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邪神降臨
②
「貴方も、口の減らない方ですねぇ。ならそのまま強制送還です。貴方さえいなければ、この次元は我々旧神の支配する世界となる」
「なるほどね。やはり目的は別にあったか」
シュリがニヤリと笑う。
そんな彼をナイアルラトホテップは、不思議そうに見つめた。
「お前、どうやら平和ボケしている様だな」
シュリはナイアルラトホテップに向けて、言い捨てると、「さて、お遊びはここまでだ」と言ってフードごしに彼を嘲った。
少し俯いて、軽く息を吸う。
「ラン! ナイアルラトホテップ、捕縛!」
張り上げる声と共に、シュリを縛していた蔦が一斉に解け、地面を蹴ったシュリが、椅子を利用して後方へ宙返りをして飛びのいた。
彼が衣服を乱す事無く、地面に着地して、ナイアルラトホテップを見ると、青年はシュリが跳び退くと同時に、全身を蔦に絡み取られていた。
呆然とした表情を見せたままで。
佇んだまま、話すシュリの声に、現実へと立ち戻った青年は、慌てて蔦を断ち切ろうと足掻いた。
だが蔦は、緩む事も無く、次々とナイアルラトホテップを絡み取って行く。
その様子を、高見の見物と洒落込んだシュリが、ククッと可笑しそうに笑った。
「嬉しそうだね。ラン。そのまま彼を縛したまま、帰還してくれて良いよ。そうだな……そいつの主の下へ捨ててくると良い。ちゃんと捨てて来るんだぞ。でなけりゃお前、そいつの主に壊されるぞ。くれぐれも忘れるなよ」
椅子に話し掛けるシュリの言葉を聞き取って、ナイアルラトホテップが呟く。
「何故だ……? 一体、どう言う事なんだ?」
ランに捕縛されたナイアルラトホテップは、合点がいかない。
椅子はハスターであるシュリを捕らえる為のアイテムの筈なのに。
現実には、ナイアルラトホテップを捕まえている。
彼にとっては信じ難くかつ、ただならぬ出来事であった。
そんな彼にシュリは近寄って言い放つ。
「だから平和ボケだと言ったんだ。俺のこの姿に意味は無いと思ったか」
シュリの言葉に、あらためて彼を見るナイアルラトホテップ。
全身をすっぽりと隠した外套に、一種異様な感は否めない。
シュリ、いや、ハスターはその姿を隠している。
何故か。
「は……ははは…………」
ナイアルラトホテップから、小さく乾いた笑いが起こる。
「そうでした。何故私は忘れていたのでしょうね……あの時、最初に貴方達を、封じてしまおうとした理由を……」
「後悔しても遅い」
「ですが、これで賽は投げられた。私の主、アザトースや女神ジュブニグラスが、私を媒体にこの世界に降臨するのだ。退屈な現世界から、新天地であるこの世界へ……。なんと楽しげな事か」
うっとりと、己の世界へと落ちてゆく、ナイアルラトホテップ。
シュリは、忌ま忌ましそうに舌打ちをして見せたが、ふと何かを思いおこしたのか、ナイアルラトホテップに囁いた。
「この世界に居るのは、私だけでは無い。我が兄も健在だぞ。私と兄の双方を相手にする程、お前達は浅はかか?」
「兄……?」
ナイアルラトホテップは、ひとつ、大きなミスをしていた。
「クトゥルー……あれは、ルルイエ神殿に捕われの身の筈……。それに、奴の気配なぞ……」
「しない……か? お前ごときに知られる程、抜けてはいないぞ、あれは」
偉大な兄を『あれ』と表現するハスター。
そんな彼も、ただ者では無い。
ナイアルラトホテップに知らしめる為、チラリとイシスと漣を盗み見る。
シュリの送った目線に気付き、ナイアルラトホテップは、初めて、歯牙にもかけなかった彼等に、視線を向けた。
イシスを護る様に、半歩前に出ている男。
のほほんとした顔付きが、ナイアルラトホテップにだけ解る様に、にたりと笑う顔に変わる。
表情が見える分、漣の顔付きは、シュリ以上に不気味だった。
「なる程、私の入れ物の腕を落としたのは、かの君でしたか……。道理で、背後に立たれても気付かなかった筈だ」
がんじからめにされていた、ナイアルラトホテップは、観念したのか抗う事を止めていた。
「なるほどね。やはり目的は別にあったか」
シュリがニヤリと笑う。
そんな彼をナイアルラトホテップは、不思議そうに見つめた。
「お前、どうやら平和ボケしている様だな」
シュリはナイアルラトホテップに向けて、言い捨てると、「さて、お遊びはここまでだ」と言ってフードごしに彼を嘲った。
少し俯いて、軽く息を吸う。
「ラン! ナイアルラトホテップ、捕縛!」
張り上げる声と共に、シュリを縛していた蔦が一斉に解け、地面を蹴ったシュリが、椅子を利用して後方へ宙返りをして飛びのいた。
彼が衣服を乱す事無く、地面に着地して、ナイアルラトホテップを見ると、青年はシュリが跳び退くと同時に、全身を蔦に絡み取られていた。
呆然とした表情を見せたままで。
佇んだまま、話すシュリの声に、現実へと立ち戻った青年は、慌てて蔦を断ち切ろうと足掻いた。
だが蔦は、緩む事も無く、次々とナイアルラトホテップを絡み取って行く。
その様子を、高見の見物と洒落込んだシュリが、ククッと可笑しそうに笑った。
「嬉しそうだね。ラン。そのまま彼を縛したまま、帰還してくれて良いよ。そうだな……そいつの主の下へ捨ててくると良い。ちゃんと捨てて来るんだぞ。でなけりゃお前、そいつの主に壊されるぞ。くれぐれも忘れるなよ」
椅子に話し掛けるシュリの言葉を聞き取って、ナイアルラトホテップが呟く。
「何故だ……? 一体、どう言う事なんだ?」
ランに捕縛されたナイアルラトホテップは、合点がいかない。
椅子はハスターであるシュリを捕らえる為のアイテムの筈なのに。
現実には、ナイアルラトホテップを捕まえている。
彼にとっては信じ難くかつ、ただならぬ出来事であった。
そんな彼にシュリは近寄って言い放つ。
「だから平和ボケだと言ったんだ。俺のこの姿に意味は無いと思ったか」
シュリの言葉に、あらためて彼を見るナイアルラトホテップ。
全身をすっぽりと隠した外套に、一種異様な感は否めない。
シュリ、いや、ハスターはその姿を隠している。
何故か。
「は……ははは…………」
ナイアルラトホテップから、小さく乾いた笑いが起こる。
「そうでした。何故私は忘れていたのでしょうね……あの時、最初に貴方達を、封じてしまおうとした理由を……」
「後悔しても遅い」
「ですが、これで賽は投げられた。私の主、アザトースや女神ジュブニグラスが、私を媒体にこの世界に降臨するのだ。退屈な現世界から、新天地であるこの世界へ……。なんと楽しげな事か」
うっとりと、己の世界へと落ちてゆく、ナイアルラトホテップ。
シュリは、忌ま忌ましそうに舌打ちをして見せたが、ふと何かを思いおこしたのか、ナイアルラトホテップに囁いた。
「この世界に居るのは、私だけでは無い。我が兄も健在だぞ。私と兄の双方を相手にする程、お前達は浅はかか?」
「兄……?」
ナイアルラトホテップは、ひとつ、大きなミスをしていた。
「クトゥルー……あれは、ルルイエ神殿に捕われの身の筈……。それに、奴の気配なぞ……」
「しない……か? お前ごときに知られる程、抜けてはいないぞ、あれは」
偉大な兄を『あれ』と表現するハスター。
そんな彼も、ただ者では無い。
ナイアルラトホテップに知らしめる為、チラリとイシスと漣を盗み見る。
シュリの送った目線に気付き、ナイアルラトホテップは、初めて、歯牙にもかけなかった彼等に、視線を向けた。
イシスを護る様に、半歩前に出ている男。
のほほんとした顔付きが、ナイアルラトホテップにだけ解る様に、にたりと笑う顔に変わる。
表情が見える分、漣の顔付きは、シュリ以上に不気味だった。
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