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Prologue
しおりを挟むエレベーターで下って地下二階。
長い廊下に点在する扉は重いのか軽いのが、見た目では判断出来そうにない無機質感を漂わせている。
先頭を歩く制服姿の男と、その後ろを着いて歩く男。
どちらも無言だ。
否。
よく見ると、先頭を行く男は無言を通しては居るものの、心なしか落ち着きが無いような気もする。
それは、長い廊下の先、漸く到着した扉の上部に付いている、プレートを見たせいなのか。
先頭の男が立ち止まった為に、後ろを行く男も同じく立ち止まった。
「ご遺体は此方に安直しております。確認と言いましても、ご遺体の損傷が激しく、私共といたしても歯の治療痕が一致した為ご連絡出来た次第ですので………… 」
其処までまくし立てるように一息で話した男は、扉を開けて後ろの男を招き入れた。
── 何度見ても薄気味悪い男だな ──
それが制服姿の男が、後ろを着いて来た男に抱いた印象。
肌の色は紙のように白く、唇は紅を刺したかのように赤い。
切れ長の目は、アイラインを引いたようにくっきりとしているのに、はめ込まれている瞳はビー玉のようで、何も映していないように見えた。
イケメンと言うより、綺麗な顔立。
そのせいか、言葉を発しなければ無機質な印象を受けた。
まぁ、一言も発していないのだから、第一印象なんてこんなものだろう。
「ご遺体はかなり損傷が激しく、確認していただくのは酷な話なのですが、ここは申し訳有りませんが……… 」
警官の言う事に、男は手を挙げて制した。
解っている。
そう言いたげに。
「すいませんが、独りにして頂けませんか? 」
此処にきて、男が初めて言葉を口にした。
低く過ぎない。
どちらかと言えば、高い部類に入る滑らかいテノール。
歌を歌えば、そう言っても良い音域の声だ。
話し声なのに聞きほれる。
そんな男の声に、警官は、耳を奪われた。
「どうしましたか………? 」
警官は、ハッとする。
── 何やってんだ、俺は ──
自問自答して彼は慌てた。
「外に居ますので、何かあったら呼んで下さい」
警官はそう言って慌てて重い扉を開いて出て行った。
男を再び見る事無く─── 。
ガチャっと閉じた扉に、男の肩が揺れる。
2、3 歩前に出て、頭から被せられて居る遺体の布の端を、指で摘まむ。
逸れをゆっくりと捲れば、警官が言った通りの無残な遺体が現れた。
普通なら、身体ごと目を反らすか、胃からせり上がって来た物を吐き出す。
普通の精神を持つ者なら。
けれど男は違ったようだ。
「ざま、無いよな。亜依 」
目を反らさずに見据えられるのは、検死官とこの男位か。
そう言っても過言では無かろう。
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