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王女の花園、魔術師の庭園
③
『四方に有るは、四神の守り。顕現、四神の盾』
口にしたのは、此方では使われない日本語。
この世界の住人には、まるで魔法の呪文の様だが、そうでは無い。
亜空間に無数に仕舞われているアイテムのインデックスと名前のようなものだ。
空間に、何らかの事情で、手を突っ込めない場合にのみ、言葉で引っ張り出すと言う苦肉の策だ。
勿論、改善の余地は、多大に有る。
何の改善かって?
インデックスと盾の名と、引き出す際の呪文に決まっている。
え? 何? 全部じゃんって?
うん、そうだね。
でも、あえてそこんとこ、察してやって。
シュリが、背中がこそばゆくなりそうな呪文を唱え終えると、彼の突き出した手の前に、多少耳障りな高音を立てながら、薄紫の巨大な縦長の板が現れた。
板、と言うより、何か、巨大な宝石とでも言おうか。
そんなものが、シュリとイシスの四方を囲むように出現し、瞬く間に外側へと膨張し、まるで鎖を引きちぎるように竜巻を内側から弾き飛ばした。
それはもう、有無を言わさぬ力業で。
その勢いで、竜巻は唐突に雲散霧消してしまった。
後に残るは、どこからともなく現れた桜の花びらと無理矢理散らされた花々のみ。
それらがゆるゆると空から舞い落ちて来る。
「イシス、大丈夫か? 怪我は、無い? 」
「はい。何とも有りませんわ。全てはシュリさまに守って頂いたおかけです」
イシスは、にっこりとシュリに笑いかけると話を続けた。
「それに私、案じてなどいませんでしたよ」
全く疑う事の無いイシスの言動に、シュリは、抱きしめたまま彼女の頭をポンポンと撫でた。
「怪我がなくて良かったよ」
そう言って頭を撫でる仕草は何処までも優しい。
力加減もイシスを大事にしている事がありありとしていて、微笑ましい。
シュリのお腹にキュッとしがみ付く形でイシスは、彼の腰に腕を回した。
そのままの格好で、シュリを見上げる姿が、可愛い。
ほのかな頬の赤みが、尚一層赤くなって、恥ずかしがるイシスを新鮮に思うのは、シュリが歳を取っていると言う証拠なのか、顔をトマトの様に赤くさせた彼女を微笑ましく思う。
此処で彼女にもっと顔を近付けたら、どういった反応を見せるんだろう。
今此処で、この柔らかそうで、ピンクに色付いた唇に触れたら彼女は、どうするのだろう。
シュリの心に、邪な気持ちがポツリと灯る。
嫌々、男とはこういう者だ。
シュリとて男だ。
例外なく、男としての欲求は、存在する。
そして、探求心も。
僅かにだが、その場の空気が変わった。
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