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始まりの前
彼等
しおりを挟む一台の馬車と護衛騎士達が魔物の軍勢に襲われていた。
その出来事を遠く異次元から眺めていた彼等は、その偶然では無く必然の事柄を見詰め、ニヤリと笑った。
「物の見事に奇襲を掛けられているよな」
『当タリ前デす。かワらなイモノは変わらナいのデスカら』
発する言葉に返す言葉。
彼等は、襲われている馬車の人達を見て助けると決めた。
それが理だったから、彼等はその場に降臨した。
馬車と騎士達の周辺には結界が張られていたが、それも何時まで保つか不明だ。
騎士達が魔族を少しずつ倒して、馬車が結界ごと移動するを繰り返してはいるが、それも時間の問題だと彼らは見ないまでも知っていた。
そんな全てを知り得ている彼等が、騎士達の結界内に空間を切り裂いて現れたのだから、騎士達が酷く驚くのも無理は無い。
焦った騎士達が、彼等の内の一人に剣を突き付けると、それに怯む事無くどこか無機質に思える口調で、彼等の内の一人が騎士達に告げた。
「安心しな、俺は魔族じゃない、人間だ。そして、あんた達に危害を加える気も無い。あんたら、聖女様御一行だろ? 助太刀するよ。相手は魔族だ、此処は俺達に任せろ」
男はそう言ってフッと笑った。
『サフィ、ワタシは馬車のヒトニ状況説明シテ来ますねサッサとアレラをケチラシテ下さい』
「はいはい、解ってますって。サッサとすませるから… 」
男は、隣で突っ立っている真っ黒で光沢のあるオベリスクに、肩をすくめて応えた。
驚愕したのは、騎士達である。
何にか?
オベリスクにである。
不思議な発音で、長さ160センチ、幅七十センチ、奥行き二十センチ程の長方形の物体が喋ったのだ。
驚くなと言う方が無理がある。
黒いオベリスクの両端に一本ずつ上1/4を残して筋が入って滑らかな動きでオベリスクが馬車に向かって移動し始めた。
それに反応したのは独りの騎士。
オベリスクを足止めしようと動くのを寸前でサフィと呼ばれた男に止められた。
「心配いらない。あれは俺の相棒のキットって言うんだ。危害なんて加えない。やるならとっととやってるさ」
そう良いながら、サフィは天に手を差し伸べた。
「極大魔法、盾と矛」
サフィが一言発すると、天空の青空を背景に大きな歯車達と文字盤が現れた。
それはまるで内部が見える時計のように見える。
だがそれらは時計などでは無い。
その証拠に、中心に時を刻むはずの秒針が存在していなかったのだ。
歯車の一つがカチリと動く度、噛み合った歯車がカチリと動く。
総ての歯車が動き始めると、文字盤が右回りに回転し始めた。
その姿は銀色に輝き美しい。
それは見る者総てを魅了する程の美しさだった。
そして、誰も目にしたことが無い魔法だった。
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