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黄金を纏し少女
⑨
イシスの顔が益々赤くなり、締め上げる力が増していく。
『あぁぁ……やだっ、もう私、笑われているではないですかっ……! 』
「失礼」
シュリのクスクス笑いがピタリと止まる。
次の瞬間、彼からまた、表情が剥がれ落ちた。
そのまま能面のような顔付きで、シュリがイシスに話掛ける。
「それ、そいつを放してやってくれないか? 死にはしないが窒息はする」
イシスは、彼女の膝元を指差すシュリと、自身の膝元を交互に見やって漸く自分がロイの首を絞めていた事に気付いた。
慌ててロイから手を離す。
ロイがイシスの膝の上でくたっと、ひっくり返った。
「あぁぁぁ! ごめんなさい! ロイちゃん!!」
慌てたイシスは、続けざまに膝からロイを落としかけて、あわやと言う所をロイは、シュリの手で保護された。
保護したロイをシュリが一撫ですると、ムクリと彼が起き上がる。
「ごめんなさい。ロイちゃん」
イシスがロイに謝り、ロイはイシスの謝罪を受け入れると。
この場はそれで、修まった。
「姫。一つ聞いてもいいか?」
「はい。何なりと」
シュリが神妙な顔で問い掛けて来るので、思わず背筋がピンと張る。
イシスは、何を問われても 包み隠さす話為、じっとシュリを見つめ、じっと話し出すのを待ち続けた。
「では姫に聞く。貴女は青碧の魔術師の存在をセレナという女性を通して知ったと言うんだね」
「はい。確かに彼女は、セレナと名乗りました。間違いありません」
「そうか……」
シュリが神妙な顔で考え込む。
そして…… 。
彼は唐突に。
愛おしむ様に…… 。
ふわりと微笑した。
この微笑みだけは、彼の本心から来る笑み。
その証拠に……
ドキン!!
イシスの心を虜にしてしまった。
彼が唯一、人に戻れるのは、セレナとの優しい時間の想い出だけだった。
シュリの何とも言えぬ優しい表情に、イシスは胸を高鳴らせる。
『私にも、向けて欲しいな。あのような微笑みを…… 。セレナさんが、羨ましいです。私は……この気持ちは…………一目惚れという恋なのでしょうか? それとも、セレナさんの心の影響を、受けているだけなのでしょうか……?』
心が何処か、暗闇に堕ちて行く錯覚に襲われた時、イシスは自分の名を呼ばれる事で、正気に返る事が出来た。
「姫? イシス姫」
「あっ!! はっ……はいっ!!」
「大丈夫か? 何処か具合でも悪いのか?」
心配しているのか、いないのかシュリの声音が重くて、冷たい。
「大丈夫です。何とも有りません」
「そうか? ならいいんだが……」
シュリは、セレナの事を思い出すと共に、イシスの事もちゃんと見ていた。
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