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北の大森林の主
急患④
しおりを挟む「さて、この先の君達の予定だけど…… 」
アイセンレイトはそう言うと自身で入れたお茶を啜った。
彼が両手で持っているのは、筒状の陶器で出来た厚みの有る湯呑みと言われる物で、目前には大きな急須が置かれている。
勿論の事だが、中には鮮やかな緑色の液体が、湯気を立てている。
日本人にはお馴染みの『緑茶』である。
勿論、この世界では貴重なお茶の葉である。
因みに、裏の畑でアイセンレイトが作っている自家製のお茶の葉である。
逸れを客人に振る舞えば、恐る恐る口にしている。
緑茶は紅茶以上にリラックス効果が有るのか、飲めばほっこりする。
それは世界が変わっても同じであった。
アイセンレイトは、湯飲みの中の茶柱を眺めつつ、騎士達に言った。
「あの患者だが、完全に傷が塞がる前に義手と義足を着ける為の手術をするよ。出来れば意識が朦朧としている間が良いね。神経と直結させて動く奴にする予定だけど……どうする? 」
そして、ずずーっとお茶を啜る。
勿論、騎士達の返事は「そんな便利なものが有るのか!? 」と、「お願いします! 」だが、
「四つで共通金貨4000万ってのはきっと払えないだろうから、君達全員、僕の手足になれ」
そう言ったアイセンレイトは、彼等に現実と妥協案を示唆した。
随分と甘い提案だと、自分でも思いながら。
けれど、彼等を野に放逐しても王国から後を追われその火の粉はアイセンレイト自身にも降りかかる。
逸れを考えれば妥当な線かとも思った。
訓練は必要だが、その辺りはアイセンレイトとレイがいるから問題は無いと言えた。
「つっ、ありがとう、御座います…… 」
聡明な副団長は、いち早くアイセンレイトの思惑を理解して頭を下げたのだった。
「月光、貴方に頼みが有る」
空中に放ったアイセンレイトの声が、余韻無くかき消える。
普通に喋ったようでそうではない。
何となくだが、ラスティエルは首を傾げた。
すると直ぐに、その疑問が解決する出来事が起きた。
リビングの空いた空間が縦に割れて其処から人影が滑り出てきたのだ。
そりゃあ、皆、驚いた。
そんなの見たことが無い。
空間から突如人が現れるなんて思いもしなかったのだから。
出て来た人は驚く程綺麗な男だった。
ただ、アイセンレイトの美貌からすれば、数段落ちるが。
月の光を集結させた色を纏った髪は、短髪でツンツンと尖った形にセットされていて、くりっとした瞳は蒼く輝いている、少年を思わせる青年だ。
「お久しぶりっすっ! 坊ちゃん!! うっわぁ……、一段と薬師様そっくりになってますよねっ、ねっ」
と、話す言葉とノリは至極残念、としか言いようが無かった。
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