【完結】青碧の魔術師~黄衣の王と黄金の姫君~

黄色いひよこ

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王女の花園、魔術師の庭園


「シュリさま、此処が私とお母様が造った花園ですの。ね、どこか似ていると思いませんか? 」


イシスが、シュリの顔を覗き込むようにして、ニコッと笑う。

言われて、見詰められて、促されて。

シュリは、花園を見渡す。


顔つきは変わらないが、瞳が和らぐのをイシスは、見逃さない。


「うん、屋敷の庭に似ているな……… 」

「お屋敷には、四季折々の花が咲いて居りましたものね。その事をお母様にお話したら、偉くお気に召しましたので、それ以来、二人で丹誠込めて造ってまいりましたの」
 
「へぇ……… 、頑張ったんだな」


シュリが、目を細めてイシスに微笑みかける。


「あれから400年、屋敷も変わったぞ。家の庭は、まぁ、敷地が広いのを良い事に、拡張し続けているけどな……… 。と、言いつつ、その元凶って、俺なんだけどね」

「ふふっ、でしたら、今から見るのが楽しみですわ」


イシスがクスクスと笑うと、シュリが罰が悪そうに頭をかく。

珍しく、シュリが照れている。

感情が理解出来ないと言っても、無い訳では無い。

色んなもやもやや、憤り、身体が火照ったり、色々なモノが心と身体に現れても、それが何たるかを、理解出来ないのだ。

涙だって、出る。

けれどそれは、『目から水が出ている』と、言う程度の認識なのだ。


そう、総ては、『認識』の違いなのだった。



「そ、そうだな。セレナが死んでから、長い間独りだった。そのせいか、庭の花が大分増えたよ。中には、この世界には存在しない花もある」



おっと、脱線してた。

話を戻そう。



遠い目をして花園の先を見詰めるシュリに、イシスは小首を傾げて、「存在しない花……… 」と、呟く。


「うん。俺の父親は異世界人でね。銀河系内、太陽系、第三惑星地球の、日本と言う国の出身なんだ 」

「えっ、ええっと……… 、ぎ、んが? 」

「あ、そこんとこ、スルーで良いよ。覚えなくて良いから」



ピシャリと言い切る、シュリの声音が冷たい。

それをイシスがご機嫌を損ねさせてしまったと勘違いする。

うん。

してもおかしくない。

そんな口調だった。




「にゃ~ん」


シュリの足元から、突然、黒猫が猛ダッシュで駆けて行く。

暫く帰っていない屋敷の庭によく似た風情の、王女の庭。

ロイが間違ったとしても、責める事も、からかう事も出来やしない。



「今なら丁度『染井吉野』が見頃だろうなぁ……… 」


思い馳せるシュリの記憶と意識。

一般的な大きさの、日本家屋のその庭に一本だけ植えられていた染井吉野。

シュリの父親が家ごと召喚された時に、一緒に付いて来た父親の国の国花だ。

少しずつ増やして、今では桜並木が出来ている。

其処で、花が咲き乱れる頃、村人達が集まって花見を行うのだ。

ザイラスの生き残りの人々が起こした、小さな小さな村の住人達の数少ない娯楽が桜の花見だった。
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