【完結】青碧の魔術師~黄衣の王と黄金の姫君~

黄色いひよこ

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近衛騎士団詰め所

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時は、イシスの目覚めた時刻から一刻程遡る。



シュリがベランダに出ると、其処はテラスに成っていて、隅には庭に降りる為の階段が付いていた。

其処から庭を眺めていると、その右奥が何だか騒がしい。

のんびりと出て来たロイも、首を傾げるような怒号が聞こえるのだ。

気にならない訳が無い。



「何やってんだろ~てか、あっち何があんだろう? ねっねっ、いってみよ~よ! 」



言うが早いが、駆け出すロイに、シュリは何も言えない。

大きく一つ溜め息を付くと、ロイの後を追うように歩き出した。











「にょっわ~~~んつっつ」


何の悲鳴か。

 



その場所はどう見ても兵士の訓練場。

固く成らされた地面に、目印の楔がいくつか打ち込められている場所だ。

其処を何故かロイが右往左往している。

そして、その後ろを男共が追う。

まるで米軍のランニング風景を見ているようだが、此処はアメリカでも、ましてや日本でも、嫌々、それどころか地球でも無い。

異世界の、ロンディア王国と言う国だ(漸く国名が出せたよ)。



「は? 何だこの惨状は……… 」



シュリがそう呟くのも無理も無い。

血相変えて走り回る猫を、大の大人が6人掛かりで追いかけ回して居るのだから、残念な奴らとしか言いようが無い。



『まぁ、ロイが何かした……… ってとこか』



とんでもなく失礼な事を考えたシュリは、



「ロイ、来い」


と、普通過ぎる声量で声を出した。



「ふっにゃ~ん!! 」



と、猫らしい声を上げて、一目散にシュリの下に駆け寄るロイは、しゃがんで腕を出すシュリの身体を駆け上がって肩にすがりついた。

何時もの定位置の肩でほっと息を付くロイ。

男の1人が、駆け込んだロイの先を見て固まっていた。

すっと身体を揺らす事無く立ち上がるシュリの所作に、この中の何人が気付いただろうか。

彼が徒者ただものでないと言う事実を。



顔だけで言うと、女と見間違う程の美貌の主が肩に猫を載せて立って居るんだ。

一瞬、見間違えた彼を攻める事は出来ない。

で、普通は其処から視線が下に降りて舐めるような視線で美女の見定め(ゲスの行為と言うんだな~コレが)に入るのだが、可哀想に、彼等・・のオツムは迷走に入るのだった。

何故かって?

勿論、シュリが男だからだ。

その上、チラリとハスターが出歯亀した為に、その美貌は3倍増し状態な訳で。

完全に女と見られても、彼等には責任は無い。

ぽやっとしていた彼等の中の独りが、端と正気に戻った。

シュリはコートを脱いで、シャツとスラックス姿だった為に容易に性別が解る状況なのだ。

正気に返る事など造作も無い。



「その猫、貴殿の飼い猫か?」



早々と正気に返った男が問う。




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