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黄金を纏し少女
⑦
しおりを挟むイシスの揺れ動く心が、全て御見通しだとでも言うのか、女性は頷くとイシスに語り出した。
「よくお聞きなさい。イシス。貴女は明日、この城を出て、街へ行くのです。」
「街へ……ですか?」
女性はこくりと頷くと、イシスを一瞥し、話を続けた。
「街で貴女は『青碧の魔術師』を探し出さなければなりません」
「『青碧の魔術師』……そんなの、無理です! だって、かの人は伝説上の人物です! 実在するはずがありません!」
そう叫ぶイシスに女性は、悲しげに顔を歪ませる。
「忘れてしまったの? 何時も夢に見て、貴女と共に過ごしていた少年は、覚えている?」
イシスは、弾かれた様に顔を上げる。
それは、何時から見始めたのか定かではない夢。
最初にその少年と出会ったのは、精巧に造られた花園の中だった。
「君は、だあれ?」
「私? 私はね、イシスって言うの」
そんな出会いから今まで、頻繁ではなかったが、彼の夢を見る様になった。
会う場所は何時も同じ花園で、イシスは会う度に名も知らぬ彼と話し、彼に惹かれて行った。
その彼が。
『あの男の子が青碧の魔術師?』
「あなたの言いたい事が、よく解りません……。だって彼は私とあまり歳が変わりませんし……」
「貴女の夢の中の彼はね。その内解るでしょうけど、彼は、貴女の知る彼と少し違うの。それから、今もこの世界にちゃんと生きているわ。私にとっては、伝説の魔術師でも何でも無い人だけど……」
遠い目をして懐かしむ彼女の顔が、優しく和んでいる。
イシスは、何故かとても女性の事が羨ましくって仕方がなくなっていた。
彼女は、しばらくしてからイシスを認め、申し訳なさそうに笑った。
「ごめんなさい。昔を懐かしんでしまっていたわ。とにかく貴女は街で彼に会う事。彼は昨日、この街に、着いた所よ」
「でも、どうやって探したら……」
「闇雲でも良いの。探しなさい。そうしているうちに、追手が貴女に掛かるわ。逃げて。逃げて、逃げて、そして最初に出会う人が、彼よ」
「その様な方法で、本当に会えますの? 」
「必ず出会うわ。貴女と彼は、そうなの。そう言う運命なのよ。彼は知ってのとおり、青銀の髪と青碧の瞳を持っているわ。あの輝きは今でも変わらない。それを目印にしなさい。私は、亡くなる時、あの人に約束したの …… 。生まれ変わったら、必ず貴方にもう一度、出会うから……そして、もう一度……と………い………」
急に彼女の声が小さくなって行く。
そして、遠ざかっていく。
「待って!! 話がまだ終わっていません!」
「貴女が……目覚めようとしているの……」
「待って!! せめて名前を、名前を教えて下さい!!」
「私は、セレナ……『青碧の魔術師』の、ただ1人の……戦乙女……。あの人の側に居てあげて……何があっても側に……」
かろうじて聞き取れた、彼女の声。
イシスは、そこで目が覚めた。
「セレナ……。戦乙女……もう一人の私……」
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