婚約破棄された転生令嬢は、魔の森の銀の薬師に溺愛される

黄色いひよこ

文字の大きさ
54 / 86
動き出す

アイセンレイトと伏羲②

しおりを挟む

伏羲は、青く広がる空を見上げ思案をしていた。

何をどう伝えようかと、考えあぐねているのだ。

己の紡いだ時間が物語りと言う形で歴史として残っている。

何だかこそばゆい。

過去には信頼の置ける仲間が居て、霊獣が居て戦わなければ成らない理由があった。

アイセンレイトが言った『封神演義』の世界は、一言で言えば神仙や導師達の殺し合いの定を踏んだ、女禍を退治するまでの物語だ。

伏羲独りでは、女禍に勝つ術は無かった。

それに、妹にして妻でもある女禍を滅ぼさねばならない理由だって、伏羲にしては辛い事だったに違いない。

女禍は、我が儘すぎた。

己が思い描いた世界に地球がならないから、人間が理想から遠く外れるから、だから幾度も壊して作り直してを繰り返した。

伏羲は女禍を窘めたが、彼の思いは彼女には全く響かなかった。

だから伏羲は決心したのだ。

女禍を滅ぼして、己も滅ぶ事を。

けれど、逸れを是としなかった者が居た。

本当にそれで良いのかと。


『でもぉん、本当にそれで良いのぉん? 太公望ちゃん…… 』


「そう言った妲己のせいで、儂はこうやって生き残ってしもうた。地球に溶け込んだ妲己のせいでのぅ…… 」

「其処までは僕も知っている。父の屋敷には、地球から持ち込んだ数多の書物が有るからね。だから解らないのはその先だよ。地球に溶けた妲己が此処に来ている理由」


そう言って目を細めるアイセンレイトに、太公望は垂れた釣り糸を眺めながら言った。


「妲己がその一部を切り離してでも此処に来た理由は、女禍の欠片が此処へ堕ちたからだと思う。あれの総てが消滅した訳では無かった。何の力が作用したのかは解らぬが、かつて女禍であった者の欠片がこの大地に堕ちた。勿論、只の欠片じゃ。其れだけでは何にもならん。取り込んでも少しの力にしかならん代物じゃて。だから、妲己が此処に来た本当の目的が解らんのだ…… 」


大きく溜め息を吐いた太公望は、餌も着いてない釣り糸が引いたのを見て、フッと笑った。


「どちらにしろ、妲己が来ている事には変わり無いと言う訳だ…… 」

「うむ…… 」


アイセンレイトが言うと、逸れを聞きもって、太公望が竿を引く。

すると糸の先には立派なニジマスが跳ねていた。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】

日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。

有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。 選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。 涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。 彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。 やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...