【完結】青碧の魔術師~黄衣の王と黄金の姫君~

黄色いひよこ

文字の大きさ
75 / 90
邪神降臨

「貴方も、口の減らない方ですねぇ。ならそのまま強制送還です。貴方さえいなければ、この次元は我々旧神の支配する世界となる」

「なるほどね。やはり目的は別にあったか」


シュリがニヤリと笑う。 

そんな彼をナイアルラトホテップは、不思議そうに見つめた。


「お前、どうやら平和ボケしている様だな」


シュリはナイアルラトホテップに向けて、言い捨てると、「さて、お遊びはここまでだ」と言ってフードごしに彼を嘲った。

少し俯いて、軽く息を吸う。


「ラン! ナイアルラトホテップ、捕縛!」


張り上げる声と共に、シュリを縛していた蔦が一斉に解け、地面を蹴ったシュリが、椅子を利用して後方へ宙返りをして飛びのいた。

彼が衣服を乱す事無く、地面に着地して、ナイアルラトホテップを見ると、青年はシュリが跳び退くと同時に、全身を蔦に絡み取られていた。

呆然とした表情を見せたままで。

佇んだまま、話すシュリの声に、現実へと立ち戻った青年は、慌てて蔦を断ち切ろうと足掻いた。

だが蔦は、緩む事も無く、次々とナイアルラトホテップを絡み取って行く。

その様子を、高見の見物と洒落込んだシュリが、ククッと可笑しそうに笑った。


「嬉しそうだね。ラン。そのまま彼を縛したまま、帰還してくれて良いよ。そうだな……そいつのあるじの下へ捨ててくると良い。ちゃんと捨てて来るんだぞ。でなけりゃお前、そいつの主に壊されるぞ。くれぐれも忘れるなよ」


椅子ランに話し掛けるシュリの言葉を聞き取って、ナイアルラトホテップが呟く。


「何故だ……? 一体、どう言う事なんだ?」


ランに捕縛されたナイアルラトホテップは、合点がいかない。

椅子はハスターであるシュリを捕らえる為のアイテムの筈なのに。

現実には、ナイアルラトホテップを捕まえている。

彼にとっては信じ難くかつ、ただならぬ出来事であった。

そんな彼にシュリは近寄って言い放つ。


「だから平和ボケだと言ったんだ。俺のこの姿に意味は無いと思ったか」


 シュリの言葉に、あらためて彼を見るナイアルラトホテップ。

全身をすっぽりと隠した外套に、一種異様な感は否めない。

シュリ、いや、ハスターはその姿を隠している。 

何故か。


「は……ははは…………」


ナイアルラトホテップから、小さく乾いた笑いが起こる。


「そうでした。何故私は忘れていたのでしょうね……あの時、最初に貴方達を、封じてしまおうとした理由を……」

「後悔しても遅い」

「ですが、これで賽は投げられた。私の主、アザトースや女神ジュブニグラスが、私を媒体にこの世界に降臨するのだ。退屈な現世界から、新天地であるこの世界へ……。なんと楽しげな事か」


うっとりと、己の世界へと落ちてゆく、ナイアルラトホテップ。

シュリは、忌ま忌ましそうに舌打ちをして見せたが、ふと何かを思いおこしたのか、ナイアルラトホテップに囁いた。


「この世界に居るのは、私だけでは無い。我が兄も健在だぞ。私と兄の双方を相手にする程、お前達は浅はかか?」

「兄……?」


 ナイアルラトホテップは、ひとつ、大きなミスをしていた。


「クトゥルー……あれは、ルルイエ神殿に捕われの身の筈……。それに、奴の気配なぞ……」

「しない……か? お前ごときに知られる程、抜けてはいないぞ、あれは」


偉大な兄を『あれ』と表現するハスター。

そんな彼も、ただ者では無い。

ナイアルラトホテップに知らしめる為、チラリとイシスと漣を盗み見る。

シュリの送った目線に気付き、ナイアルラトホテップは、初めて、歯牙にもかけなかった彼等に、視線を向けた。

イシスを護る様に、半歩前に出ている男。

のほほんとした顔付きが、ナイアルラトホテップにだけ解る様に、にたりと笑う顔に変わる。

表情が見える分、漣の顔付きは、シュリ以上に不気味だった。


「なる程、私の入れ物の腕を落としたのは、かの君でしたか……。道理で、背後に立たれても気付かなかった筈だ」


がんじからめにされていた、ナイアルラトホテップは、観念したのか抗う事を止めていた。


 
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

二百年の眠り姫は、五人の薔薇騎士と龍に溺愛される

七海美桜
恋愛
旧タイトル:五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです! フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〖完結〗終着駅のパッセージ 

苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。 その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。 婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。 孤独な結婚生活を送る中。 ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。 始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。 他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。 そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。 だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。 それから一年ほどたった冬の夜。 カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。 そこには彼の想いが書かれてあった。 月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。 カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。 ※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。 ※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。 稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。