れると、のどかな田舎町と山の連続だった。
森の中では魔物が襲ってくることもあった。人の手が加わっていない山の中では小規模な魔力溜まりは珍しいものではなく、それなりに魔物はいるようだ。
ギルドの仕事を横取りしたいわけではないが、向かってきた魔物は全て返り討ちにして火葬した。
空の魔石の回収も忘れてはならない。
野木の魔力量は救世主としては平均的だが、リアース生まれの人と比べれば圧倒的に魔力量が多いため、それだけ空の魔石も必要になる。
回収した空魔石はタルハネイリッカ領に着いたらまとめて王城に発送する予定だ。
そしてリアースに召喚されて初めてと言っても過言ではないほどの問題に直面した。
魔物は平気で倒す重盛だったが、一晩だけ野営をした日は大変だった。
王都で購入したテントで寝ていたはずが、目が覚めたらどこかの宿のベッドの上だったのだ。真紘は起きて驚いた。隣に転がっている重盛を起こして問いただすと、虫に耐えられなくなった彼が眠る真紘を宿まで運んだのだという。
綺麗好きなのは一緒に暮らして理解していたつもりだったが、なんと重盛は虫が大の苦手だった。
特に名前の分からない虫は絶対に無理、らしい。
大きな体で虫が怖いと震える姿はちょっぴり愛らしかった。
なるほど、これがギャップというやつかと真紘はときめいた。本人に言えば可愛いよりカッコいい方が良いと嫌がるかもしれないので、胸にこっそり秘めておいた。
二ヶ月以上一緒にいても、知らないことは山ほどある。
昨晩も光の玉に集まってくる虫に絶叫しながら、夜目が効くから灯りを点けるなと言う重盛と、灯りがないと何も見えないという真紘の口論は、結局重盛が真紘を抱えて移動するという力業で解決した。
キャンプ飯も楽しみにしていたが、夜は焚火の灯りに虫が寄ってくるという理由で却下された。
ここまで嫌がっている姿を見続けていると可愛いを通り越して、段々と可哀相になってくる。
真紘も虫は好きでないが、特に苦手というわけではない。
そこまで視界に入ってこないからかもしれない。足元にいる、あの木にぶら下がっていると指摘されて気づくことが多かった。
真紘ができることといえば、対象がほとんど魔力を感じられない小さな命である以上、虫よけスプレーをかけてやることくらいだった。
それでもスプレーのハッカの匂いがきついと転がる始末。
いっその事、白い養蜂用の防護服でも買った方が早いのではという気になってきた。
この先も野宿が必要になることもあるはずだ。
自分が睡魔に弱いように、重盛が苦手なことは自分がどうにかしなければと真紘は頭を悩ませた。
「困ったなぁ。僕が召喚された教会まで森の中を走って来たんじゃなかったっけ? あの時はどうしてたの?」
旅に出て二日目。
重盛は疲労困憊といった表情で、整備された道と山道では、テンションが雲泥の差だった。
「リアース初日に森を越えた時は知らない場所でそれどころじゃなかったし、爆速で走ってたから全然気づかなかったんだもん。てか、俺、マジでテント生活向いてないかも。真紘ちゃんはいつも通り爆睡してたけど、一回蜘蛛が入って来たの気づいてなかったっしょ!? そのモチモチサラサラのキュートなほっぺ刺されたらどうすんのッ!?」
「だもん、って言われてもなぁ。じゃあ、テントじゃなくて家ごとまっぽけに入れておこうかな。流石に一軒家は設置スペース的に無理だろうし、周りに気づかれると面倒だから、タルハネイリッカ領に着いたら小屋を買おう」
「百人乗っても大丈夫系の?」
倉庫用のプレハブ小屋を想像しているらしいが、真紘は首を振った。
「どちらかと言えば、自宅の庭にあるお洒落な六畳一間だけの小屋みたいなもの。トレーラーハウスとかタイニーハウスとか、呼び方は色々あるよ。志水家の庭にもあったんだ。昔は子供達の遊び場だったけど、今はシゲ松の家になってる」
「へぇ、めっちゃいいじゃん! ついでにトイレも付けて~」
「はいはい。というかどうする? そんなに嫌ならタルハネイリッカ領まで飛んでいく? 流石に上空には虫いないと思うけど」
「うーん、でもせっかく名刺作ってもらったし、新しい街の雰囲気は楽しみたいからなぁ。夜、眠くなったら俺が抱えて近場の宿まで行くから陸路で行かない?」
「君がいいならいいよ。というか、僕だって二十三時くらいまでなら余裕で起きてられるんだからね。一回寝たら朝まで起きないだけで……。とにかく夜になる前に街に辿りつくよう、ちゃんと地図見て計画を立てて歩いていこうよ」
「ありがとう! 最高、流石ハニー!」
「はいはい」
重盛は虫もいないのに真紘に勢いよく抱き着いた。
ここが甘やかし時とばかりに尻尾を撫でると、少年のような顔をして笑う重盛と目が合った。
王城に残り訓練に励む野木、王都の教会に移り聖女として働き出したフミ、王都を駆け回り雑誌を発行する麻耶、皆それぞれ新たな人生を歩み出した。
野木と麻耶とは度々会う機会はあるが、フミとは会っていない。
一度だけ教会から手伝いが必要だと連絡があったが、その日は麻耶と印刷会社へと行く予定だったため、教会には重盛が一人で向かった。
帰宅後、何のために教会に呼ばれたのかと聞いてみると、遊びに来る子供達の相手をしていたのだという。一体何をして遊んできたのか、重盛は全身泥だらけだった。
「今後も呼ばれることがあれば俺が行くから」と決定事項のように言い残して、彼は風呂へと向かっていった。
フミに会いたくない自分を気遣っているのかもしれない。
大事に、とても大事にされているのだと日々感じている。
「甘えすぎかなぁ」
重盛が選んだパジャマとブランケットに包まれながら、丸くなった真紘はソファーに沈み込んでいった。
マルクスから招待状を受け取り、ついに旅に出ることになった。
馬車を借りて向かうのもよいが、王都の外を自分の目で見て感じる良い機会だ。
距離は東京駅から箱根までと同じ、約八十キロメートル。
二人は寄り道しながらタルハネイリッカ領まで歩いて向かうことにした。
王都を離れると、のどかな田舎町と山の連続だった。
森の中では魔物が襲ってくることもあった。人の手が加わっていない山の中では小規模な魔力溜まりは珍しいものではなく、それなりに魔物はいるようだ。
ギルドの仕事を横取りしたいわけではないが、向かってきた魔物は全て返り討ちにして火葬した。
空の魔石の回収も忘れてはならない。
野木の魔力量は救世主としては平均的だが、リアース生まれの人と比べれば圧倒的に魔力量が多いため、それだけ空の魔石も必要になる。
回収した空魔石はタルハネイリッカ領に着いたらまとめて王城に発送する予定だ。
そしてリアースに召喚されて初めてと言っても過言ではないほどの問題に直面した。
魔物は平気で倒す重盛だったが、一晩だけ野営をした日は大変だった。
王都で購入したテントで寝ていたはずが、目が覚めたらどこかの宿のベッドの上だったのだ。真紘は起きて驚いた。隣に転がっている重盛を起こして問いただすと、虫に耐えられなくなった彼が眠る真紘を宿まで運んだのだという。
綺麗好きなのは一緒に暮らして理解していたつもりだったが、なんと重盛は虫が大の苦手だった。
特に名前の分からない虫は絶対に無理、らしい。
大きな体で虫が怖いと震える姿はちょっぴり愛らしかった。
なるほど、これがギャップというやつかと真紘はときめいた。本人に言えば可愛いよりカッコいい方が良いと嫌がるかもしれないので、胸にこっそり秘めておいた。
二ヶ月以上一緒にいても、知らないことは山ほどある。
昨晩も光の玉に集まってくる虫に絶叫しながら、夜目が効くから灯りを点けるなと言う重盛と、灯りがないと何も見えないという真紘の口論は、結局重盛が真紘を抱えて移動するという力業で解決した。
キャンプ飯も楽しみにしていたが、夜は焚火の灯りに虫が寄ってくるという理由で却下された。
ここまで嫌がっている姿を見続けていると可愛いを通り越して、段々と可哀相になってくる。
真紘も虫は好きでないが、特に苦手というわけではない。
そこまで視界に入ってこないからかもしれない。足元にいる、あの木にぶら下がっていると指摘されて気づくことが多かった。
真紘ができることといえば、対象がほとんど魔力を感じられない小さな命である以上、虫よけスプレーをかけてやることくらいだった。
それでもスプレーのハッカの匂いがきついと転がる始末。
いっその事、白い養蜂用の防護服でも買った方が早いのではという気になってきた。
この先も野宿が必要になることもあるはずだ。
自分が睡魔に弱いように、重盛が苦手なことは自分がどうにかしなければと真紘は頭を悩ませた。
「困ったなぁ。僕が召喚された教会まで森の中を走って来たんじゃなかったっけ? あの時はどうしてたの?」
旅に出て二日目。
重盛は疲労困憊といった表情で、整備された道と山道では、テンションが雲泥の差だった。
「リアース初日に森を越えた時は知らない場所でそれどころじゃなかったし、爆速で走ってたから全然気づかなかったんだもん。てか、俺、マジでテント生活向いてないかも。真紘ちゃんはいつも通り爆睡してたけど、一回蜘蛛が入って来たの気づいてなかったっしょ!? そのモチモチサラサラのキュートなほっぺ刺されたらどうすんのッ!?」
「だもん、って言われてもなぁ。じゃあ、テントじゃなくて家ごとまっぽけに入れておこうかな。流石に一軒家は設置スペース的に無理だろうし、周りに気づかれると面倒だから、タルハネイリッカ領に着いたら小屋を買おう」
「百人乗っても大丈夫系の?」
倉庫用のプレハブ小屋を想像しているらしいが、真紘は首を振った。
「どちらかと言えば、自宅の庭にあるお洒落な六畳一間だけの小屋みたいなもの。トレーラーハウスとかタイニーハウスとか、呼び方は色々あるよ。志水家の庭にもあったんだ。昔は子供達の遊び場だったけど、今はシゲ松の家になってる」
「へぇ、めっちゃいいじゃん! ついでにトイレも付けて~」
「はいはい。というかどうする? そんなに嫌ならタルハネイリッカ領まで飛んでいく? 流石に上空には虫いないと思うけど」
「うーん、でもせっかく名刺作ってもらったし、新しい街の雰囲気は楽しみたいからなぁ。夜、眠くなったら俺が抱えて近場の宿まで行くから陸路で行かない?」
「君がいいならいいよ。というか、僕だって二十三時くらいまでなら余裕で起きてられるんだからね。一回寝たら朝まで起きないだけで……。とにかく夜になる前に街に辿りつくよう、ちゃんと地図見て計画を立てて歩いていこうよ」
「ありがとう! 最高、流石ハニー!」
「はいはい」
重盛は虫もいないのに真紘に勢いよく抱き着いた。
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