【完結】青碧の魔術師~黄衣の王と黄金の姫君~

黄色いひよこ

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「シュリさま」



恥ずかしがったイシスがシュリの膝の上に座ったままその胸にしがみつき、顔を埋める。



「ずーっと逢いたかったです」

「うん」



シュリは、抱きしめたりはしなかった。

その代わりに、イシスの柔らかな髪の手触りを確かめるように、撫でている。



「ずっと、ずーっと、貴方に逢えたら言いたかった言葉が有るんです」



そう言いながら、イシスはシュリの胸元をギュッと両手で握り締める。



「良いよ。言って」



シュリの促す言葉に、イシスは、勇気を振り絞って顔を上げた。

うるうると瞳を滲ませながら、花が綻ぶような笑顔を見せて、彼女ははっきりとシュリに聞こえるように言った。



「ただいま………シュリ。愛しい私の旦那様。沢山待たせてしまってごめんなさい……… 」



シュリが、目を見開く。

シュリを見詰める瞳が、イシスがシュリと出逢った事で、完全にセレナと一つに成った事を物語った。


逸れを、シュリが汲み取ったのは、言うまでも無いだろう。





「あぁ~、もう。何故君は、自分から追い込むような事を言うんだ。そんな事言われたら………俺は……… っ、」



苦しそうに呻くシュリに、イシスはギュッと強く強く彼を抱きしめる。

シュリも、恐る恐るだがそっとイシスを抱きしめてみた。



「俺は歳を取らないんだぞ。また、お前だけが老いて行くんだぞ」

「今度は二人で探しましよう。少しでも一緒に居られる方法を。私、本当は貴方を置いて逝きたく無いの。同じ時間を生きていきたいの。漸くその決心がついたから。だから、探しましょうね」




シュリの瞳が珍しく困惑に揺れる。

イシスは知らない。

本当はその方法が有ると言う事を。

シュリも知っているその方法は禁忌の法。

やってはいけない事。

触れてもいけない事。


本心では嬉しい申し出だったが、手放しでは喜べない。



『無理だ。俺には出来ない……… 』



「見つけられたら、いいな……… 」




シュリはその顔に、処世術の笑顔を貼り付けた。
 



「見付けられます。きっと。この世界には、精霊も、神様も、魔法使いも居るんですもの。どなたかが何かをご存知の筈。それに、此処には魔術師様もいらっしゃいますし……… 」



イシスの言葉に、シュリはクスリと笑う。

シュリの破壊的な微笑みは、色気を纏ってイシスの心を鷲掴みにし、翻弄する。

どきどきと心臓を打ち鳴らし仰け反るイシスと逸れを見て僅かに笑むシュリ。

その口元にイシスには分かりにくいように貼り付けた笑みは、所謂、アルカイックスマイルと言うものだった。



「そうだねぇ……… 。でも、魔術には制限が有るからね。難しいなぁ……… 」

「制限? さっきも言ってましたね」



シュリの言葉に、イシスがコテンと首を傾げた。

その仕草が愛くるしい。

今度はイシスが攻め込む番か。

そのイシスの可愛い所作はシュリにめまいを覚えさせた。

うん、どっちもどっちだ。




はぁ、18歳の破壊力って半端ねぇ…………。



なんて事を呟くシュリだが、イシスは気にもとめない。

それどころか、にっこりと微笑んだ。

是はこれで、シュリとは違った破壊力を秘めていた。


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