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契約
⑦
しおりを挟む「私、昔々はシュリさま専属の護衛も兼ねていましたでしよう。其れなのに実は、余りシュリさまの仕事内容把握していなかったんですよね。自分で言うのも何なんですが、セレナさん『脳筋的』な所が有りましたから」
イシスの告発に、シュリはクツクツと笑う。
『青碧の魔術師』の『戦乙女』は、セレナ=タルフィ=アーカイヴと言うアーカイヴ公爵令嬢だと文献には書かれている。
正確には、『ザイラス魔術師、魔女名鑑』と、いう書籍だ。
名前の通り、魔術師、魔女の二つ名と本名、護衛騎士の名前が記されいる名簿なのだが、コレがクセモノだった。
勿論、今では全く役立たずな書籍だ。
「確かに。俺がどんな研究をしてたかなんて、説明しようにも理解出来ないよな。イシスでも多分無理だ。でも、まあ、『魔法使い』と『魔術師』の違い位は話しておいても良いか。契約する意味の説明にもなるし…… 」
最後の方は呟きに近い言葉で。
シュリは自身の膝の上のイシスを見て微笑んだ。
勿論、処世術としての微笑みであった。
「そうだな、魔法使いは個人の身の内に内包する魔力を糧に、火、水、風、土、光、闇の、6大元素を魔力で練り上げて作動させる者達の総称で、魔力量と発動させる器に左右される術師だが、魔術師は違う。俺達魔術師は、学問を主体とし、世界に散らばる材料と言える物質を掛け合わせて、物を作る言わば職人のようなものだ」
「う~ん。職人さんですか?」
「あぁ、そうだ。分かり易く例えれば、薬師って、知識を元に薬草を取ってきて煎じて薬に加工するよな。魔術師も同じ原理なんだよ。ただ、魔術師はもっと突っ込んだ事をする。身体を治す人でも、魔術師は沢山の専門分野に別れているんだ」
「はぁ……… 。そうなんですね。で、其処で何故契約云々に成るのでしょうか?」
イシスが目をしばたたせ、首を傾げた。
思わず額にチュッとしたくなったシュリだったが、かろうじて踏みとどまる。
何だか、シュリのキャラか崩壊しそうだ。
これぞ破竹の勢いと言うのか(うん、違うな)。
踏みとどまって、シュリは続きを話し始めた。
「はぁ………。」
息を吐いて気を取り直すと、漸く続きをかたり始めた。
「魔術師の技は殆ど全て『ロストテクノロジー』と言われる代物でね、今現在、使える人は居ないに等しいんだよ。でも、魔術師としての知識があって、学びたいと、本気で思う者が魔術師の弟子に成ったとする。弟子自身の能力にも寄るが、教えた魔術をその弟子も使う事が出来るようになる」
「普通、そうですわね。ロストテクノロジー云々は別として、習えば身に付くのは、普通の事ですわ」
益々解らないと首を傾げるイシスに、シュリは苦笑せざるお得ない。
「誰もが習得可能なんだよ。学問だから。そして、知識と材料さえ有れば目的の物を作成出来る。そして、作られる物は全て『ロストテクノロジー』に分類される。そして、造られた逸れらはただの物でしかない。誰もが扱い方さえ解れば使える代物だ。善悪どちらにも転ぶ」
其処まで言って、シュリはイシスを見た。
険しい顔をしているが、聡明で美しい。
彼女の為に己の知識をフル活用する。
その決断に間違いは無かったとシュリは思った。
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