【完結】青碧の魔術師~黄衣の王と黄金の姫君~

黄色いひよこ

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戦闘人形


そんなリスノー伯を、シュリは冷ややかな瞳でねめつけて、


「あんたは俺に、傷ひとつ付けられない。騎士が、鞘を投げ捨てるとは愚の骨頂。そんな事も判らなければ、勝てるものも勝てない」


強い口調で言い放つ。

シュリの態度に、単細胞なリスノー伯は、顔を憤怒の表情に変えて、今一度、突進してきた。


「知った事の様に抜かしおって!」


怒声と憤怒にまみれたリスノー伯に、『冷静』の二文字は無い。

大振りの剣を振りかぶると、三度、四度とシュリの目前に振り下ろす。

シュリは、軽く手首を返し、アクリル板を器用に動かして、リスノー伯の打ち込みを難無く受け止めた。


「くっ!」


何度打ち込んでも、シュリの回りを巡る壁はびくともせず、悪戯にリスノー伯の体力を奪っていく。


「そんな物で身を守ろうなどと、卑怯だとは思わんのかっ!」


まくし立てるリスノー伯に、シュリはどこ吹く風のようだ。


「戦いに卑怯もくそもあるか。魔術師が、出来上がった魔術を試してみて何が悪い」

「この……腐れ魔術師がっ!!」


シュリの言葉に、逆上するリスノー伯。

彼は、シュリがわざと自分を苛立たせている、と言う事に気付かずに、まんまとシュリの思惑に嵌められて行く。



何度目かの打ち込みに、剣の刃もこぼれはじめてきたが、実は、シュリの魔術の壁も綻びを見せ始めていた。


『成る程……』


壁に当たる刃の重さと、それによって壁に穿たれる傷の出来具合を計算して、シュリがニンマリと笑う。


『まだまだ改良の余地が有るな……。あの馬鹿も、ただの馬鹿では無いか……。盲打ちに見えて、そのじつ的確に同じ場所を打ってくる。腐っても、鯛って訳ね』


本人が聞けば、大騒ぎしそうな事を心中で呟いて、シュリは無造作に、出した時と同じく右腕の一降りで、アクリル板の壁を消し去った。

それと同時に、襲い来る剣をかわす為、必要最小限の動きで左へ避ける。

剣の切っ先が、ギリギリの所でシュリの横を掠めた。

そんな風にギリギリで、リスノー伯の攻撃をかわすシュリに、何を勘違いしたのか、自分の方が優勢と思い込んだリスノー伯の流れる様な剣捌きが、一段と冴え渡る。


「さあさあ、早く降参せねばケガをすることになるぞ」


得意げにうそぶくリスノー伯にシュリがニヤリと笑って言い返す。


「怪我? 夢なら寝て見るんだな。生憎だが、あんたと遊んでいる暇など無いんだ。ここいらでケリを付けさせて貰うよ」

「ふん! なんとでも言うがいい。地にひれ伏すのは、貴様の方なのだからな!」


近い場所での会話がすんだ合図と言うのか。

お互いに間合いを取る為なのか、距離を取るように、二人同時に飛び退る。

シュリは、異常な程に高まるリスノー伯の闘気を、その身に受けてもなお、涼しげな顔つきのままで怯まない。

すっと右腕を水平に持ち上げて、リスノー伯を指さすと手首を返し、


「かかって来な」


そううそぶいて指を折る、お決まりのポーズでリスノー伯をたきつけた。


「お、お前……私に対するその扱い……」


リスノー伯の剣を握る手が、小刻みに震えている。

屈辱的な扱いを受け、すごすごと引き下がる彼では無い。


「死に価すると思え!」


獣が吠える様な、リスノー伯の怒号。

その声と共に、リスノー伯は大理石の床を蹴ると、シュリに向かって飛び掛かった。



リスノー伯の誤算。

それは、

シュリが、『青碧の魔術師』だと言う事。


そして、

『青碧の魔術師』の本当の強さが、実は剣技などでは無く、彼の身に宿る魔術と、魔術書なのだと言う事に、ほとほと気付かされる事になろうとは、この場に居合わせた者は、一匹を除いて、誰も考え及ぶ事はなかった。


「まずい……非常にまずい事になったよ……シュリってば、すんごく怒ってる……そういえば、たいした道具、用意してないって言ってたよなぁ……だとしたら、使う物って……」


テーブルの下で、一部始終を見ていた猫一匹。

彼だけが、この先に起こる事態を、予測していた。






── お知らせ ─────── 


新しくお話を掲載する事にしました。
悪役令嬢物ですが、シイアルの感性しこたまぶちまけております。

是非是非、ご一読をお願い致します。

しおり挟んで頂けると泣いて喜びます。

タイトルは、『 無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした』です。

宜しくお願いします<(_ _)>
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