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黄衣の王と黄金の姫君
②
「私の事は心配無いですよ。兄さまのお墨付きで、シュリさまの下に行けますもの」
「物好きな女だな……。なら、教えてやろう。俺は、さっきの化け物と同類だぞ。この身の内は、あの男の中身の様に醜い……」
「逸れが? 私は、一向に構いませんわ。シュリさまは、シュリさまですもの」
稟とした物言い。
毅然とした態度。
確固たる意思を現す蒼い瞳。
それらを湛えた黄金の王女は、シュリの冷たい仕打ちに怯む事無く、対峙する。
吸い込まれそうな蒼い瞳に、シュリが息を呑む。
「はぁ………、それは見ていないから言える事だろう?」
彼の真意は分からなかったが、なぜだか、イシスを遠ざけようとしているのは確かだった。
つつっと、イシスに向けて、シュリの左腕が持ち上がる。
それにいち早く気付いた漣が、動いた。
「このっ!! 馬鹿者!」
瞬時に飛び出した漣は、シュリが行動に移す前に怒号と共に彼の身体を地面に倒した。
思いの外、素早い行動に、さすがのシュリも対応が遅れた。
簡単に地面に倒され首を捕まれて、勢いで喉からヒュウッと息が漏れる。
漣の行動力と強さは、さすがと言って、良いのだろう。
シュリを引きずり倒した漣の表情は、父であり、兄でもあった。
「イシスちゃんに、何をする気だったのかなっ? 事と次第によっては、お父さんがお尻ぺんぺんしちゃうぞ?」
相変わらずの物言いだったが、意外と目は真剣そのもので笑っていない。
漣は、押し付けた手の平を緩めると、シュリが話すのを促すよう、見つめた。
イシスも倒されているシュリの側に駆け寄り、床にしゃがみ込む。
皆が、シュリの、次の一声を待ち望んでいた。
シュリが、深く呼吸をする。
そして言い放った。
「俺が姫を傷つけるとでも思うのか?」
「破壊の左手を上げたからねぇ。そう思っても不思議では無いよね」
悪びれるそぶりもなく、漣がうそぶく。
その言葉に、シュリが今度は小さく息を吐き出した。
「左手を上げたのは、この腕を壊す為……」
シュリの言葉に漣だけは、全てを悟った。
「馬っ鹿じゃね、お前は。そんな事して、あの腕見せてもイシスちゃんは怯まないよ。こんなお前に、心底惚れてるからねぇ。彼女」
「あの腕って……?」
漣の言葉に引っ掛かりを覚えたイシスは、何と無くだったが、疑問に思った事を口にする。
それに答えたのは、漣だった。
「私達、古き者どもと呼ばれる者には、二つの姿があってね、一つは君も知るあの姿」
そう言いながら、顎をしゃくって、シュリを見る。
「もうひとつは、人に恐怖と畏怖を与える姿」
「何の為に……」
「それは、説明しずらいなぁ。まぁ、強いて言えば古代の神は、人に恐れられる存在に他ならないってとこかな~」
漣の説明では、今一つしっくりいかない。
「ま、どちらの姿が真か、と聞かれても答え難いからさっしてね」
そう話す漣に、イシスはにっこりと笑う事で答えた。
「で、問題はシュリだよねっ……」
漣が、言葉を濁してシュリを見た。
「何で、急にイシスちゃんを避けはじめたのかな? あの姿を見せようとしてまで」
「言わなくても、分かっているんだろう……あんたなら……」
漣の問い掛けに、シュリが、困った笑みを浮かべる。
「ずっとこのままこの姿で居る訳にはいかない……。それに……… 」
言い澱むシュリに漣の瞳は優しい。
「あっ、あ~ん。なる程~、そう言う事ね~。ほっんっと、馬鹿だよ。この息子は。ま、弟でもあるんだけど……」
「御託はいい。この手を離せ」
漣の言葉に、シュリは相変わらず突っ張った物言いで応えた。
気持ちを切り替えたのか。
何かに、躊躇いを見せていたシュリの態度が、唐突に変わった。
だが漣は、シュリの態度にも、意に解さない。
シュリを倒した形のまま、彼にとって、とんでもない言葉を口にした。
「それはそうと、ねぇ、良い加減そのフード、取ったらどうだろう? 兄ちゃんは、ここんとこまともに弟の顔、見てないんだけど。お前の婚約者も、見たいと思うよ」
漣の言葉を聞いた途端、シュリはその場を離れようと、猛烈に暴れ出した。
「ふざけた事を言うなよ、漣! そんな事をしたらどうなるか、解ってる筈だ」
「暴れんなって。解ってるから、わざわざこの老骨に、鞭打ってやろうとしてるんじゃないか」
抗うシュリの動きが、漣の言葉にピタリと止まる。
「まさか……無理だ……これは、持って生まれてきたものだ」
「だから? 何? 消す事は無理だけど、封じる事なら出来るよ? 私ならね~」
「なっ……」
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