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新しい年
66.美しいものⅤ
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二十一時を過ぎても一枚目の予告状の犯人は現れなかった。
不審な人物が屋敷に侵入した形跡もない。
目当ての美しい者がローザではなかったのか、はたまたアンノーンが一方的に吹き飛ばされる現場を目撃し、慄いて逃げ去ったのかは不明だ。
未だに臭いがする屋敷の中は重盛にとって毒でしかないため、一旦解散して応接間のバルコニーで落ち合うことなった。重盛は二階程度の高さなら道具など無しに余裕で飛び上ることができる。王城でも窓を破壊して追いかけてきたほどなので、さほど高さは関係ないのかもしれない。
忘れない内にと別れる前に、ローザが重盛に対し害するつもりがなかった事を教えれば、こちらこそ嫉妬して悪かったと眠りこける彼女に謝っていた。
薬の影響でネガティブになっていたと視線を逸らす重盛はあまり触れられたくないようで、気づかないふりをしながら無理しないようにね、と労いの言葉をかけた。
なんてことのない顔をしていたが、話している最中も一度も目が合わなかった。重盛の苦しみは察するに余りある。
次は必ずアンノーンを捕まえてギルドに突き出してやる。
心に群青色の闘志を燃やしながら真紘はローザに触れぬよう浮かせたまま寝室へと運んだ。
玄関前での騒動を報告するため応接間に戻る。
応接間に近づくにつれて人の気配がまるでしないことを不審に思った真紘は駆け足になり、ドアを勢いよく開けた。
そこにはリドレー男爵がぽつんと一人で暗い表情を浮かべ、祈るように両手を握りしめていた。
「戻りました。ローザ様はご無事です」
「そうか、そうか。ローザ、良かった……」
「怪盗アンノーンは撃退しましたが、隕石は引き続き狙うと宣言されてしまったので、ローザ様のご指示に従い玄関の前に置いてきました。昨日今日の執着ではなく、子爵家から遣わされた御者に成りすまし、前々から畑の腰かけ石を狙っていたようです」
「そうか……」
「あの、マリー様やポールさん、従業員の皆さんはどちらに?」
声をかけても返答がない。男爵の肩を叩くと、彼は両目に涙を溜めて絞り出すようにマリーがいなくなったのだと告げた。
「変な臭いがして気分が悪い」と言い出したポールを支えるようにしてマリーはバルコニーに出た。
ポールの祖母が猫の獣人だと聞いていたので、男爵や同僚も彼の嗅覚が人よりも鋭いことを知っていた。重盛と同じく屋敷の中の臭いに当てられたのだろうと誰もが思った。
数分後、聞こえていたはずのマリーの声がしなくなったことに気が付いた従業員が窓を開くとバルコニーは無人で、二人は忽然と姿を消していたという。
従業員総出で探し回っているが、未だに見つかったという報告はない。
アンノーンの言っていたご令嬢の安否というのはローザではなく、マリーを指していたのだとしたら、一枚目の予告状の犯人は、共に姿をくらませたポールの可能性が高い。
真紘はバルコニーへと飛び出した。まっぽけから魔石を取り出して光を灯す。手すりの前でしゃがみ痕跡を探しながら、すぐ下で待機していた重盛に問いかけた。
「重盛、地面に変な足跡残ってない?」
「なになに? 足跡もなにもさっき真紘ちゃんが畑と庭の状態元通りにしたから俺の足跡以外付いてないよ」
暴走しかけて滅茶苦茶にした庭をさっと元通りにしたのが間違いだった。
己の愚行の積み重ねに眩暈がして、真紘は前髪をくしゃくしゃとかき混ぜた。
反省するよりも今は事件解決に集中すべきだ。
理解していても心を切り替えるという作業はそう簡単にはいかない。
もたもたと脳内で自身を叱咤していると待ちきれないといった声が届く。
「ねぇ、よくわかんないけど、俺そっち行っていーのー?」
「あっ、そうだね。どうぞ。絶対に建物の中には入らないでね」
一階からヒュンと飛び上ってきた重盛は器用にも手すりに着地して、両ひざに肘をつき顎を両手で支えた。
ふと彼の足元を見ると、縄が擦れたような跡が付いている。
「なんで前髪ぐちゃぐちゃなん……? 俺の足元ガン見してるけどなんかあんの?」
「うん。ロープが擦れた跡がある。マリーさんとポールさんがこのバルコニーに出たのを最後に行方不明だ。探しに行こう」
「……了解」
逃走手段に用いられた痕跡が自分の足元にあることを理解した重盛は固まった。
窓辺で呆ける男爵に昼間バルコニーに出た人間はいるかと問えば、ポールだけだと涙ながらに答えた。
「それってポール君とマリーちゃんが自ら出て行ったってこと?」
「どうかな。マリーさんだけなら兎も角、君と同じような体格のポールさんも消えているから第三者が連れ去った線は薄そうだ。マリーさんがポールさんに連れ去られた可能性の方が高いんじゃないかな……。ポールさんにとっては誰よりも美しい者はマリーさんだったんだ。妹に責任を押し付け、家を捨てて出て行くローザ様が許せなくて裏切りの花を添えた脅迫状を出したとは考えられない?」
「でもさっき外で話してくれた内容的にはトランシルヴァ伯爵との婚約はマリーちゃんじゃなくてローザちゃんになるんだろ? それなら誘拐したり駆け落ちしたりする必要なくない⁉」
「ローザ様は今の今まで誰にも相談してなかったんだよ。ポールさんもマリー様も、男爵様ですらそのことはまだ知らないんだって……。彼女の真意に気付いているとは到底思えない」
「そりゃやばいわ、すれ違いまくってんじゃん。とにかく早く見つけないと!」
バルコニーの手すりに足を掛けた真紘の腕を男爵は掴んだ。
「娘達の幸せを願うばかり、当の本人達の気持ちを蔑ろにしていた。ポールがそこまでマリーを愛してくれているとは知らず、勝手に婚約を決めて悪いことをした。伯爵様にも子爵様にも私から断りを申し出ます。一番大切なのは娘と従業員達だ。どうか、二人をお願いします」
「任せてください」
先行して飛び上る重盛を摑まえると、真紘は彼を抱え直して夜空へと舞い上がった。
上空から下を見渡しても眠りについた大地が映るだけ。
王都の中心部は夜も煌々と灯りが燈っている。知人に目撃されれば連れ戻されるかもしれない。逃走経路としては暗い森の中が妥当だろう。
厩舎を確認したところローザが借りていた子爵家の馬車がなくなっていた。アンノーンは身一つで逃走したため、始めからポールにあげるつもりだったのかもしれない。
いなくなった時間と馬の走行距離をざっくり計算すると駈足だとしても十キロ程度しか離れていないはず。真紘達は隣街へと続く谷の狭間に当たりをつけて待ち構えることにした。
近くを流れる小川の影響か、降り立った足元の土は少し柔らかい。苔に足を取られて転びかけると当然のように重盛に抱きかかえられた。
「うう、面目ない。今日なんか駄目な日だ」
「ダメなことなんてないよ。それにそういう日があってもいいじゃん」
完全に冬毛になった尻尾はモコモコとしていて縋りつきたくなる。ただでさえ尻尾や耳に弱い真紘が顔の前で揺れる誘惑に打ち勝つことは極めて困難だ。
「嗚呼~尻尾で顔を撫でるのやめて、これ以上甘やかさないで。この調子で推測がはずれて来なかったらどうしよう。もう隣街に行っちゃったかな」
「んや、リドレー家の厩舎は農作業用の馬しかいなかったし、運搬は別の会社にお願いしてたらしいから、ポール君も馬車の運転は初心者マークっしょ。まだ森の中じゃないかなぁ。俺は真紘ちゃんが起きてられるかの方が心配だね」
「まだ二十二時前じゃないか、流石に外で寝たりしないよ」
「えー前に森の中で一回寝落ちしたじゃん。俺がタイニーハウス設置してる間に一人でスヤスヤ。しかも大きな栗の木の下で。童謡かと思ったんだけど?」
「それも本当にごめんってば……。さっきも魔暴走起こすところだったし反省してる。君が故意的に傷つけられたと思ったらかっとなってしまった。こんなに自分が自制できない人間だったなんて、野木君やルノ君に偉そうに説教しておいてこの有り様は情けないよ」
「俺は嬉しかったけどね。巻き添え食らったローザちゃんには悪いけどさ。でも俺もっと自分のこと大事にするよ、怒ってくれる真紘ちゃんのためにも。だから真紘ちゃんも俺のために誰かを傷付けて自分を責めるのは止めて」
「重盛……」
激情に駆られた瞬間、体が焼けるほど熱く、普段は何重にも鍵をかけて仕舞い込んでいる魔力の扉が開いたような感覚に陥った。このまま体も怒りと共に魔力と一緒に溶けてしまう、そう思った。
頭の中では進んではいけないと警告が鳴っているのに瞳は獲物を捕らえて言うことを聞かない。
重盛の制止がなければ間違いなく屋敷周辺の被害が拡大していただろう。もしかしたら王都ごと吹き飛んでいたかもしれない。それほどの力を自身の中に感じた。
自分の苛烈な一面を知り、真紘は恐ろしくもなった。
敵を憎むよりも自分を愛せと目の前の恋人は優しく説く。
「前にも言ったじゃん。嫌な事あったら相手を睨みつけるよりも真紘ちゃんを見てる方が健全でいいって。だから真紘ちゃんもこっち見ててよ」
両手を絡め取られ、吸い寄せられるように踵を浮かせる。キスをするまであと三センチというところでカタカタと馬車の音がした。真紘がストンと踵を卸すと重盛は手を繋いだまま上下に振った。
「ちゅっとするくらいいいじゃん! 良い雰囲気だったじゃん!」
「駄目だよ、馬車来たよ」
「んなこたぁ分かってんのよ。ヘイヘイ、ワンモア!」
「分かってんのってどういうこと?」
真紘が眉を吊り上げると、重盛は肩からパッと手を離してにこっと笑った。
「そんなこと言ったっけ?」
「……言った」
「ああもうごめんて! 風に乗って香水の匂いしたんだよ。でも真紘ちゃんからキスしてくれることってあんまないし、したかったし、気づかないフリしとこって思ったんだよ!」
自白させられた重盛は耳も尻尾もへなりとさせてメソメソと泣いた。
小声で言いあっている間に馬車が谷の入口に差し掛かり車輪が止まった。
近くに小川があるため、ここで一度馬に水を飲ませるために立ち止まるという予想は見事的中。馬車の中に声をかけていない様子から、マリーは寝ているか気絶させられているのだろう。
小川でバケツに水を汲むポールの後ろから真紘は声をかけた。
「ポールさん。帰りましょう」
驚き足を滑らせたポールは尻もちをついて腰から下が川に浸かった。
「ごっごめんなさい! 驚かせるつもりはなくて」
「いや、真後ろから囁かれたらビビるって」
「遠くから声かけたら逃げられるかもと思って」
「ほどほどの距離感で良くね⁉ 俺とは距離取るのに!」
「いっ! 今のはそういう距離じゃないだろう」
連れ戻しに来たのならば、普通はこんなのほほんとした雰囲気にはならない。
ポールは目の前で繰り広げられる漫才のようなものにすら恐怖を抱いた。
「なぜここに……」
「リドレー男爵からの伝言です。マリーさんにもポールさんにも悪いことをしたと。トランシルヴァ伯爵の婚約はお断りするそうです。一番大事なのは娘と貴方だと仰っていましたよ」
「そんなことができるわけない……。トランシルヴァ伯爵は階級も上で、男爵のリドレー家が断るなんて――」
「そこでローザさんが代わりにご婚約すると仰っています」
「は……? 子爵家に嫁に行くのに何を」
「マリーさんのトランシルヴァ伯爵とのご婚約を知り、慌てて今日の午前中に子爵様に婚約破棄を申し出てきたそうです。集めていた不貞の証拠を突き付けて、獣人である子爵様への嫌がらせ付きでしたが」
あんなに香水を付けていたのも今日が初めてだったのではないかと問えば、ポールはわなわなと震え出した。
重盛がポールを川から引き上げると、真紘は魔法で衣服を乾かした。
現実を受け入れることができない様子のポールは頬を引きつらせたまま真紘に掴みかかった。しかし直前で重盛の尻尾が邪魔をして未遂に終わる。
「そっそうだ! 子爵よりも伯爵の方が階級が上で気にくわなかったから妹の婚約者を横取りしようと思ったんじゃないか⁉」
「いいえ。彼女が元より女性関係にだらしない子爵様に嫁ごうと決めた理由もリドレー男爵家のためと、マリー様とポールさんがご婚約できるようにという配慮からだったそうです。前々からリドレー男爵は冗談で仰っていたそうですね、ローザさんが嫁ぎ家を出たらポールさんをマリーさんの婿にと。それを彼女は本気にしていたんですよ。妹のために自分ができるのはこれくらいだからと」
「そんな……嘘だ……。それなのに俺は騒動が起きて子爵様との婚約も破談になればいいと当て付けのように脅迫状や予告状まで出して、挙句の果てにマリー様まで連れ出したってことなのか……。俺の、俺のやったことって一体なんだったんだ……」
声を押し殺して泣くポールは大きな体を丸めて小さな少年のように見えた。
幼い子に語り掛けるように、真紘はできる限りそっと優しく語り掛ける。
「誰もポールさんのことを怒っていませんよ。どうか全員が幸せになれる方法で結ばれてください。夜の森は決して安全とは言えません。さあ、みんなで屋敷に――」
暗闇の中、ポール、と鈴のような声がした。
真紘と重盛は振り向き、ポールは顔を上げる。
そこには目尻を赤くしたマリーが立っていた。
重盛は、顔を歪めて逃げ出したポールの首根っこを摑まえてマリーの方へと放り投げた。
「わわっ! ちょっと乱暴じゃない⁉」
「だってせっかく真紘ちゃんが乾かしてやったのにまた川に突っ込んで行くんだもん。それに放り投げられた方がマリーちゃんもあいつに駆け寄りやすいっしょ」
真紘が咎めると、抱きしめ合う二人を眺めながら重盛は得意げに口角を上げる。さっきまでキスがどうのこうのと喚いていた人とは思えないほど、その横顔はいつもより大人びて見えた。
「私ね、自分の容姿に自信がなくて、ずっとお姉様が羨ましかった。ポールやお父様がどんなに可愛いって言ってくれても、美しくなろうと努力すらしなかった自分のせいで信じることができなかったの」
「俺はそのままのマリー様が好きなんです。今年も白菜が美味しくできたねって笑う顔が、いつも笑顔で自然体なあなたが、一番美しいんですよ……。勿論、変わることを否定したいんじゃないんです。ただずっと貴女のそばにいたいだけ……」
「ありがとう。私、これからは貴方のためにも自分を受け入れる努力をしたい。自分のことが好きだって堂々と言えるようになりたいよ。与えられた好意を反故にするのは相手にも失礼なことだったってやっと気付いたの。こんなになるまで追い詰めて本当にごめんね」
「マリー様……」
「お願い、ポール。これからもずっとそばにいて」
マリーも少女のようにわんわんと泣いて、思いの丈を全て吐露した。
静かな森に響く泣き声は森の動物たちの興味を引いたようで、モコモコとした羽に覆われた梟が木の上から首を傾げて彼女達を見守っていた。
穏やかな月明かりの元、二組の恋人達は寄り添う。
くっきりと浮かぶフェイスラインをしばらく見つめていると、喉の凹凸がクツクツと揺れた。
「マジでずっと見てるじゃん」
「リクエストにお応えしたまでですが……」
「嫌だなとか怒ったぞーとか思ったらこっち見た方がいいって言ったんだけどな。今何かに怒ってんの?」
怒っているといえばそうかもしれない。頑なにこちらを向かないのは、キスを中断した仕返しといったところだろう。
慈愛に満ちた眼差しを正面から見てみたくなった真紘は重盛の襟をぐいと引っ張るとそのまま頭を抱いて唇を奪った。
そんな強硬手段を取られると思っていなかった重盛は間抜けな声を漏らした。
「真紘さんや、なんで今なんです……?」
「ハッピーエンドだなぁと思ったらしたくなっちゃた。駄目だったか、ごめん」
重盛はダメなことなんてないよ、とつい先ほどと同じ言葉を口にした。
良かったと歯を見せて笑う真紘に、重盛は「俺の美しいものはやっぱり一筋縄ではいかねぇな」と呟き目頭を押さえるのであった。
不審な人物が屋敷に侵入した形跡もない。
目当ての美しい者がローザではなかったのか、はたまたアンノーンが一方的に吹き飛ばされる現場を目撃し、慄いて逃げ去ったのかは不明だ。
未だに臭いがする屋敷の中は重盛にとって毒でしかないため、一旦解散して応接間のバルコニーで落ち合うことなった。重盛は二階程度の高さなら道具など無しに余裕で飛び上ることができる。王城でも窓を破壊して追いかけてきたほどなので、さほど高さは関係ないのかもしれない。
忘れない内にと別れる前に、ローザが重盛に対し害するつもりがなかった事を教えれば、こちらこそ嫉妬して悪かったと眠りこける彼女に謝っていた。
薬の影響でネガティブになっていたと視線を逸らす重盛はあまり触れられたくないようで、気づかないふりをしながら無理しないようにね、と労いの言葉をかけた。
なんてことのない顔をしていたが、話している最中も一度も目が合わなかった。重盛の苦しみは察するに余りある。
次は必ずアンノーンを捕まえてギルドに突き出してやる。
心に群青色の闘志を燃やしながら真紘はローザに触れぬよう浮かせたまま寝室へと運んだ。
玄関前での騒動を報告するため応接間に戻る。
応接間に近づくにつれて人の気配がまるでしないことを不審に思った真紘は駆け足になり、ドアを勢いよく開けた。
そこにはリドレー男爵がぽつんと一人で暗い表情を浮かべ、祈るように両手を握りしめていた。
「戻りました。ローザ様はご無事です」
「そうか、そうか。ローザ、良かった……」
「怪盗アンノーンは撃退しましたが、隕石は引き続き狙うと宣言されてしまったので、ローザ様のご指示に従い玄関の前に置いてきました。昨日今日の執着ではなく、子爵家から遣わされた御者に成りすまし、前々から畑の腰かけ石を狙っていたようです」
「そうか……」
「あの、マリー様やポールさん、従業員の皆さんはどちらに?」
声をかけても返答がない。男爵の肩を叩くと、彼は両目に涙を溜めて絞り出すようにマリーがいなくなったのだと告げた。
「変な臭いがして気分が悪い」と言い出したポールを支えるようにしてマリーはバルコニーに出た。
ポールの祖母が猫の獣人だと聞いていたので、男爵や同僚も彼の嗅覚が人よりも鋭いことを知っていた。重盛と同じく屋敷の中の臭いに当てられたのだろうと誰もが思った。
数分後、聞こえていたはずのマリーの声がしなくなったことに気が付いた従業員が窓を開くとバルコニーは無人で、二人は忽然と姿を消していたという。
従業員総出で探し回っているが、未だに見つかったという報告はない。
アンノーンの言っていたご令嬢の安否というのはローザではなく、マリーを指していたのだとしたら、一枚目の予告状の犯人は、共に姿をくらませたポールの可能性が高い。
真紘はバルコニーへと飛び出した。まっぽけから魔石を取り出して光を灯す。手すりの前でしゃがみ痕跡を探しながら、すぐ下で待機していた重盛に問いかけた。
「重盛、地面に変な足跡残ってない?」
「なになに? 足跡もなにもさっき真紘ちゃんが畑と庭の状態元通りにしたから俺の足跡以外付いてないよ」
暴走しかけて滅茶苦茶にした庭をさっと元通りにしたのが間違いだった。
己の愚行の積み重ねに眩暈がして、真紘は前髪をくしゃくしゃとかき混ぜた。
反省するよりも今は事件解決に集中すべきだ。
理解していても心を切り替えるという作業はそう簡単にはいかない。
もたもたと脳内で自身を叱咤していると待ちきれないといった声が届く。
「ねぇ、よくわかんないけど、俺そっち行っていーのー?」
「あっ、そうだね。どうぞ。絶対に建物の中には入らないでね」
一階からヒュンと飛び上ってきた重盛は器用にも手すりに着地して、両ひざに肘をつき顎を両手で支えた。
ふと彼の足元を見ると、縄が擦れたような跡が付いている。
「なんで前髪ぐちゃぐちゃなん……? 俺の足元ガン見してるけどなんかあんの?」
「うん。ロープが擦れた跡がある。マリーさんとポールさんがこのバルコニーに出たのを最後に行方不明だ。探しに行こう」
「……了解」
逃走手段に用いられた痕跡が自分の足元にあることを理解した重盛は固まった。
窓辺で呆ける男爵に昼間バルコニーに出た人間はいるかと問えば、ポールだけだと涙ながらに答えた。
「それってポール君とマリーちゃんが自ら出て行ったってこと?」
「どうかな。マリーさんだけなら兎も角、君と同じような体格のポールさんも消えているから第三者が連れ去った線は薄そうだ。マリーさんがポールさんに連れ去られた可能性の方が高いんじゃないかな……。ポールさんにとっては誰よりも美しい者はマリーさんだったんだ。妹に責任を押し付け、家を捨てて出て行くローザ様が許せなくて裏切りの花を添えた脅迫状を出したとは考えられない?」
「でもさっき外で話してくれた内容的にはトランシルヴァ伯爵との婚約はマリーちゃんじゃなくてローザちゃんになるんだろ? それなら誘拐したり駆け落ちしたりする必要なくない⁉」
「ローザ様は今の今まで誰にも相談してなかったんだよ。ポールさんもマリー様も、男爵様ですらそのことはまだ知らないんだって……。彼女の真意に気付いているとは到底思えない」
「そりゃやばいわ、すれ違いまくってんじゃん。とにかく早く見つけないと!」
バルコニーの手すりに足を掛けた真紘の腕を男爵は掴んだ。
「娘達の幸せを願うばかり、当の本人達の気持ちを蔑ろにしていた。ポールがそこまでマリーを愛してくれているとは知らず、勝手に婚約を決めて悪いことをした。伯爵様にも子爵様にも私から断りを申し出ます。一番大切なのは娘と従業員達だ。どうか、二人をお願いします」
「任せてください」
先行して飛び上る重盛を摑まえると、真紘は彼を抱え直して夜空へと舞い上がった。
上空から下を見渡しても眠りについた大地が映るだけ。
王都の中心部は夜も煌々と灯りが燈っている。知人に目撃されれば連れ戻されるかもしれない。逃走経路としては暗い森の中が妥当だろう。
厩舎を確認したところローザが借りていた子爵家の馬車がなくなっていた。アンノーンは身一つで逃走したため、始めからポールにあげるつもりだったのかもしれない。
いなくなった時間と馬の走行距離をざっくり計算すると駈足だとしても十キロ程度しか離れていないはず。真紘達は隣街へと続く谷の狭間に当たりをつけて待ち構えることにした。
近くを流れる小川の影響か、降り立った足元の土は少し柔らかい。苔に足を取られて転びかけると当然のように重盛に抱きかかえられた。
「うう、面目ない。今日なんか駄目な日だ」
「ダメなことなんてないよ。それにそういう日があってもいいじゃん」
完全に冬毛になった尻尾はモコモコとしていて縋りつきたくなる。ただでさえ尻尾や耳に弱い真紘が顔の前で揺れる誘惑に打ち勝つことは極めて困難だ。
「嗚呼~尻尾で顔を撫でるのやめて、これ以上甘やかさないで。この調子で推測がはずれて来なかったらどうしよう。もう隣街に行っちゃったかな」
「んや、リドレー家の厩舎は農作業用の馬しかいなかったし、運搬は別の会社にお願いしてたらしいから、ポール君も馬車の運転は初心者マークっしょ。まだ森の中じゃないかなぁ。俺は真紘ちゃんが起きてられるかの方が心配だね」
「まだ二十二時前じゃないか、流石に外で寝たりしないよ」
「えー前に森の中で一回寝落ちしたじゃん。俺がタイニーハウス設置してる間に一人でスヤスヤ。しかも大きな栗の木の下で。童謡かと思ったんだけど?」
「それも本当にごめんってば……。さっきも魔暴走起こすところだったし反省してる。君が故意的に傷つけられたと思ったらかっとなってしまった。こんなに自分が自制できない人間だったなんて、野木君やルノ君に偉そうに説教しておいてこの有り様は情けないよ」
「俺は嬉しかったけどね。巻き添え食らったローザちゃんには悪いけどさ。でも俺もっと自分のこと大事にするよ、怒ってくれる真紘ちゃんのためにも。だから真紘ちゃんも俺のために誰かを傷付けて自分を責めるのは止めて」
「重盛……」
激情に駆られた瞬間、体が焼けるほど熱く、普段は何重にも鍵をかけて仕舞い込んでいる魔力の扉が開いたような感覚に陥った。このまま体も怒りと共に魔力と一緒に溶けてしまう、そう思った。
頭の中では進んではいけないと警告が鳴っているのに瞳は獲物を捕らえて言うことを聞かない。
重盛の制止がなければ間違いなく屋敷周辺の被害が拡大していただろう。もしかしたら王都ごと吹き飛んでいたかもしれない。それほどの力を自身の中に感じた。
自分の苛烈な一面を知り、真紘は恐ろしくもなった。
敵を憎むよりも自分を愛せと目の前の恋人は優しく説く。
「前にも言ったじゃん。嫌な事あったら相手を睨みつけるよりも真紘ちゃんを見てる方が健全でいいって。だから真紘ちゃんもこっち見ててよ」
両手を絡め取られ、吸い寄せられるように踵を浮かせる。キスをするまであと三センチというところでカタカタと馬車の音がした。真紘がストンと踵を卸すと重盛は手を繋いだまま上下に振った。
「ちゅっとするくらいいいじゃん! 良い雰囲気だったじゃん!」
「駄目だよ、馬車来たよ」
「んなこたぁ分かってんのよ。ヘイヘイ、ワンモア!」
「分かってんのってどういうこと?」
真紘が眉を吊り上げると、重盛は肩からパッと手を離してにこっと笑った。
「そんなこと言ったっけ?」
「……言った」
「ああもうごめんて! 風に乗って香水の匂いしたんだよ。でも真紘ちゃんからキスしてくれることってあんまないし、したかったし、気づかないフリしとこって思ったんだよ!」
自白させられた重盛は耳も尻尾もへなりとさせてメソメソと泣いた。
小声で言いあっている間に馬車が谷の入口に差し掛かり車輪が止まった。
近くに小川があるため、ここで一度馬に水を飲ませるために立ち止まるという予想は見事的中。馬車の中に声をかけていない様子から、マリーは寝ているか気絶させられているのだろう。
小川でバケツに水を汲むポールの後ろから真紘は声をかけた。
「ポールさん。帰りましょう」
驚き足を滑らせたポールは尻もちをついて腰から下が川に浸かった。
「ごっごめんなさい! 驚かせるつもりはなくて」
「いや、真後ろから囁かれたらビビるって」
「遠くから声かけたら逃げられるかもと思って」
「ほどほどの距離感で良くね⁉ 俺とは距離取るのに!」
「いっ! 今のはそういう距離じゃないだろう」
連れ戻しに来たのならば、普通はこんなのほほんとした雰囲気にはならない。
ポールは目の前で繰り広げられる漫才のようなものにすら恐怖を抱いた。
「なぜここに……」
「リドレー男爵からの伝言です。マリーさんにもポールさんにも悪いことをしたと。トランシルヴァ伯爵の婚約はお断りするそうです。一番大事なのは娘と貴方だと仰っていましたよ」
「そんなことができるわけない……。トランシルヴァ伯爵は階級も上で、男爵のリドレー家が断るなんて――」
「そこでローザさんが代わりにご婚約すると仰っています」
「は……? 子爵家に嫁に行くのに何を」
「マリーさんのトランシルヴァ伯爵とのご婚約を知り、慌てて今日の午前中に子爵様に婚約破棄を申し出てきたそうです。集めていた不貞の証拠を突き付けて、獣人である子爵様への嫌がらせ付きでしたが」
あんなに香水を付けていたのも今日が初めてだったのではないかと問えば、ポールはわなわなと震え出した。
重盛がポールを川から引き上げると、真紘は魔法で衣服を乾かした。
現実を受け入れることができない様子のポールは頬を引きつらせたまま真紘に掴みかかった。しかし直前で重盛の尻尾が邪魔をして未遂に終わる。
「そっそうだ! 子爵よりも伯爵の方が階級が上で気にくわなかったから妹の婚約者を横取りしようと思ったんじゃないか⁉」
「いいえ。彼女が元より女性関係にだらしない子爵様に嫁ごうと決めた理由もリドレー男爵家のためと、マリー様とポールさんがご婚約できるようにという配慮からだったそうです。前々からリドレー男爵は冗談で仰っていたそうですね、ローザさんが嫁ぎ家を出たらポールさんをマリーさんの婿にと。それを彼女は本気にしていたんですよ。妹のために自分ができるのはこれくらいだからと」
「そんな……嘘だ……。それなのに俺は騒動が起きて子爵様との婚約も破談になればいいと当て付けのように脅迫状や予告状まで出して、挙句の果てにマリー様まで連れ出したってことなのか……。俺の、俺のやったことって一体なんだったんだ……」
声を押し殺して泣くポールは大きな体を丸めて小さな少年のように見えた。
幼い子に語り掛けるように、真紘はできる限りそっと優しく語り掛ける。
「誰もポールさんのことを怒っていませんよ。どうか全員が幸せになれる方法で結ばれてください。夜の森は決して安全とは言えません。さあ、みんなで屋敷に――」
暗闇の中、ポール、と鈴のような声がした。
真紘と重盛は振り向き、ポールは顔を上げる。
そこには目尻を赤くしたマリーが立っていた。
重盛は、顔を歪めて逃げ出したポールの首根っこを摑まえてマリーの方へと放り投げた。
「わわっ! ちょっと乱暴じゃない⁉」
「だってせっかく真紘ちゃんが乾かしてやったのにまた川に突っ込んで行くんだもん。それに放り投げられた方がマリーちゃんもあいつに駆け寄りやすいっしょ」
真紘が咎めると、抱きしめ合う二人を眺めながら重盛は得意げに口角を上げる。さっきまでキスがどうのこうのと喚いていた人とは思えないほど、その横顔はいつもより大人びて見えた。
「私ね、自分の容姿に自信がなくて、ずっとお姉様が羨ましかった。ポールやお父様がどんなに可愛いって言ってくれても、美しくなろうと努力すらしなかった自分のせいで信じることができなかったの」
「俺はそのままのマリー様が好きなんです。今年も白菜が美味しくできたねって笑う顔が、いつも笑顔で自然体なあなたが、一番美しいんですよ……。勿論、変わることを否定したいんじゃないんです。ただずっと貴女のそばにいたいだけ……」
「ありがとう。私、これからは貴方のためにも自分を受け入れる努力をしたい。自分のことが好きだって堂々と言えるようになりたいよ。与えられた好意を反故にするのは相手にも失礼なことだったってやっと気付いたの。こんなになるまで追い詰めて本当にごめんね」
「マリー様……」
「お願い、ポール。これからもずっとそばにいて」
マリーも少女のようにわんわんと泣いて、思いの丈を全て吐露した。
静かな森に響く泣き声は森の動物たちの興味を引いたようで、モコモコとした羽に覆われた梟が木の上から首を傾げて彼女達を見守っていた。
穏やかな月明かりの元、二組の恋人達は寄り添う。
くっきりと浮かぶフェイスラインをしばらく見つめていると、喉の凹凸がクツクツと揺れた。
「マジでずっと見てるじゃん」
「リクエストにお応えしたまでですが……」
「嫌だなとか怒ったぞーとか思ったらこっち見た方がいいって言ったんだけどな。今何かに怒ってんの?」
怒っているといえばそうかもしれない。頑なにこちらを向かないのは、キスを中断した仕返しといったところだろう。
慈愛に満ちた眼差しを正面から見てみたくなった真紘は重盛の襟をぐいと引っ張るとそのまま頭を抱いて唇を奪った。
そんな強硬手段を取られると思っていなかった重盛は間抜けな声を漏らした。
「真紘さんや、なんで今なんです……?」
「ハッピーエンドだなぁと思ったらしたくなっちゃた。駄目だったか、ごめん」
重盛はダメなことなんてないよ、とつい先ほどと同じ言葉を口にした。
良かったと歯を見せて笑う真紘に、重盛は「俺の美しいものはやっぱり一筋縄ではいかねぇな」と呟き目頭を押さえるのであった。
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せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
VRMMOで追放された支援職、生贄にされた先で魔王様に拾われ世界一溺愛される
水凪しおん
BL
勇者パーティーに尽くしながらも、生贄として裏切られた支援職の少年ユキ。
絶望の底で出会ったのは、孤独な魔王アシュトだった。
帰る場所を失ったユキが見つけたのは、規格外の生産スキル【慈愛の手】と、魔王からの想定外な溺愛!?
「私の至宝に、指一本触れるな」
荒れた魔王領を豊かな楽園へと変えていく、心優しい青年の成り上がりと、永い孤独を生きた魔王の凍てついた心を溶かす純愛の物語。
裏切り者たちへの華麗なる復讐劇が、今、始まる。
裏乙女ゲー?モブですよね? いいえ主人公です。
みーやん
BL
何日の時をこのソファーと過ごしただろう。
愛してやまない我が妹に頼まれた乙女ゲーの攻略は終わりを迎えようとしていた。
「私の青春学園生活⭐︎星蒼山学園」というこのタイトルの通り、女の子の主人公が学園生活を送りながら攻略対象に擦り寄り青春という名の恋愛を繰り広げるゲームだ。ちなみに女子生徒は全校生徒約900人のうち主人公1人というハーレム設定である。
あと1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える俺には厳しすぎるゲームではあるが可愛い妹の為、精神と睡眠を削りながらやっとの思いで最後の攻略対象を攻略し見事クリアした。
最後のエンドロールまで見た後に
「裏乙女ゲームを開始しますか?」
という文字が出てきたと思ったら目の視界がだんだんと狭まってくる感覚に襲われた。
あ。俺3日寝てなかったんだ…
そんなことにふと気がついた時には視界は完全に奪われていた。
次に目が覚めると目の前には見覚えのあるゲームならではのウィンドウ。
「星蒼山学園へようこそ!攻略対象を攻略し青春を掴み取ろう!」
何度見たかわからないほど見たこの文字。そして気づく現実味のある体感。そこは3日徹夜してクリアしたゲームの世界でした。
え?意味わかんないけどとりあえず俺はもちろんモブだよね?
これはモブだと勘違いしている男が実は主人公だと気付かないまま学園生活を送る話です。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
過労死で異世界転生したら、勇者の魂を持つ僕が魔王の城で目覚めた。なぜか「魂の半身」と呼ばれ異常なまでに溺愛されてる件
水凪しおん
BL
ブラック企業で過労死した俺、雪斗(ユキト)が次に目覚めたのは、なんと異世界の魔王の城だった。
赤ん坊の姿で転生した俺は、自分がこの世界を滅ぼす魔王を討つための「勇者の魂」を持つと知る。
目の前にいるのは、冷酷非情と噂の魔王ゼノン。
「ああ、終わった……食べられるんだ」
絶望する俺を前に、しかし魔王はうっとりと目を細め、こう囁いた。
「ようやく会えた、我が魂の半身よ」
それから始まったのは、地獄のような日々――ではなく、至れり尽くせりの甘やかし生活!?
最高級の食事、ふわふわの寝具、傅役(もりやく)までつけられ、魔王自らが甲斐甲斐しくお菓子を食べさせてくる始末。
この溺愛は、俺を油断させて力を奪うための罠に違いない!
そう信じて疑わない俺の勘違いをよそに、魔王の独占欲と愛情はどんどんエスカレートしていき……。
永い孤独を生きてきた最強魔王と、自己肯定感ゼロの元社畜勇者。
敵対するはずの運命が交わる時、世界を揺るがす壮大な愛の物語が始まる。
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
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