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王女の花園、魔術師の庭園
④
しおりを挟むどちらからともなく、唇を寄せ合う。
2人とも、不可思議な空気に飲まれてしまっている事に気付かない。
甘い甘い花の香に、タイミングよく王宮から楽団の奏でる音が漏れ聞こえて来る。
リバーサルでもしているのであろう、本番までにはまだ早すぎる。
「イシス……… 。何故だか解らないが、今無性にお前に口付けたい。嫌なら避けろ。無理強いは、したくない」
「シュッ……………… うっ…… んっ… 」
それ、逃げたかったとしても、逃げれないから。
言うや否や、と言うか、言ったとたんにシュリの唇がイシスに重なり、答えようとして唇を開けていたイシスの口内に舌を差し入れる(いきなりベロちゅーですか…)。
2度目のキスは、最初のと比べものにならない程濃厚で、甘い。
最初のが契約のキスだと言う事が、イシスにも感じられる程のシロモノだ。
本当に嫌がってないか知る為に最初は遠慮がちだったシュリも、絡める舌におずおずとだが、応えてくれる彼女に本気モード突入だ。
手加減を知らないかのようなシュリの猛攻に、初心者のイシスが付いて行ける筈もなく。
安定の撃沈。
まっしぐらでした。
シュリがイシスを解放した頃には、彼女の意識は無く、
「シュリ~、やり過ぎ。おいら、此処に居るんですけどぉ~」
と、いつの間にか足元に戻って来ていたロイに、釘を刺される始末。
この男、400年以上も生きてきて、見た目とさして変わらないような所が有る。
時間をいくえに重ねても、見た目と精神年齢は、比例するのだろうか。
するんだろうなぁと、この男独りだけ見ていても統計は取れないが致し方無い。
「400年ぶりだぞ。許せ」
「それ、おいらに言っても仕方が無いと、思う」
シュリが、はぁ、と、大きな溜め息を吐き出す。
「あぁっ、くそっ、我慢が…… 」
「頑張れ~シュリ~」
「ちっ、お前、人事だと思って」
「いっいじゃ~ん! おいら猫だもん~人じゃな~いし」
近くに見える東屋までイシスをお姫様抱っこで連れて行き、ベンチに寝かせるシュリは、膝枕をイシスに施し、彼女の顔を覗き込む。
「しかし…… 、17歳なんだよなぁ」
「今日、深夜で18歳だよ」
「7歳も年上だぞ、俺は。まぁ、見た目は、だけど…… 」
「本当は400歳越えてるもんね~お互い」
此処で遠い目をする1人と 1 匹。
「でも、気にしてもしょ~が無いんじゃ無い? 成るようにしかなんないさ、なっ、シュ~リ」
そう言って、意外にも切り替えが早かったのは、ロイの方であった。
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