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近衛騎士団詰め所

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「あれれれれ? でも、99.999%は、セレナ様です。あれ?! 父上? 」

「彼女は、イシスと言う」

「でも父上、99.999%は、母上です」



きっぱりと言い切られたシュリは、紅蓮に対して苦笑する。



「なぁ、紅蓮。お前のその、『こだわり』何? 0.001%の違いって……… 」

「父上、気にする所って、其処ですか? 」



そのこだわり方が、そのまんま普通に親子に見える。

似た者親子だ。

製作者がシュリのせいで紅蓮がそうなったのか、はたまた生活環境(普段は、シュリの掌を出入口とした亜空間で眠り、起きている時は、現世で顕現している。でないとすねて暴れて泣くから。遊び相手は猫のロイ)のせいなのか。

状況は、『卵が先か、鶏が先か』と、言う所だ。




「ん~~~……… 」


しばし考え込む紅蓮。

父の問い掛けに答えようとする所が健気だ。

何となく、周り皆が紅蓮がどう答えるのか気になる御様子で、固唾を飲んで見守って居る。



「何となく………? 解んないや~。でも、僕の主様には変わんないから。いいや! 新しい母上様です! 」



子供は、屈託が無い。

有りの儘を受け止めて、消化してしまう。

母上様と呼ばれたイシスは、『ボンッ』と言う効果音が付きそうな程、顔を赤らめた。



「ふぇぇ、私で良いのですか? 私はセレナさんでは有りませんよ」

「うんっ!お姉さんが良い! お願いします! 僕の母上様になって下さい!! 」




紅蓮は、声を張り上げて力一杯『お願い』した。

右手を前に差し出して……… 。

うん?

何か、どこぞのとあるTV番組のような光景だが、気にしない、気にしない。

イシスは、ゆっくりと、でもしっかりと、紅蓮の右手を両手で包み込んだ。


その直後の、紅蓮の満面の笑みは光輝く程で、『彼』は、たちまち刀に成り代わると、するするとイシスの手の中に入って行った。



「良かったな、紅蓮。また主を迎えられて……… 」


シュリが、消えた紅蓮に向けて、本当に羨ましげに囁いた。

のは、誰も知らない。






「シュリさま、本当によろしかったのですか? 紅蓮を私に託されて……… 」



シュリは、静かに頷く。



「大丈夫。紅蓮は元々、セレナの得物だからな。戻れて喜んでるだろう」



確かに、イシスの中で、紅蓮が喜んでいるのがわかるのだ。


『大丈夫だよ、母上様。父上には、僕の双子の妹姫が居るからね』

「双子? 」
  



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