【完結】青碧の魔術師~黄衣の王と黄金の姫君~

黄色いひよこ

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思惑


お城の中で一番大きなホールは、招待客でひしめき合っていた。

客の到着を告げる使用人の途切れぬ声に、訪れる来客の多さを思い知る。

シャンデリアには蝋燭の明かりが灯り、テーブルには数多くのご馳走が、所狭しと列んでいた。

楽隊が、部屋の隅で踊りに相応しいテンポの楽を奏で始め、着飾った男女が手を取りあいホール中央に集まりだす。

シュリはそんな光景を何と無くだが見つめ、その後辺りに目を配った。


一つは、場内の観察の為。

もう一つは、人外の者が訪れていないか、監視する為。

こんな事になるとは考えていなかったので、十分な準備をしていない。

如何せん、魔術の道具が少な過ぎて心もとない。

いざとなったら、召還魔法と言う手もあるが、極力使いたくは無かった。


『あのふざけた親父に頼むのは嫌なんだが、そうも言ってられないか…… 』


そんな事を考えながら、シュリは回りの明るさに目をすがめた。

白い壁が、蝋燭の明かりを反射して、辺りを直一層明るく照らしている。

良く考えて造られているお城だった。


昼間は太陽の光をふんだんに取り込み、夜には少しの蝋燭の明かりで自らが輝く。

そんな城で壁の花よろしく立ちすくむシュリは、ホールの隅のテーブルの側にいた。

窓際に整然と列ぶ、テーブルの下には、ロイが潜んで料理に舌鼓を打っている。

テーブルの足元迄有る、テーブルクロスの御蔭で、ロイは難無く食事にありつけていた。


「はぐはぐ……」


ロイが、必死になって食べる音が聞こえる。

シュリは、ロイの隠れている方へ視線を落とし、クスッと笑った。


「ロイ、蓮に連絡を取ってシールドを頼んでおいてくれ」

「蓮様? まだ居てたの?」


随分な言い草である。


「あぁ。何か良からぬ事を企んでいるようだがな……あのじじいは」


どっちもどっちの言い草に、ロイは溜め息をつく。



「しゅ~り~、仮にも自国の宰相捕まえて、じじいはないんじゃない」

「あぁん……あんな奴、じじいで十分」




自分の発言は棚に上げるロイには、シュリの声音だけで、不機嫌な事が十分わかる。


「何でこんなに仲悪いんだろ、あの二人。似た者親子だと思うんだけどな……」


ボソボソと呟いた声は、テーブルクロスで遮られ、シュリの元へは届かない。


「ロイ……」


声をかけられ、滑り込んで来たのは、魚とマッシュポテトの乗った皿。

ロイは嬉しそうに『にゃ』っと一声鳴くと新たな皿に顔を突っ込んだ。

モグモグと一心不乱に料理に舌鼓を打つロイに、シュリが呟く様に言った。


「何か嫌な予感がする……なるだけ先手を打ちたい。頼むぞロイ」

「……了解ラジャー


シュリの真面目な声に、ロイは食べるのを止め、背筋を伸ばすと簡潔に答えたのだった。

シュリの感は良く当たる。

母方の血筋のせいで、普通の魔術師とは一線を引かれている彼だ。

『青碧の魔術師』とは、本当に謎、大き人物だった。

ザイラスが滅びてからは、文献すら灰となったので、彼どころかザイラスの歴史さえおぼつかない。

様々な事が、謎とされている。

魔術師も魔女も……。

守護者や戦乙女も。


そして、かの国に住む一般の国民でさえも……。


「ねぇシュリ」


シュリはロイの呼びかけにはたと現実に引き戻された。


「なんだ?」


返事を返すシュリに、ロイが投げ掛けた疑問は。


「トレントは、どうやってあの人のかけた封印を、解いたんだろうね? おいらふに落ちないんだよ」

「俺自身もだよ。何か別の力が働いたのかも知れない」

「どんな力……?」


シュリは、ロイの言葉には答えなかったが宙を仰ぎ、溜め息を一つ付いた。

両眼の内、片瞳が青碧では無く、青紫であった事に、誰も気付く事は無かった。


 
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