同級生と余生を異世界で-お眠の美人エルフと一途な妖狐の便利屋旅-

笹川リュウ

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新しい年

65.美しいものⅣ

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 お悩み相談会と化した玄関中チームに対し、一人の重盛は隕石から少し離れた場所でぼーっと星空を眺めていた。
 隕石の近くには農家らしくご自由にお持ちくださいの張り紙を貼っており、怪盗歓迎モードだ。
 安全確保のためにリドレー男爵、マリー、ポール、他の従業員達は応接間で待機してもらっている。
 重盛は玄関の中の途切れない話し声に安心しながらも、ジリリと心の隅を焦がしていた。
 風も強く、ドアを隔てているため会話の内容までは聞き取れない。
 嫌悪感剝き出しで耳や尻尾を睨んでいたローザが素直について来た理由は何だ。
 獣人である自分だけが疎ましく思われていて、始めから真紘のことは気に入っていたのか。
 二枚目の予告状が届いてから畑や屋敷の周囲に異常がないか確認してまわっていたので、屋敷の中には戻っていない。換気してもらったとはいえ、まだ屋敷の中は臭くとても入る気になれなかったのだが、こんなことなら自分も一緒に着いていけば良かったのだ。
 要らぬ心配をしているなど夢にも思わず、重盛は深いため息をついた。

 澄んだ空気に反して、心は燻ぶっていく。
 先日の真紘の嫉妬心なんて可愛いもので、彼の感情がこちらの慕情に追いついて来たことに喜びすら覚えたというのに、当の本人は冷たい風にあたりながらこの世の終わりに直面しているかのような青白い顔で懺悔していた。
 真紘は感情的であることを悪いことだと思い込んでいる節がある。
 恐ろしく激しい感情をぶつけられた中学での事件が拍車をかけたのは明白だ。
 可哀想と可愛いは紙一重だといつかの新聞で読んだことがある。地球にいた頃の真紘への恋は淡いもので、共感するには至らなかったが、濃密な時間を共にした今ならそれも少しだけ分かった気がした。
 そんな禁欲主義的側面に振り回されている彼は可愛くて可哀相。純でいようと抗う姿と、欲望のつぼみが花開いていく様のアンバランスさを目の当たりにして、重盛は歓喜に震えた。
 あの日の帰り道の夕日は熟したマンゴーのような橙色で、どろりとした欲望を隠すにはうってつけな色をしていた。邪念を振り払うようにふわふわとした尻尾を振れば真紘は笑ってくれる。
 じっくりと松永重盛という男は可愛らしい無害な男なのだ、と教え込み、一時の劣情で全てを台無しにしないように、自身が選んだことなのだと納得してもらうため本人に手伝ってもらうことも忘れず、共に愛を育んでいく。
 麻耶と野木の前で入籍の話が出た時もチャンスだと思った。
 真紘からの愛情を疑ったことはないが、彼は優しく誠実な男だから、書面で契約すれば一生自分だけを愛してくれるはずだという確信があった。
 付き合って半年で入籍は一般的に考えても早計だと言われるかもしれないが、重盛にとっては十年来の恋だ。タイミングを間違えてはいけない。
 じっくり確実に絶対に心も体も全てを手に入れたい。執念めいた恋心は金色の炎となって瞳の中でメラメラと燃えている。一度手に入れた幸せはどんな魔法よりも強力で、愛し愛されたいという欲望は泉のように湧いて止むことを知らなかった。
 イヌ科の中でも狐の尻尾と耳が生えているのは、そういう狡猾さが原因なのだろうと自嘲めいた笑みが零れ、長く白い息が夜空に上った。
 おかしい。
 どうして体の内側の熱がこんなにもどろどろと燃えている。
 違う。違う。違う――。
 薄暗い気持ちがあったことは否定しないが、それだけではなかったはずだ。
 息が酷く苦しい。耳の奥でドクドクと血が流れていく音がする。
 リドレー男爵の屋敷に入ってからというもの、体と心の調子が不安定で、あけすけな表現をすれば人肌が恋しい。
 ずっと隣にいた真紘の魔力が精神安定剤のような役割を果たしていたのか、一人になったタイミングで嗅いでしまった薬品の効果が表れた。
 嫉妬に狂う獣のうめき声が漏れる。
 この感情は凍てつくような冷気のせい、頭上で星々がざわめくせい、吸い込んだ甘ったるい香水のせい、それとも自分に流れる忌まわしい血のせい――。
 寒空の下だというのに背中に汗が伝った。
 体がぐらりと傾き、奥歯が軋んだ瞬間、凛とした声が夜空に響く。
『お母さんと笑い方がそっくり』
 真紘がチャコットのギルド前で呟いた言葉だ。半分ひとり言のような何気ない一言だったが、胸の真ん中にすとんと落ちて瞬く間に温かいものに包まれた。それは言霊となり今も重盛を守り続けている。
 そうだ、母に宇宙一最高な男であり続けると誓ったではないか。
 厚手のコートに皺が寄るくらい強く胸のあたりを掴む。
 瞼の裏に映るのは、真紘との思い出の日々。
 見知らぬ人に一本しかない傘を差し出す慈悲深さ。
 困っている人がいれば手を差し出すことを厭わない姿勢。
 誰かを守るため、苦手な相手であっても真摯に向き合う高邁な精神。
 どんな相手にも勇敢に立ち向かう凛々しい横顔。
 どんな料理もリスのように頬を膨らませて美味しいと蕩けだす目尻。
 競争しようよ、と坂道を走りながらはしゃぐ少年のような無邪気な笑み。
 羞恥心を乗り越えて振り切れた時だけ誘惑してくる悪戯めいた唇。
 おはようとおやすみをくれる、優しい声。
 こんなにも強く美しい人間が可哀相であるものか。いつだって自分を救い上げてくれるのは真紘なのだ。
 母と別れて泣きながら目覚めたあの朝に、優しく丁寧に大好きなのだと伝え続けると決めたではないか。
 悪夢のような幻覚を振り払い、ぐっと背筋を伸ばして左手を空に翳すと、重盛の決意を後押しするかのように、中指と薬指の間に流れ星が降ってきた。

 チッチッチ、と規則正しく動く懐中時計の針が二十一時を知らせた瞬間、風に乗ってまた不思議な臭いがした。
「誰?」
 厩舎からこちらに向かってくる一人の男。
 頭巾のように黒い布を被った姿はてるてる坊主のようだが、その色では明日は絶対に大雨になるだろうと重盛は口をへの字に曲げた。
「こんばんは」
 変声期を使ったような男とも女ともとれる声がした。
 重盛が黙ったままでいると、黒頭巾の男はひとり言のように風向きが良くない、と呟いた。
「風向き?」
「私の背を押す風なのに私にとっては向かい風。正面から風を受ける君にとっては追い風。運はそちらにあったようです」
「は? 何かのなぞなぞ?」
 その問いに答えたのは玄関から飛び出してきた真紘だった。
「重盛は正面から風を受けている。つまり今なら風上にいる彼のにおいが――」
 その声と同時にドンと何かが爆発したような音が辺りに鳴り響いた。
 玄関のドアに抱き着くローザの前髪は風によって後ろに流され、形の良い眉がくっきりと浮かんでいる。
「いやはや、こんな僅かな魔力を感じ取れるとは恐れ入りました。同じ風魔法で薬を吹き飛ばしましたか。なるほど、先に追い払うべきは貴方の方でしたね。本日は退散します」
「怪盗アンノーンのために誂えた隕石ですよ。お持ち帰りになられては?」
「いえ、これ以上近づくと捕らえられそうなので、貴方のいない日に頂戴します。私を謳った予告状が届いたと知り、混乱に乗じて頂戴するつもりでしたが、最後まで利用されてしまいましたね」
 言葉とは裏腹に、アンノーンは初めからこうなることが分かっていたような余裕の笑みを浮かべた。
 さらに黒い頭巾を剥ぐと昼間に出会った御者の老人が現れた。
「ローザお嬢様、婚約破棄おめでとうございます。私もお役御免でございますね。最後のお給金はそちらの隕石でお願い致します」
「お給金? えっ、どういうこと?」
「婚約を解消されたのですから馬も私も不要でしょう」と厩舎を指さす黒頭巾、基、御者、そして怪盗アンノーンは言う。
 重盛はまさかと目を丸くした。
「まさかはこちらの台詞なのですよ。普通の獣人ならばローザお嬢様の香水で撃退できるはずなのに、貴方は今も平然としている上に、水魔法で薬品をばら撒いても正気のままだ。どれだけ体が丈夫なんですか」
「いや、効果はあったよ。まあ、ラブパワーで吹き飛ばしてやったけどね」
「ほうほう、それは大変興味深い。是非どんな状態になって、どのように打開したのか伺いたいところです」
「おっ、おう。そんなやばい薬だった系?」
 苦笑いを浮かべる重盛の隣でキンッと金属が割れるような音がした瞬間、質問に答える間もなくアンノーンは後方に吹き飛ばされていった。
 驚いた重盛は口が塞がらぬまま「何してんの、真紘ちゃん」と呼びかける。
 銀色の髪は燃える炎のように揺らめき、眩しいほどの魔力の粒が彼の全身を覆っていた。真紘の少し後方にいたローザは膨大な魔力に当てられ完全に気を失っている。
「今すぐに解毒剤を出して。重盛に何かあったら僕は貴方を絶対に許さな――」
「わあーッ! ストップ、待って、真紘ちゃん、真紘ちゃん! ちょっとだけやばい感じになったけど、今はもう平気だから!」
 仰向けに倒れて咳き込むアンノーンに近づいていく真紘に正面から抱き着くと彼はピタリと歩みを止めた。
「俺は何ともないから大丈夫、ほらマジで元気! その魔力ただ漏れ状態の方が心配だって!」
 茶色かった畑には緑が生い茂り、庭の木々は十メートル以上も急成長を遂げていた。
 守られているはずの重盛でさえ全身に電気が流れていると錯覚するほど肌がピリピリと粟立っている。
 このままでは魔力溜まりと同じ現象が起きてしまうと重盛は焦った。
 もう一度叫ぶように名前を呼ぶと、不安で仕方ない翡翠がこちらの姿を捉えて薄い水の膜が張った。
「重盛、本当に大丈夫……?」
「ああ、平気、すっげぇ平気だよ。だいじょーぶ。いつもの真紘ちゃんが大好きなカッコいい重盛君だろ」
「うん」
「おお、肯定された。んじゃ、落ち着けるよね。はい、深く息吸って吐いて、もう一回息吸ってぇ、吐いて」
 重盛に言われた通りに深呼吸を繰り返すと、真紘の体から漏れる魔力がスッと消えた。
 その隙に起き上がったアンノーンはそろりそろりと退路へと移動する。屋敷を背にしているのも攻撃されないよう計算してのことだった。
「やばい薬とは失敬な……。とてもいい薬ですよ。自我をなくすほど効かなかったのが残念なほどに」
「はあ⁉ 残念も何もなッもごもごもごっ! んんっん――ッ!」
「ああ、もう! 余計な事言うなって、これ以上真紘ちゃんを刺激すんな!」
 重盛は目を三角にして怒り出す真紘の口元を覆う。
 腕の中でジタバタと暴れる真紘は怒り心頭だ。
「それよりいいのですか、ご令嬢の安否は確認せずとも」
 アンノーンは玄関に横たわるローザを見ながら不敵な笑みを浮かべた。
 そして二人の視線が移った一瞬の隙にアンノーンは姿を消した。

 二人がローザの元に駆け寄り声を掛けると彼女は長いまつ毛を震わせた後、うっすらと目を開けた。
「何が起きたの……?」
「アンノーンに逃げられた。ごめんねローザちゃん」
「申し訳ございません! 僕が至らないばかりに魔力を暴発させました」
「ふっ、天然のやることなら仕方ないわね。怪盗は撃退してくれたのかしら」
「はい。隕石はまた取りに来るかもしれません……」
「それはいいのよ、お父様もマリーも納得してるのだから。石も野ざらしで結構。その辺に転がしておけばいつか盗りに来るでしょう。それより今晩はもう解決したのよね。私なんだかとても眠くて……あなたの魔力凄いわね。温かくて甘くてスパイスの効いた紅茶の中に浸かっているような、そんな感じ。なんで便利屋なんてやっているのかしら、酔狂だわ……」
 途中から目を閉じて寝言のような言葉を残したローザは穏やかに眠りに入った。
「酔狂……」
 信じられないといった表情の真紘はショックを受けたらしい。激しい一面をのぞかせた彼は自分自身が一番驚いているようで、上手く気持ちの整理がついていないようにも見える。
 重盛は今度は自分が励ます番だと薄い背中をタンタンと叩いた。
「酔狂も突き抜ければ粋に狂うと書いて粋狂になるっしょ!」
「う、うん。君こそ粋なこと言うね……」
 首を傾げる真紘にはあまり刺さらなかったらしく、励まされながらも、人を励ます難しさを学んだ霜が降りる月夜となった。
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